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ニューギター『中出俊彦 1500S 1974年』

さて、マーチンの余韻も冷めやらぬままのニューギターそれも…

「手工品・ヴィンテージ・ハカランダ単板」という夢のような仕様

”宝くじでも当たったか?”、”ついに犯罪に手を染めたか?”と勘ぐられかねませんが…

とりあえずそんなドリーミーなブツはこれ…

日本の名工・中出敏彦氏作のクラシックギター『1500S』、1974年製なので約50年前の楽器です。

■”新築そっくりさん”なリノベーションギター?

こちら某有名アコギ専門店において、フレットすり合わせなど全体調整の後にラッカー塗装でリフィニッシュされたもので、50年選手にしてほぼ新品レベルのいわば「リノベーションギター」ですw。

この塗り直しですが、元は「セラック塗装」というガの幼虫?から取れる成分で塗る伝統的な技法(ギターに限らずヴァイオリンなどクラシック系の楽器では現在も最上級の塗装とされているらしい)をはがしてラッカーにしているようで、これがクラシックギター愛好家からは嫌われるみたいですね。

クラシックギター界にはエレキでいう「ラッカー信仰」的な「セラック信仰」があるようで。

アコギ/エレキ畑では高級仕上げとされるラッカー塗装がクラシックギター界隈だとメタクソに叩かれてたりするのを見ると、畑の違いって面白いな…と感じます…苦笑

強度はセラックよりラッカーの方が強いですし、ロック/ポップ畑の僕にはむしろ馴染み深い塗装なのでその辺は気になりません。

ちなみに余談ウンチクとして「ラッカー塗装」という名のそもそもの語源はこの「セラック」から来ているそうです。



■バックは極上ハカランダ

そして(僕はあまり興味が無いのですが)、バックはアコギマニア垂涎の極上単板ハカランダ

詳しくない僕が見ても分かる惚れ惚れする木目…その筋の方はこれを眺めて酒が飲めるそうです笑

ちなみに今このクラスのハカランダ使ってアコギ作ろうとすると国内100万、海外200万が最低ラインになります(マーチンだとシンプルな28スタイルでも400万~時価らしい)。



■名工:中出敏彦

私も詳しくは無いのですが、ググった情報としては作者の中出敏彦氏は日本クラシックギター制作における草分け的存在のひとりで、ご高齢のため惜しくも2021年に引退されたとのこと。

海外で行われたギターの作者名を伏せてブラインドで弾き比べるコンテストで、2回も最優秀賞を受賞されているそうです。
地味に海外での愛好家もいるみたいです(日本が安すぎるので海外に流出するんでしょうね…苦笑)。

ちなみにこの中出家、俊彦氏の父親が“日本クラシックギター製作の祖”みたいな方で、その叔父や息子3人もギター制作家というルシアー一族みたいです。



■「お高いんでしょ~~?」…いやいや…

いやーースペック・作者共に『至福の逸品』という表現がふさわしい楽器です。

これ読むと…”やっぱオマエ強盗でもしたんか?”疑惑が起きますが…

これがね…具体的な金額は避けますが…購入価格は…

“ヤマハとかヤイリの汎用アコギ”

位の値段です。

「安い」を通り越してもはや「おかしい」レベルです…苦笑



■購入のきっかけと経緯

“コトの起こり”を説明していきますと、“理想のアコギ”ともいえるマーチンOM-28 Customを弾いていると、それまで自分の持っていた楽器の良い分・悪い部分等がより明確にみえてきたところがあるのですが、その中でアルハンブラのエレガットの音に…どうも…納得がいかない…というのが出てきまして。

一方、最近のプレイ時間としては私のツイッター動画を見ていただけると分かるんですが、ガットギターを手にしている時間がスチール弦やエレキと同等かそれ以上に長かったりします。

元々の嗜好としても、伴奏とメロディーを両方弾く演奏スタイルではスチール弦を用いたいわゆるソロギターよりも、純然たるクラシックギターの方が好きだったりもするので(どっちも弾けないんだけど…苦笑)。


そんなこんなの結論として…新しいガットギターが欲すぃ~に行きつきますwww

とはいえマーチン買ったばっかだし…自慢じゃないが…金は全くない…涙

どうするかぁ…と悩んでいた中で…ふと気が付きます…この先の人生でおそらく…ガットをライン出力してライブをする機会は二度と無いと。
アコギ/エレキ畑ということもあり、何となくエレガットを軸に探していたのですが…いっそ…

純然たるクラシックギターで良いのではないか?
というところに考えが向かいます。

クラプトンがアンプラグドで『ティアーズ・イン・ヘブン』等を弾いていたガットギターも、ポップ/ロック畑の楽器ではなくスペインルシアーメイドのクラシックギターでしたしね。

てなわけで純クラシックギターも視野に入ってきたわけですが、ここのガチ勢はマーチンだギブソンだが可愛いレベルということも存じてます(3桁スタートの世界)

その中で…“一筋の光”として気になった存在が…

“国内手工家”の中古

印象としては15年くらい前だとリサイクルショップでジャンク扱い数千円とかで投げ売られてたりした感じなのですが、調べてみると近年はさすがに少しずつ値が付いてきているようでした。

それでも…スチール弦アコギからみると…“不当なほど安い”…苦笑。

だってね…例えば「70年代にテリー中本や百瀬恭夫が作ったハカランダのギター」て軽く100万超えるでしょ??

製作家のスキル・格や使用材の質でいえば同レベルかそれ以上、また当時はまだマーチン系の作成ノウハウが確立していないスチール弦アコギと違い、クラシックギターは戦前から製作ノウハウがありかつルシアーの多くは本場スペイン留学を経験している…

なのに価格はテリー中本の10分の1以下

「値段は需要と供給で決まる」といってもやりすぎな印象です…苦笑
この辺、クラシックギター弾きの人はどう感じているのでしょうかね?

まぁアコギでいうアメリカ信仰が「スペイン信仰」だったり、恐らく師弟関係や教室で半ば強制的に勧められるメーカーやルシアーがあったり、きちんと習ってる人は中古を敬遠するなどの理由があるのでしょう…

ネットを見ても国産手工家の中古を好む人は、クラシックギター奏者の中でもちょっと偏屈な?人が多い印象でw、クラギのメインストリームにいる人が使ってたり勧めていたりするのはあまり見かけません…。

まぁ「安いのには理由がある」ということですね。



■肝心のサウンド

さて、ここまで長々と書いてきて私がある重要なコトに触れていないのにお気づきの人もいるでしょう…

そう…それは…このギターの…

“音”

いや、クラシックギターなんぞドドドドド素人で、ワタシごときがそのサウンドを語っていい存在ではない、というのは重々承知な上で…率直な感想を書くと…

“化けモンみたいな音”

が出ます。

クラシックギターの経験値自体がほとんどなく、数百万もするスペイン製の楽器を弾いたことなど皆無なので、そこでの“縦の比較”は出来ないのですが。

それでも楽器に関係なく共通する響きの”格”のようなものが明らかに上の方にあるのは分かります。

例えば何千万円もするスタインウェイのピアノで「ド・ミ・ソ」を“ジャン”とやると、どんな素人でも”音楽室にあるピアノとは全然違う”と衝撃を受ける、あの感覚です。

その“横の比較”をした場合、僕の所有するラリビー、マーチンというそこそこ上のクラスのアコギに対してもランクが上にあるんじゃないか?という感覚を覚えるサウンドです。

特に録音したときのサウンドが本当に違う…

これに関しては、アコギ(というか生音楽器全般)の音を評価する際に「傍鳴り」「遠鳴り」という言葉を使ったりするのですが、「傍鳴り」が弾き手が感じる音に対し、「遠鳴り」はその名の通り離れたところにいる聞き手が感じる音を指し、常に音量問題と戦ってきたクラシックギターは「遠鳴り」が重要視されるそうです。

ちなみにスチール弦アコギはPAを通す前提なのと、何より弾き手が感じる音で売れるかが決まるため「傍鳴り」重視という噂があるらしいです(最近流行りのボディサイドにホールが空いたアコギをみるとさもありなんと感じますなw)

なのでこのギター、一度しっかりクラシックギターを弾ける人が弾いたのをリスナーとして聞きたいです…笑

それにしても素晴らしい楽器なわけですが…唯一の問題は…所有楽器で一番音の良いギターが一番買値が安いギターになってしまうということですね笑

まぁこれが楽器道楽の面白さでもありますが。

アコギ弾きの皆様、国産ルシアーのヴィンテージクラシックギター、状態に気を付ければマジでオススメです。

騙されたと思って1本行ってみてください。
それがいける金額ですし、ハカランダにこだわらなければ5万以下で全然あったりします。



■まとめとサウンドサンプル

最後に…

”ジャパンヴィンテージ”

という称号はトーカイだオービルだではなく、国内名工のクラシックギターにふさわしい、と感じました。

※サウンドサンプル…
録り音聞くとマジでギターが2ランクくらい上手くなったと錯覚します…苦笑

丁度いい比較があったので…演奏の内容はシカトで…苦笑


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