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マーチンに関しての考察 ‐カスタムショップ、中古などあれやこれや‐

と、いうわけでニューギターを買うに至った過程で、最近のマーチン事情やカスタムショップの流れなどを改めてお勉強したので、その情報と考察をつらつらと。

マーチン購入を考えている方の少しでも参考になれば幸いです(そんな大層なものではない)。


・スタンダードモデルに関して


まず、現行のスタンダードモデルに関するおさらい。

昨今、ギター界隈では材料高騰と円高のダブルパンチでマーチン、テイラーなど海外メーカーの急激とも感じる値上げが話題になっています。

2022年7月時点での代表機種のスタンダードシリーズの新品定価(クロサワ楽器の通常値付)は以下。
10万前後の新素材系や20万位のエレアコなどは詳しくチェックしていないので割愛させていただきます…。

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・D-18:39万
・D-28/D-35:45万
・000-28/OM-28:48万
・OOO-28EC(クラプトンモデル):56万
・OMJM(ジョンメイヤーモデル):59万
・OOO-42:91万
・D-45:145万
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3~4年前のマーチンD28が30万代前半位なので1.5倍近くは上がってるのですね…

まぁテイラーなんかはそれ以上に値上がりしている感じですし、国産ブランドも上がってきているのでこれはもう仕方ない流れだと思います。

楽器屋の店員さんに聞いても、マーチンもテイラーも国内の代理店・楽器屋がこれまで「相当耐えてくれていた」状態であり、むしろ良心的とも呼べるレベルの値上げ幅なようです。

それに「今後ギターが値下がりする要素が無い」、そして「もっと上がっていく」と口を揃えて言っていますね…苦笑

特売品など多少前後しますが、アコギの“基準点”である定番機種・D28が大体45万前後です。
テイラーの300番台も40万前後なので、これが現在のアコギでひとつの指針となるラインだと思います。

上記を踏まえた上で、今回のポイントである”カスタムショップ”の世界へと進んでみましょう。


・カスタムショップとは?‐超個人的感想‐


さて、これを踏まえた上で…今回のポイントである”カスタムショップ”に目を向けます。


とりあえず公式の紹介文を載せときますね。

ユーザーの要望を可能な限り再現する、マーティン・カスタムショップ。
言わずと知れたナンバーワンアコースティックギターメーカーである同社では、500人弱の従業員が日々高品質なギターを製作している。

そのマーティンのナザレス工場の一角にある熟練の職人たちで構成される別枠の部署がカスタムショップです。

カスタムショップに所属する人員は約20名程。
技術はもちろんの事、何度も面接を繰り返し、合格した者のみが所属できる、超エキスパート集団なのです。

ハンドメイドでの組み上げとカスタムショップグレードと呼ばれる選定材を使ったモデルが最大の特徴です。

まぁ、これをそのまま信じるほど青くはないわけですが…苦笑

とはいえブランドの“顔”となるトップモデルを作成するわけで、会社のプライドにかけてその質を悪くするわけにはいかない、というのはあると思います。

実際、現在マーチンのトップ機種である“オーセンティック”シリーズは全アコギマニアから絶賛されるほどの名作となっていたりします。

でも…ですね…

世界的評価は分かりませんが…

何気に…マーチンのカスタムショップって日本国内において、“そこまで評価されてない”気がしています…

先述のオーセンティックやその前のゴールデンエラなどのトップモデル、ハカランダ仕様のプレミアムモデル、クラプトンやポールサイモンといった有名ギタリストの限定モデルなど…、“コレクターズアイテム”としてプレミア価値がつくものは別格としても、それ以外の…”普通のカスタムショップもの”(変な表現ですが…)は中古市場でも特別に人気があって値が付いている印象ではありません。

その理由を考察してみると…まず…言葉を選ばずに言えば…

“胡散臭い”

印象があるんだと思います、というか僕にもありました…いや、ぶっちゃけ今もありますw。

そしてその主な原因は…間違いなく…

毎年、国内大手楽器店がオーダーしているレギュラー仕様をちょっと変えたカスタムモデルの乱立。

だと思います。


特に仕様そのものを変えたのではなく材の”グレード”を上げましたというヤツ

これがカスタムショップを眉唾化している元凶に感じます。

実際のサウンドがどうかは置いておいて、初めてマーチンを見に来た人が、パッと見やスペックが同じなのに…

「45グレードのスプルースを使用していまして、しかもカスタムショップの組まれて造りもいいのでむしろお得です。ほら…”トップの木目が詰まっているでしょ?”」

などと言われ、レギュラーが45万に対し60万近い価格…

これじゃ、インチキ宗教に壷を売りつけられているのと大差ないと思いますw

ワタシ含め、アコギマニアは脳が侵されてますが…「木目が詰まってる!!」と熱く語れるのは、一般視点でいえば完全に”変態”であり恐怖を覚えるに足る所業です…苦笑


せめて「シトカスプルース⇒アディロンダックスプルース」のように材自体が変わっていればまだ分かるのですが、あの”材のグレードだけアップ”ってのはマジでやめた方が良いと感じますね…。


さらに言えば…この「ショップオーダーのカスタムショップ」が…

”メチャクチャいっぱ~~いある。”

20人の熟練職人だけでそんなに沢山出来るの?とw


ここは僕の予想ですよ…

多分…カスタムショップ製でも、この辺のヤツはほとんどの工程を通常の工場ラインで作ってる気がしています。

そこをベースにポイントとなる大事な工程をカスタムショップの職人が作業・監修をする感じかと。

もちろん”その作り方で楽器が良ければそれでもOK”だと思いますし、実際ほとんどのモデルは“楽器としては素晴らしい”わけですが、20人の熟練職人が作る手工品に近いモデルという謳い文句からは少し遠い印象になるのは否めません。


あと…どこの店とはいいませんが…個人的に…

“カスタムのセンスが非常に悪い楽器屋がある”

と感じています…。

変な色にしたり…要らんインレイで派手にしたり…ギブソンのコピーをマーチンに作らせるなんていう悪趣味極まりないことをしているトコもあります…

先述の“材だけカスタムNG”を覆すようですが、こんな要らんコトするなら普通のニッパチにしといてくれた方が…と感じるモデルが散見されるように思います…


さらにいえば各楽器屋が上げているファクトリーツアーレポート(近年はコロナでやってないですが)も、興味深い反面…何かちょっと胡散臭く引っかかる原因になっているような気がしますね…苦笑


もちろん大阪のワタナベ楽器のように、値段は高くとも”おぉ、これは”と唸らせるカスタムものをオーダーしている楽器店もありますが、大手系を中心に「??」が付くカスタムものが多いのは否めない印象です。

また、書いてて思ったのですが、そもそも一般の日本人に取って「マーチンカスタムショップ=一部トップモデルとショップオーダー品」という認識かと思います(僕もそうでした)

でも実はマーチンて代理店を通せば個人オーダーが可能で、何気にそこまで高額ではなかったりします(あくまで有名ルシアーとか比較しての話ですが)。



・カスタムショップの価格 ‐お高いんでしょ~?‐

先述のようにレギュラーラインが値上がりしているわけで、当然カスタムショップも超が付く高額なのは事実です。

何度か登場している最上位モデル「D28 オーセンティック」が104万円。

まぁ、庶民には手が出ない楽器なわけですが…苦笑

でも…ですね…

著名ギタリストやギターマニアなどが「新品のアコギでは断トツでサウンドが素晴らしいモデル」などと称する楽器としてみてみると…。

海外有名ルシアーなどの場合、基本オーダーで100万を超えるものも多いですし、最近では国内ブランドでもプレミアモデルなどは3桁のものが散見されます、(元が高いので目立たないですが)当然値上がり傾向です。


これらと比較して見ると…

“世界トップブランドの最上級モデル”

としてその価格しては決して高くない気がします。


これ、今回のテキストの最終結論となりますが…ズバリ…

“実はマーチンのカスタムショップはむしろコスパが高い”

と感じます。

とはいえまぁ新品では最低60万~は覚悟しないといけない楽器、ヨダレは出ても手は出ないです…

がっ!我々には強い味方が…

そう!中古

と、言うことでやっと本丸に突入します。


・中古のカスタムショップを狙え!!


前回の記事でも少し触れたのですが、新品が値上がりしたとはいえ元々出ていた中古価格をいきなり引き上げるわけにはいかないでしょう(それに近いことをしているショップもありますが)

と、いうことで現在、マーチンに限らず海外高級ギターにおいて新品と中古の“逆転・捻じれ現象”のようなものが起きています。

一番わかりやすい例が「D-28 マーキス」をはじめとする「マーキス」シリーズ。


このシリーズ、ハカランダ枯渇によりゴールデンエラから移行したのですが、仕様が中途半端なためヴィンテージ系のマニアから敬遠されプレミアム化しなかった不遇のモデルだったりします…苦笑

しかしそれはあくまで“コレクター・マニア視点”での話。

「弾くもの」としてプレイヤー視点で捉えた場合には、材・造り・サウンドその全てがマーチンの最上位ラインで作られた楽器には変わりがありません。
ヴィンテージ好きに嫌われたアジャスタブルネックなどは、プレイヤーからすればむしろ“必須”でしょう。

で、このD-28マーキス、現在の中古市場では2000年代の美品が30万代後半~40万代前半で出ることが多いです。
新品スタンダードのD-28より安いです。

しかも。ドルフィンギターやホーボーズなど、リペア・調整がしっかりなされた状態で売られる高級アコギ専門店でも大体このあたりの価格で出ます。

車で例えると…

年式も浅く、走行距離も短いレクサスが、ポルシェやフェラーリを多く扱うような外車専門店でメンテされた状態で新品のプリウスより安い

こんな感じだと思います。

もうね…これは極度の潔癖症とかプレゼントだからなど、中古を躊躇する事情が無い限り、マーキス一択。

同系統の楽器ということを考えると、好みの差だなんだをぶっ飛ばして楽器としての『格』が違います。

ただしポイントとしてアコギ専門店での出物を買うこと、これは必須。

高級アコギ専門店で調整されてから売られる中古楽器は量販店で売られる新品より安心できます。
特に通販で現物を見ないで買う場合は、いわゆる”有名高級アコギショップ”をチョイスすると安心だと思います。

ちなみに…自分で状態の判断ができ、リペアスキルがない限り、間違ってもハードオフやメルカリでは買わないように!!!
断言しますがこのクラスの価格帯で5万円程度高かったとしても、専門店で買った方が結果割安です。

現在、マーキスに限らず、特別な材を使っているわけではないカスタムショップの中古は20万代後半~40万位のレンジで売られています。

どのモデルを選んでも恐らく新品のレギュラー品より安いと思います。

先ほど散々disったショップオーダーのちょいカスタムものも、レギュラー品に比べたら総じて高性能だと思うので美品中古を買うならアリだと思います。

今回私が購入したOM-28 Customもそんな感じですが、現行レギュラーのOM-28と比べた場合…好みの差とかそういうのを超えた楽器の“格”が2つも3つも上という印象です。

マジで驚くような音が出ます…
 
これはローコードをジャランとしただけで“全然違う”という音なので、最低限コードストロークとアルペジオが出来る程度の技術があれば、ギターの腕前とは関係ないところで感動できるポイントです。

よく言う”下手だしそんな良いギター持っても仕方ない”というのは大きな間違いです。

「音の差」はテクニックに関係なく感じることができますし、それに上手い人はそこそこのギターがあれば良い音が出せますが下手糞はそんな芸当は出来ないわけで(苦笑)

むしろ…”下手糞ほど良いギターを使うべき”と声高に主張したいですね(別名:自己弁護)。
 
冗談抜きにツイッターなどで初心者の方の動画とかを見ていていても、確実にファーストチョイスのギターと上達度には相関性を感じます(それなりに良いギターを買っている人の方が総じて上達が早いです)。

“良いギターは成長を促進してくれる”という側面は確実にあると思います。

で、その素晴らしいギターが、新品のレギュラーラインよりかなりお安い価格で買えてしまうわけです。

ちなみに同価格帯で対抗馬となる楽器はテイラー、フォルヒ、メイトンなどの上位モデル中古もしくは中堅モデル新品、国内ルシアーものの中古あたりになります。

テイラー、フォルヒなどの上位モデルは流石に良いのでここは「好みの差」となる気がしますが、中堅モデルだとマーチンの圧勝だと思います。

一方、個人的な印象としてこのあたりの国内ルシアーは微妙なものが多い気がします。
謳っている材料や造りの良さほど弾いた時の印象が”そーでもない”という感じの楽器がかなりありますね…


最後にして最大のポイントとして…このクラスの楽器を持っておくと…

“これより高い楽器にも決して負けない”

のですよ。

楽器としてひとつの“天井”を叩ける感覚です。

マーチンでいえばこれより上位のモデルはニカワ接着など「ヴィンテージに近付ける」という目的にかけた手間であったり、派手なインレイや稀少材の使用などによるアップチャージで、根本的な材の質・造りの精度などでいえば数百万円もするモデルと大きく変わらないはずです。

実際私も100万オーバーの楽器と比較しましたが、レギュラー品との間に感じるような「格」の差は感じませんでしたね。
あくまで「好みの差の範囲」という印象です。
 
100万位までの海外ルシアーのギターと比べても同じ感じだと思います。
ソモギのような300万を超えるようなギターは最初から選択肢にないので”存在しないもの”と同じですしw

もうひとつの対抗馬は“本物のヴィンテージ”となりますが。

もう千万レベルになる戦前は当然最初から戦う気はないですw
5、60年代のモデルは何度か弾いたことがあり、もちろん素晴らしい音がするのですが、弾き心地やメンテなどを考えると「弾くもの」としてみたら価格相応の価値を見出す個体に出会うのは難しいと思います。

現実的な予算的に対抗馬となってくるのが70年頃のモデル…私も所有しているのでじっくり弾き比べられますが…カスタムショップの圧勝ですw

決して悪いギターではないですが、70'マーチンはヴィンテージとしてプレ値が付くような楽器ではないと思いますよ…汗

多分これから音が劇的に良くなる伸びしろもないし、ロッドが無いから弦高を追い込めず現代の奏法に対応できるセッティングをするのは難しいです。

安値で中古を買ってボーカリストがガンガン使う、みたいな用途には良いですが、ヴィンテージとしてプレ値化していくのには疑問を感じますね…

所有者としてはもちろん値上がりはして欲しいのですがw


と、いうわけで全力の自己弁護と手前味噌を振り回しつつ…新品のレギュラーモデルを検討していたり、30万前後の予算で「一生もの」の楽器を探している人は、是非「中古のカスタムマーチン」を試していただきたいと思います。

価格以上の価値を見出せると思います、あと恐らく新品に合わせてすぐに値上がりしていくと思いますので買うなら早めに、というのはマジであると思います。

と…ゾンビが手を伸ばして同じ沼に引きずり込もうとしております…笑


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