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洗剤「セスキ」誕生物語

「セスキはわしが育てた」

と言うのはちょっと不遜でしょうか(笑)

セスキ炭酸ソーダはずっと昔から地球に存在する物質です。石けん百貨が作り出した訳ではありません。

でも、今のような人気洗剤になる前のセスキ炭酸ソーダ(及びその他のアルカリや酸)にいち早く注目し情報を広めたのが石けん百貨だったのは本当です。

セスキ炭酸ソーダとは

まずはセスキ炭酸ソーダについてご説明しましょう。

俗称「セスキ」。正式名称は「セスキ炭酸ソーダ」と言います。

炭酸ソーダ(炭酸塩)重曹がそのままの形で仲よく結晶の中に存在している物質(複塩)です。水溶液のpHは約9.8の弱アルカリ性。炭酸ソーダ(pH11.2)と重曹(pH8.4)の中間の性質を持っています。

油脂を自然乳化して石鹸のような物に変えたり、タンパク質の構造を緩める事が出来、その性質が洗剤として役立ちます。界面活性剤では無いので泡は立ちません。

実はとっても身近な洗剤だった

アルカリによる洗浄はずっと昔から私達の身近で行われていました。

例えば江戸時代には竈(かまど)の灰を水に溶かした上澄み「灰汁(あく)」を洗剤として使っていました。灰汁はアルカリ性を示すので汚れを落とす事ができるのです。

浮世絵師・鈴木春信の作品には「灰汁槽(灰汁を貯めておく容器)」が描かれており、元文5年(1740)刊の「絵本みつわ草」には「布を洗濯するには灰汁をもって去り…」という記述があります。

物不足の時代にも活躍

時代が進むと洗浄力のより高い石鹸のほうが好まれるようになりアルカリの人気は下がります。

しかし物資が不足した第二次世界大戦中には石鹸の代用品として再び重宝されます。「(灰汁で)シーツなどの白物を洗ったが、思った以上にきれいに洗えた」という庶民の記録も残っています。

その後戦争が終わって石鹸や合成洗剤類が豊富に出回るようになると、アルカリ(灰汁)での洗浄は再び廃れてゆきました。

セスキ炭酸ソーダと石けん百貨の出会い

「着たら洗うが普通の今、石鹸や洗剤を洗濯のたびに使う必要がある?」
「そこそこ洗えて、もっとお手軽に使える『洗剤』はないか?」

社内でこんな話が出た事が、石けん百貨とアルカリ洗濯が出会うきっかけになりました。

軽い汚れものなら洗える洗浄力がある。環境への負荷が低い。価格が安くて簡単に気軽に使える。これらの条件を満たす洗浄剤を探しまわり、最後に出会ったのがセスキ炭酸ソーダなどのアルカリだったのです。

無いなら作ろう

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そうして「昔ながらの灰汁洗いの現代版、『アルカリ洗濯』をプッシュしよう」となったものの。その頃にはすでにアルカリでの洗濯は過去のもの。昔は身近だった「洗濯ソーダ(炭酸ソーダの10水塩)」なども生産量が落ち込み、価格も高くなってしまっています。

「無いなら、作ろう。うちがセスキを洗剤としてプロデュースすればいい」

そう考えてセスキ炭酸ソーダの販売を始めたのが2000年4月の事。セスキ炭酸ソーダと一緒に、「石けんライフのパートナーたち」シリーズとして炭酸ソーダ重曹クエン酸も発売しました。

当時は今のような立派なパッケージではありません。ジッパー付きビニール袋に簡単なラベルを貼っただけ。業務用大袋を仕入れて手で小分けして計量して封をして…すべてが手作業。スタッフ全員粉まみれでそれはそれは大変でした。小分け作業タイムが近づくと、みんなブルーな顔をしていたものです。

「アルカリウォッシュ」発売

発売当初は試供品をお配りしても「この白い粉、何ですか?」という反応が多かったセスキ炭酸ソーダ。

それでもその良さを認めて下さるお客様が増えるにつれ出荷量もだんだんと増えてきました。当然、手詰めには限界が来ます。

2001年8月には「アルカリウォッシュ」として地の塩社から発売される事になりました。

セスキ炭酸ソーダ専用工場も建って袋詰めも機械におまかせ。石けん百貨社屋での「小分けタイム」もめでたく終了。「もう、粉まみれにならなくていいんだ…」スタッフ一同、嬉し涙にむせんだものです。

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「アルカリウォッシュ」のパッケージには、漫画家の赤星たみこさんがイラストを寄せて下さっています。「原稿料は出世払いで」との厚かましいお願いを赤星さんは快諾。素晴らしいイラストを描いて下さいました。

今でも講演で「あのときの原稿料はアルカリウォッシュ10袋でした(笑)」と、笑いに紛らせながらセスキ炭酸ソーダを応援して下さっています。

浸け置き洗濯法の発見!

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セスキ炭酸ソーダを溶かした液に数時間浸けておくと汚れ落ちがよくなるという「浸けおき洗濯法」。これは、セスキ炭酸ソーダを愛用して下さっていたお客様の発見なのです。

あるとき、そのお客様が洗濯液の中に洗濯物を何時間か浸けたままにしてしまわれました。あっと気がついて慌てて洗濯機をのぞき込むと、なんだかいつもより水が汚れています。

「もしかして、浸けおきすると汚れがよく落ちるの?」

何回かご自宅で浸けおきを繰りかえして「これはイケル」と確信を持たれたそのお客様が当時の当店掲示板に書きこまれ、それ以後「浸けおき」がアルカリ洗濯の合い言葉に。

この事が洗浄剤としてのセスキ炭酸ソーダをさらに飛躍させてくれたといえます。製品というものは、世に出てからもお客様の手で育てて頂いている事。そしてそのようなお客様に恵まれた有り難さ。これらを痛感した出来事でした。

新聞記事にも

セスキ炭酸ソーダでの掃除や洗濯が大分手の内に入ったころ、新聞から取材申し込みを頂きました。「せっけんでより上手に洗濯するには?」という内容の記事です。

記者の方とお話しして、2004年11月24日のこの記事にアルカリ剤についても載せて頂く事ができました。

記事内容はこちらからどうぞ。

昔は灰汁(あく)で洗濯していた事。アルカリには油やタンパク質汚れを落とす力がある事。有機物を含まないので生分解が不要で環境への負荷が低く、石鹸とアルカリ剤はとても相性が良い事などなど。

この記事によって更に多くの方にセスキ炭酸ソーダやアルカリ洗濯を知って頂く事ができました。

布ナプキンとも相性バッチリ

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今では、100円均一ショップにもセスキ炭酸ソーダが沢山並んでいます。

タンパク質を多く含む血液汚れにも強いので布ナプキンのお洗濯にとても役立つ事も広く知られました。その為「布ナプキンを使うならセスキ炭酸ソーダもね!」とお勧めされている光景もよく目にします。

そして現在も

2011年5月には、セスキ炭酸ソーダをはじめとするアルカリ剤や酸を使って家中をクリーニングする知恵の集大成、『アルカリと酸で洗う本』を出版する事もできました。

現在では石けん百貨オリジナルブランド製品としてもセスキ炭酸ソーダを販売し人気商品として定着しています。

試供品をお配りして「これ何ですか?」と質問を頂いていたころからすればまさに隔世の感があります。


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