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対面でなくても理解し合える--「4面」社会

 正月は、新型コロナウイルスのオミクロン型に警戒しつつ、親戚や旧友に会った人も多いだろう。対面の接触を避けてきただけに、「直に会う」ことの重みを噛みしめる機会になった。出勤する日数も増えた。一方、テレワークが定着してきた状況もある。職種や業務内容に応じて、リアルとオンラインの比重を調整している職場が多いようだ。テレワークの場合、メール・SNS・電話で連絡を取りながら、随時、テレビ会議システムが活用される。
 「人との接触の仕方」は4通りある(図参照)。出勤日は、職場の人々や得意先と「対面接触」をする。メール・SNS・電話は、「非対面接触」である。「非対面接触」には、昔から手紙という手段があった。コロナ禍で、顔を見ながら対話できるテレビ会議システムも普及。「非対面」よりも「対面」に近く、「半対面接触」と呼べるだろう。
「対面」「非対面」「半対面」と、接触の仕方は多様になったが、今後は、分身であるアバターの活用が増える。デジタルな仮面をかぶる「仮面接触」である。すでにアバター宴会、アバター旅行、アバター婚活などが登場。テレビ会議システムより、「直に会う」感覚に近い。話したい相手に近寄って、声をかけることもできる。
 アバターの形には、二つの流れがある。本人とそっくりな「似姿タイプ」と、違う存在になる「憑依(ひょうい)タイプ」だ。「似姿タイプ」は、将来的には等身大のホログラムなどが加わり、現実に近い出会いを生み出す。一方、「憑依タイプ」は、実際の自分とは異なる姿になろうとする。危惧されるのは、理想の姿を追い求めて、現実の自分との隔たりに悩む人が出ることである。いっそ動物などのキャラクターに変身した方が心の健康には良いのかも知れない。
 「対面」「非対面」「半対面」「仮面」という接触方法で、人の印象は変わる。「対面接触」「半対面接触」では冷淡な人柄なのに「非対面接触」では親身なメールを貰うこともある。「仮面接触」によって、初めて本音を語れる人もいる。「対面」だけが相互理解の道ではない。(発想コンサルタント)

日経産業新聞2022年1月21日掲載

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