32 生き物の賢さを前提に考える
カラスが道路にクルミを置いてクルマに割らせる話は有名です。すべり台も、滑って遊びます。「カーカー、あっちの公園に新しいすべり台ができたぞ」。インドなどにいるベニガオザルの場合、大人がケンカをすると、赤ちゃんザルが「まあまあ」と割って入ります。オウムは、実験者が工夫した三重四重の鍵をしばし眺めた後、さっと開けてしまう。イカは、鏡で自分の姿を認識しているらしい。「鏡よ、鏡、世界で一番美しいイカ女王はだーれ?」ゾウは低周波音で何㎞も離れた仲間と会話を。足の裏で素早く地震を察知して「危ないぞう、丘に逃げろ」と…。
最近の研究で、動物たちの知能のことが色々と分かってきました。植物だって負けていません。植物の葉が害虫に食べられると、それを防ぐ物質を作ります。そして、「虫が来ているぞ」と空気中に物質を放出、昆虫の天敵をおびき寄せる。敵の敵を呼び寄せるわけです。隣り合っている植物同士は、根元から土中に出される物質で、コミュニケーションをしているとの研究も。「お隣同士、引っ越しできないので、仲良くしましょうね」。そういえば、『日本書紀』にも「その国では、草木ことごとくおしゃべりができる」とありましたね。
なんだか、まわり中の生き物に知性があると言われると、食事ものどを通らなくなります。ヨーロッパなどでは完全菜食主義のビーガンが増えていますが、ビーガンも、植物が対話のようなことまでしていると知ったら、食べるものが無くなってしまう。殺生しながら、「いただきます」とありがたく頂戴するしかないぞ…という東洋の教えは、よくできているといえます。
もっとも、ペットを飼っている人は、科学者の言葉を待つことなく、彼らの知性を知っています。「親ばか」の面はあるにしても、ちゃんとコミュニケーションをとって理解し合っている(と飼い主は信じています)。イヌやネコが、何か行動をしたときに失敗する。すると気まずそうな顔つきをします。見られていると「まずい」と思うらしい。
生き物は、みんな賢いのかも知れないとなったら、地球環境の中で、人間はそう傲慢には振る舞えません。子どもを育てるときも、「あなたのまわりの虫も獣も草花も木も、色々と考えているのだよ」と理解させることは大切。生き物は賢くて、無生物だけどAIも登場して、うかうかしていられません。もっと考えなくちゃ…。
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