お客さんが多いと家も喜ぶらしい
ひっそりとしたわが家にひとりでいると家が守ってくれている感じがする。一方、お客さんがたくさん見える日は、わが家も華やいでいる。にぎやかになるぞ、と期待しているのかも知れない。まあ、招く側としては、色々と大変である。散らかった部屋を片付けて丹念に掃除をする。食器も洗って、花も活けなければならない。もちろん、料理作りも時間がかかる。ピンポンと最初のお客がやってくる。いつもの通り、あの方だ。定刻きっかり律儀に見える。それから、続々とみんなが到着する。1時間くらい遅れてくる夫婦もあって、これもいつも通り。毎回、言い訳がちょっとずつ違うのだが、前から来ているお客達は誰も聞いていない。「ああ、いつもと同じ。1時間遅れなら、まあまあね」と寛容である。
やがて、窓の外は暗くなり、街にも明かりがつく。その頃は、もう、家の中は、笑いとおしゃべりと音楽で満ちている。さて、深夜、お客さんが帰宅し、皿洗いも終わる。やれやれという思いである。でも楽しかったな。不思議なのは、我々と一緒にはしゃいでいたように思えた家も、ホッとしていること。もちろん、こちらの気持ちが、反映しているのだろうが。お客さんをたくさん呼べる家は、楽しいことが多くなる。いくら騒いでも、よそのうちに音は響かない。住めば都も遷都する。そうした安心感を与える住まいかどうかは、訪問すればすぐに分かる。どっしりとした安定感。そんな家は、ひとりのときも守ってくれる。
東京カンテイマンションライブラリ関沢コラムより