NICEHCK NX8は"NX7"系の超高解像度演出的な音色から進化~自然で高度な音質バランスを実現した確かな実力の200-250ドル級8ドライバ・トライブリッドイヤホンレビュー #PR
NICEHCK NX8 とは
NICEHCKの2024年11月新発売、NX7シリーズの流れを汲む期待の新作「NICEHCK NX8」が登場しました。
年2回、秋葉原で行われているオーディオイベント「ポタフェス」で日本にNICEHCKが初出店していた際、開発機が展示されていたNX8。
開発機からブラシュアップされた製品版が満を持して登場し、一足先に届きました。一部実費負担提供 #PR です。
今回も音質に関しては自由に書かせていただいています。
なおプロモーションの手伝いなどでは可能な限り忖度させていただいています(笑)
NICEHCK NX8はオーディオマニアとして期待を寄せる一品です。
ドライバ構成は1DD+6BA+1PZT。1つのダイナミックドライバに6つのバランスドアーマチュア、そして1つの圧電セラミック素子です。
価格帯は実売で200-250米ドルほどで、発売記念の価格は179ドル。そこにさらにアリエクスプレスのブラックフライデーのクーポンが合わさることによって150ドル付近を実現するとみられます。
「NICEHCK NX8」の前身である「NICEHCK NX7」シリーズには、初代NX7、NX7 Pro、NX7 mk3、そしてNX7 mk4がありました。
これらは7ドライバー構成で、ダイナミックドライバー(DD)とバランスドアーマチュア(BA)に加え、ピエゾツイーター(圧電セラミック素子)を搭載しているのが特徴です。
NICEHCK NX7 mk4 14750円
国内のイヤホンとしてピエゾ素子を採用するイヤホンには「intime 碧」シリーズなどがあります。
intme 碧 Light 2019Edition
NX7シリーズの音の特徴は、音のエッジを強調し、情報量と分離感を高める「超高解像度演出」にあります。初代NX7は「ある種の雑味」を伴うイヤホンでしたが、シリーズを追うごとに「分離感や高解像度感」を維持しつつ、自然でナチュラルな音色や空間演出が進化してきました。代が進むごとに高音質に、というよりよりバランスが自然に、ナチュラルに、そして高価格化していったイヤホンでもあります。
そして今回、長い開発期間を経て登場した「NICEHCK NX8」は、ついにドライバー数が8ドライバーへと増加し、さらなる音質の追求が行われています。
それでは、詳しく見ていきましょう!
いつものように音質の評価が知りたい方は音質評価のところまで飛んでください。
NICEHCK NX8 開封体験
NICEHCK NX8 音質評価・レビュー
それでは音質の評価を行っていきます。
一言で言うなら「良い意味で普通の音」です。
ファーストインプレッション
NX8を開封して最初に感じた印象は、「ナチュラル」であるということ。初代NX7の荒々しさは全くなく、非常にスムーズで、ピエゾツイーターの鳴り方も自然で、ピエゾツイーターだと感じられないほどです。
全体の音の質感もかなり高度にまとまっており、各ドライバーの担当音域の分裂感もありません。(参考までに、SIMGOTのEW300には多少分裂感があり、それはそれでまた楽しいと感じました)
NX8をNX7の続編と考えると、NX7シリーズを好んだ方には「やや人工的な高解像度的演出」がなくなったことで、NX8を気に入るかは大いに疑問が残ります。
NX7シリーズとは開発の歴史的経緯はあれど別物のイヤホンだと考えたほうが良いと思われます。
ただ、NICEHCKはHimalayaで見せた実力を発揮し「ちゃんとした」良い音のイヤホンを作り上げてきたと思います。その点は非常に評価できます。
さらに、ノズルが交換可能で予備が付属しているため、将来的なチューニングフィルターの追加販売なども期待でき、メンテナンスがしやすい点も高評価です。
NICEHCK NX8の音質と使用感
NX8のF特性を耳だけでまず印象を取ると、NX7シリーズのピークやディップをなだらかにし、ナチュラルな音へと変化させ、さらにブラッシュアップした印象です。
特筆すべき部分は、外耳道閉管共鳴(5-7KHz)の影響を減少させる設計が試みられていることが感じられ、非常にスムーズで心地よい音が楽しめるところです。
音の分離感は一聴したときには控えめに感じられますが、実際には各音域の音はしっかりと出ています。エッジの立った音ではないため、「高解像度」と一瞬思わない可能性があります。
音の粒立ちが良い音という感じもあまりありません。
音場感は狭めです。
広がりのある音というよりは適正な音が頭内で展開される形になります。
定位は悪くはありませんが、カッチリしている定位感とは違いやや曖昧さを感じるナチュラルな定位感です。
低音は弾力的で過度な色付けや演出感がなく、中音域は自然で金属的なBA感のある音色でもありません。
音の寒暖はニュートラルですが、暖色でもなく、硬質や尖った感じもなく、とてもバランスの取れた音です。
パッと聴いた感じでは情報量が多いように感じられないのですが、よく聴くと情報量があり、様々なソースの要所要所で濁ったり曇ったりごちゃつくことがない音であり、その点で多ドライバの恩恵を感じます。
周波数特性音圧グラフを見ながらの評価
squig.link にて公開されているATechReviewsさんの測定したグラフをお借りします。
AtechreviesさんのXアカウント
ATechReviewsさんのYoutubeアカウント
さてグラフの読み取りに戻ると、10KHz~13KHz付近はやや凹みがあり、ここで高音域の聴き心地がやや物足らないと感じる可能性が考えられます。実際に聴いたとき、特にストックのケーブルでここは物足らないです。
ただ、リケーブルするとそこはあまり気にならなくなります。それでもやはり高音域が過激という感じにはなりません。また、これ(10-13KHzの凹)は長時間のリスニングの時の耳への「聴き疲れ」を防ぐ狙いがあるかもしれません。
つぎに、測定に使うカプラー(筒)(業界の事実上の標準はIEC711のコピーカプラー)の影響は8KHz付近に突然大きなヤマになって表示されることが多いですが、これが全く見えません。
実際の外耳道では8KHzあたりの山が5-7KHzのどこかに移動することになるそうですけれど、カプラーでのピークがないということは外耳道でピークがあまりないはず、と推察されます。
実際聴いてみても5-7KHz付近に強い共振は感じられず、多少の共振はあるものの、かなり共振が抑えられていることがわかりました。
NICEHCK NX8グラフの特徴としては、AFUL Performer5に非常によくにており、AFULのOEMなのではと疑いたくなるほどF特性が似ています。
SIMGOT EM6Lと比較するとEM6Lのほうが高音が全体に出ているバランスなのがわかります。
SNS(X)で、「NICEHCK NX8はNICEHCK Himalayaの廉価版なのでは?」という質問をもらったのですが、断じてそうではなく別物のイヤホンです。
まずNICEHCK NX8は金属筐体ではないので、その時点で響きが異なります。おおむね樹脂のほうが響きは抑えられるという傾向があります。
金属と樹脂では全く異なった音であると目星がつきますが、トーンカーブ自体も全然違います。
Himalayaより低音は出ており、高音域はよりピークやディップ(凹み)のない滑らかな伸び方をしているのがわかります。
NICEHCK NX8はリケーブルの効果が絶大
上記はおおむねリケーブル前の印象ですが、リケーブルを推奨する声が早速SNS(X)上では見られたため、私もリケーブルを行ってみました。
とりあえず手持ちで一番いい奴、ということでNX8と同じNICEHCKのケーブルをごそごそ探したところ、DearOrpheusが見つかりましたのでDearOrpheusにしております。DACはTRN TE Proを使用しました。
NICEHCK DearOrpheus(ディアーオルフェウス)は非常に高価なフラッグシップのケーブルです。ここまで高価なケーブルでなくても良いので、2000-5000円くらいの純度は比較的高めの銀メッキ系の銅線や単結晶銅線などを使うといいと思います。
ケーブルとしては例えば NICEHCKであればMixDNAやDuskSky、SnowWing、IcyMoon、またはJIALAI JLY2、TRN T2 Pro, などの銀メッキ線やTRN T3 Pro、KBEAR KBX4913 などの純銀線など高音域を伸ばす傾向のある、ハッキリさせる傾向のケーブルです。
NICEHCK DearOrpheusに変更すると音の透明度と分離感と音の明瞭感が向上し、標準のケーブルではピエゾ感が薄かったものが、リケーブルをするとピエゾツイーターが主張しだしました。その状態では粒立ちのある高音が降り注ぐのが感じられます。
リケーブルしても、音場感や定位感はそれほど大きくは変化しない感じがしました。(若干音場感は広がる感じもあるのですが、とても微妙な変化です。リケーブルすれば広大な音になる、といったものではありません)
この価格の製品にリケーブル推奨と言いたくないのが本音ですが、NX8にはリケーブルが推奨されます。
本体にコストを集中させたであろう結果か、付属のケーブル(ストックケーブル)では明瞭感や分離感が控えめに感じられますし、少々つまらない音すぎではないでしょうか。
響きについては、樹脂筐体なので控えめです。機材自身が金属筐体にして響いてしまうのはオーディオ的な聞き心地は楽しめるのですが、原音忠実的な適切さからは離れてしまうわけであり、NX8の狙いはなるべく忠実な再生だとおもわれます。
味付けはリケーブルしてやるとどんどん出てくる感じですし、NICEHCKはケーブルも多く販売しているため、ユーザーにリケーブルを楽しんでほしいのであるという意図もあると思います。
ただもう少し良いケーブルを付けてくれた方が良かったのかもしれません。これはストックケーブルで展示されるであろう店頭の試聴で大きなマイナスになると思われます。(店頭販売の際店にリケーブルをさせてくれ、というのは結構酷ではないでしょうか?あるいはNICEHCKさんが店頭サンプルの数でフォローするとか必要そうに思います)
Himalayaではストックのケーブルとのマッチングが本当に完璧だったということを考えると、NX8のストックケーブルはやや残念ではありますが、本体の中身にコストを集中させようという意図は理解できます。
まとめると、NICEHCK NX8は標準ケーブルに対して質のいいケーブルにリケーブルすることで、音質の向上が顕著に感じられます。
NICEHCK NX8 総評
NX8の最大の特徴は、(NX7に比べれば)高音域~超高音域の「ヌケ感」「爽快感」「さっぱりした感じ」「エッジの立ち方」が少ない、ナチュラルな音質かつ高音質であることです。非常に適正な音と引き換えに「楽しく過激で元気な部分」を失ったともとらえられます。
個人的にはもう少し高音域の刺激や特徴が欲しいとも感じます。また、響きや音の広がりはもう少し欲しいところです。
ネガティブな意見に見えるかもしれませんが、ネガティブな意味ではありません。
非常に適切で適正な、高度なバランスのサウンドを実現しているということの表れでもあります。(我々が普段生活の中で聴いている自然な音を思い出してください。そこには金属的な余韻やエコーや音の曇りなどはありませんよね?)
同じようなことをAFULのExplorerの時にも書いた気がしますが、Explorerの時のような色気の無さだけの音ではなく、適正で正しい感じなのに、ちゃんとオーディオ的な聴き心地もある、というのがNX8です。
一方で強くフィードバックしたいのは、NX7の荒々しい魅力もそれはそれで魅力的だった、という事です。飲み物で例えると、果汁100%のそれもストレート絞りのジュースは体に良いしおいしいし、最高にラグジュアリーでプレミアムです!
でもコカコーラやドクターペッパーの胡散臭いおいしさというのもあります。それも追求して欲しいんです。…だから昔のNX7系列も重要なんじゃないかな!…ということです。NX7初代はまさにドクターペッパー。NX7 mk4はいわばクラフトコーラ。そしてNX8は「果汁濃縮還元で一部ストレート果汁のミックスジュース」という感じです。
正しくて適正バランスかつ良い音が欲しい人がNX8をつかむべきだと思います。自然なサウンドを好む人。リケーブルを楽しみたい人。バランスの取れたイヤホンを探している人におすすめだと思います。
エージングについては、自然に使うことでのエージングに期待しています。NX8は過激な音量でのバーンインは吉と出るか凶と出るかわからないと思いました。まずしょっぱなからバランスが良いと思いますので、過激なエージングはするとしても自己責任で行いましょう。
結論として、NX8は長く愛用したい一本です。NICEHCKがHimalayaで示した実力を感じられる製品でした。
NICEHCK NX8 お買い求め
Amazon JP
AliExpress NICEHCK Audio Store
AliExpress NICEHCK Official Store (コード: NX8123)
ほか、KRHIFI、MoonHiFiなどでも取り扱いされる予定です。
NICEHCK NX8は11月21日の19時に発売。
価格は199ドルで初回は割引コードで179ドルで購入可能でした。
さらに翌日からブラックフライデーセールでAliコードも併用可能とのことで159ドルを狙うことができました(2024年11月30日現在はAmazonで発売が開始されました)
最後まで読んでくださってありがとうございます。
NICEHCKのブラックフライデーセールのクーポンリストもおまけで貼っておきます。