TRN 青龍 Azure Dragon 音量を上げたくなる、高い開放度のハッキリ平面磁界駆動イヤホン
TRN Azure Dragon について
TRN Azure Dragon 青龍は、TRNという中国の有名なイヤホンメーカーの四神シリーズのイヤホンで、1個の平面磁界駆動ドライバーユニットを搭載したイヤホンです。平面磁界駆動のイヤホンは、現在では多々発売されています。
平面磁界駆動とは
平面磁界駆動(以降 平面駆動)とは、従来のダイナミックドライバのイヤホンの振動板は円形の膜の一部を閉じ込めたような形になっています。この画像の右側のような形になっています。
よくあるスピーカーのイメージそのものがダイナミックドライバ(DD)です。
対して平面駆動は振動板全体に磁石が張り付いており、理想的には振動板の膜に均一に力が働くため、より一貫性の高い(コヒーレントな)音が出せ、歪みの少ない音が出せるという特徴があるとされます。
平面駆動は、平面駆動DD、とも表記されることがあります。
こうした平面駆動の振動板を採用した製品は今までLetshuoer S12,NICEHCK F1Proが一番のお気に入りでしたし、KZ PR1 Proなども購入しました。
音がよいなと感じはするもののなぜか使用頻度が下がる、ということが平面駆動の製品には多かったです。
分析的に聴く分にはかなり良いのだけど、音楽の中身を楽しむ時、違和感を感じてしまうことがありました。
平面駆動のイヤホンは、2022-2023年頃に一般化し、出回り始めました。比較的最近イヤホンに降りてきた技術ですが、なかなか音楽が楽しめる音の製品はなかなか生まれてこなかった印象です。
いわゆる解像度の向上感があり、一貫性のある音であり、細かい音が聴こえる点で優れているものの、初期の頃は低音が少ないものが多かったり、高音域が暴れまくるイヤホンが多かったといえます。
たとえてみると
「蛍光灯の光」が従来のダイナミックドライバの寒色系イヤホンで
「白熱灯の光」が従来のダイナミックドライバの暖色系のイヤホンで
「LED電球の光」が平面駆動のドライバの寒色系イヤホン
……と、そういう感じがします。
市場の中で一番最初にバカ売れした高い完成度の平面駆動のイヤホンが「Letshuoer S12」と「7Hz Timeless」という機種です。
特にS12は19000円ほどの製品で、一昔前は12000円ぐらいの値段でつかむことも可能な時期があり、平面駆動イヤホンの低価格化に一役買いました。S12は私が初めて手にした平面駆動のイヤホンで、非常に高いディティールを感じられ、平面駆動のすごみを感じられたイヤホンです。
平面駆動のイヤホンは年々低価格化と高品質化が進んでいるのですが、Azure Dragonはそんな中で3万円という価格を打ち出してきました。
TRN自身も今まで、6000円の「Suzaku 朱雀」1~2万円の「Kirin 麒麟」と低価格を含めて平面駆動のイヤホンを出してきています。
「Azure Dragon」はTRNの平面駆動では一番高価な製品で、商品に対する期待値のハードルが上がります。
本記事では NICEHCK F1 Proとの比較も交えながらAzure Dragonというイヤホンがどんなものであるか、見ていきましょう。
試聴環境はXiaomi 13T Pro+Sonata BHD Proを利用して、YoutubeやSoundCloudの曲を聴いています。
TRN Azure Dragon 音質評価と総評
TRN Azure Dragonは、やや寒色系のニュートラルな音質を持ち、広い音場と高い分離能力が特徴です。演奏の音場は縦横に広く、立体的な音場を感じさせます。カチっとした音で、立体的でありながら広い空間を表現しているようです。仮面ライダーなどの特撮ヒーローやロボットを思い起こさせるデザインの凝り具合と質感が最高。
高音域は伸びやかで、背面開放の特徴からくるヌケ感が心地良い印象であり、ドライになりすぎず耳あたりが良く、透明感があります。低音域は硬くタイトなアタック感を持ちつつ、過度に固くならないバランスが取られています。特徴的な低音域を持ちつつボーカルが中音域に被らないように配置されているのも良いポイントです。
さらに、平面駆動らしい分離の良さがあり、音の掴みやすさとリスニングの心地を両立しています。クリアな音場表現もTRNらしさを感じさせます。同じTRNではVX ProやBA16ほど寒色になりすぎないトーンバランスも良いです。
総合的に見て、音質、デザイン、付属品、使い勝手など、多くの面で高評価です。
価格だけはもっと安ければうれしかったけれど、この凝ったデザインと開放感の両立唯一無二であることから、仕方ないのかなと思います。
もっと低予算であれば NICEHCK F1 Pro は正直お得感があり、おすすめします。ただ音場が広く開放的なところがAzure Dragonの優位点としてあるため、自分の好みの傾向と、お財布と相談するといいでしょう。
TRN製品全般にですが、KZでは満足出来なかったという方に特におすすめします。KZより高音域が伸び低音はKZほど強くはないという傾向があります。
TFZ の 初代 Tequila が好きな人にも試してほしい製品だと思います。
Azure Dragon は高価格ではありますが、TRN Conch が凄まじく価格破壊だったイヤホンで、それで上がったTRNに対する高いハードルをちゃんと越えてきた、そういう意見もSNSで目にしたのですが、その通りだと思う製品です。
TRN BA16を買った時に、しばらく使って私が思ったのは、TRNは高価格帯でも頑張ってほしいけれど、もうちょっと高価格帯では総合的なバランス感覚とでもいう部分を煮詰めてほしいかも、ということです。
Azure Dragonは、BA16の好ましいと思える部分を平面駆動でも実現している一方、音の傾向はややBA16よりもウォームでもあるといってもいいかもしれません。
LEDライトで言えばやっと塗料などで蛍光灯くらいの光が出せるようになってきて自然な色になってきた感じがします。
常用して不満がなさそうな平面駆動のイヤホンですし、非常にTRNらしい気持ちのいい音傾向の製品です。
これからも頑張ってほしいと思います。
インプレ箇条書き
音質はやや寒色系のニュートラル。
(あくまでも)平面駆動としてはやや暖色的な表現。
演奏の音場は縦横にかなり広い。
本機の響き由来の余韻の音場も広い。
広い空間を感じさせつつ、カチっと鳴っている感じで、立体的な音場。
音では無いが、仮面ライダーを思い起こさせるようなデザインの凝り具合と質感が最高。
伸びやかでややドライな、でもドライすぎず、耳あたりの良い、透明な印象の高音域。
ドラムやキックなどは硬くタイトなアタック感だが、固くなりすぎない印象。
中音域に被ってこない低音域。
ボーカルをまったく低音が邪魔しない。
中音域は量は平均的、色気や生々しさ、ねっとり感は少ない。
平面駆動らしい分離の良さ。
音の掴みやすさと、リスニングの心地を両立している。
ソースそのものに含まれる音の描写力が高い。
TRNらしいクリアな空間表現。反面瑞々しさは少なめ。
TRNらしさはあるがTRN VX Proや別メーカーのLetshuoer S12ほど寒色になりすぎないようになっている。
広い音空間と余韻空間。
背面開放による抜けの良い音、特に中高音域。
背面開放によるうっとりする残音の余韻、空間の広がり。
背面解放により音は漏れる。音量に対して2-3割程度。外で使うときは注意。
TRN TIPSもウレタンもシリコンも全サイズ付属する。
ケーブルやケースを含め十分な付属品。
使いやすいケース。(開けにくかったので、従来の缶ケースはやめ、全部これにしてほしい)
フィルター交換による音変化
ステム(管)の長さで調整するタイプのフィルターが付属します。ステム径は5.9-5.3mmと太めです。
同じTRNのフィルター交換式のConchのフィルターとは互換性がありません。
付属のフィルターによる音質変化は、透過 Transparency はより高音域を増やし、気圏増強 Atomospharic Immersionはより空気感を高める…といった感じですが、私は Referrence から変える必要性を感じませんでした。
やや傾向が変わる感じと、響き方にも少し影響があったりはするため、好みで変えるとよいでしょう。
フィルターはステムの長さが違うので、耳道内部での閉管共鳴によって刺さる時に試すと、高音域のピークがの位置がずれて、刺さるポイントを外せて、聴き心地がよくなったりすると思います。
長さが違うため、装着感も変化します。
ケーブル端子交換機能
ケーブルは「TRN Redchain 赤鏥(あかさび)」という単体販売もされているケーブルで、導体の構成は高純度銅+銀メッキ無酸素銅(OFC)のミックス線ケーブルです。
端子は、2.5mm バランス、3.5mm アンバランス、4.4mm バランスの3種類が付属し交換可能です。
vs NICEHCK F1 Pro+SilkCyan
NICEHCK F1 ProはAzure Dragonより閉塞的な音で、よりウォーム感がある
NICEHCK F1 Proの方が低音域は強いが、低音の芯の強さはAzure Dragonのほうが上
音場は圧倒的にAzure Dragonが広い
Azure Dragonは音場が広いこと、残音や余韻の空間が広く、かなり残る感じが最大の特徴かもしれない。
高音域以上の音域の印象は似たところもあるが、Azure Dragonのほうがさっぱりしている感じはある。
どちらも平面駆動としては低中音域などでウォームさも表現できていると思う。
価格面ではF1 Proがコスパがいい
VS Letshuoer S12
S12は低音はずっと少ない
音の詳細感はAzure Dragonとも似た傾向だがS12の方が詳細感だけなら高く感じられる。
高音域はS12のほうがさらに強い。
余韻の空間の広さはAzure Dragonの勝ち。
S12のほうが音場の境目がくっきりしている。
Azur Dragonの広さはやはり開放してるところから来ていて、背面開放の平面駆動は珍しいのではないか。
より分析的な聴き方をするならS12、リスニングではAzure Dragonの勝利
お買い求め先
TRN Azure Dragonは一台の生産に155ドルかかるそうです。24500円かかるとかホントかな?
TRNは高価格製品であってもその価格帯ではコストパフォーマンス高い製品が多いです。
私はTRNの大ファンで、近いうちにTRNの大まかな歴史について述べた記事を書く予定です。
Azure Dragonは実は円安の中で、日本が為替的影響を踏まえても、一番トクに購入できる国かもしれません。
2024/04/28 現在、Amazonで28950円で販売されています
いっぽう 2024/04/28 現在、中国直接のアリエクスプレスでは 為替の影響か、30518円から33300円程度で販売されているようです。