小説 虚数の歌 (過去作品)
虚数の歌
著作 西野績葉
wrote at 2003/09/01
(2003年電撃hp短編小説賞応募作品/一次選考通過作品) - 2003/09/01)
登場人物
※
夕焼けが町を朱に染めていた。
あたしは木の上で夕日に染まる町を見つめていた。
朱に染まった町は言い様のない感傷を、あたしの胸に呼び覚ましていく。
夕焼けに染まった世界の中で、あたしは時々こうして感傷に浸る。
自覚していた。あたしは、人間じゃないって。あたしは人に作られたアンドロイド。量産された、魂の入った肉人形。人の形を以て人でないモノ。
でも別に困ったことはなんにもない。人よりも、優れている所がたくさんあるから、困ったことはない。優れている筈の能力があるから、困ったことはない。
――本当にそうなんだろうか?
ふと考えてしまう。
あたしは人間より優れているんだろうか、と。
確かに計算は速く正確に出来るけれど。
どんな風な人物でも演じられるけれど。
人間が作り出した不完全な人の似姿があたし達なのだろうか、それとももっと別の意味があるんだろうか。何のためにあたし達は生まれたんだろうか。
答えはどこにもない。
人間は相手の事を完全に理解することはできない。
あたし達は、インタフェースを接続すれば一つになれる。
あたし達は、人間の事を完全に理解することはできない。
……意味のある様な、無い様な、自問自答。
二十一世紀ももう、そろそろ終わりに近づこうとしている。
ロボット技術はバイオテクノロジーと量子コンピュータによってブレイクスルーを起こし、あたしたちが生まれた。
だが、何故だろう。
人に完璧に似せられて作られたはずのあたし達は、やはりどこか人間とは違う。
人間が人間をまだ完全には理解していないから、それが出来るのかどうかも怪しいから。だからあたし達はまだ人間とは違う。
こうして、感傷に浸るなんて理不尽な行為を行うにもかかわらず……違う。これはこれでプログラムされているのかもしれない。
量子で記述された世界は、どこまでも曖昧で、不完全で、そしてそれは世界の本質。
人類とは何だろう。戦争を起こし、お互いを殺し合い、愚かでいて、そしてあたし達を作りもした。無意味でいて、そしてそれでも生きるため足掻く。
核で滅びそうになっても、経済が大変動しても、それでも人類はしつこくこの地球に、それどころか宇宙に、その手を伸ばす。
……意味の無い 戯《ざ》れ言だ。そんなことあたしは解ってる。でも、想わずには居られない。
あたしは夕日を見るために丘によく訪れる。
この町は日本という国の、そしてその中でも特に辺鄙《へんぴ》な山の多い場所で、のどかで、人々は互いに干渉したがらない。
静かで、少し開けた高い丘。ここはあたしのお気に入りの場所。
そんな丘であたしはこんな風に物思いに耽《ふけ》る。
あたしは、捨てられてしまった。名前も無くしてしまった。
ちがう。捨てられたのではない。取り残された。
あたしの所有者は稲城元《いなぎげん》というおじいさんだった。
おじいさんに拾われるもっと前、その前は、性産業の奴隷だった。
その頃の事はもうあまり覚えていない。
ただ辛かった事だけ覚えている。
不要な情報はどんどんと圧縮され、デリートされていくのだ。
稲城元に拾われた事は幸運だった。『あの場所』で、私は犯されるために作られた。高い金を払って、わざわざ汚れたあたしを買ったのは何故だろう。
あたしは、稲城元の事を、好意を込めておじいさん、と呼ぶ。
おじいさんが死んで随分と経った。
あの人がつけてくれた名前は、星羅《せいら》。稲城星羅《いなぎせいら》。でもその名前をつけてくれた本人はもう居ない。あのしゃがれた声で、星羅、と呼ばれるのが好きだった。私の名前は、もう無い。私の本当の名前は、別にある。……その筈なのに、思い出すことはできない。
主人を失ったアンドロイドは、空っぽの心。尽くすもの、目標、全てを失って、宙ぶらりん。とても虚しい。
稲城のおじいさんは、あたしが自由になれるように、自分が死んだ後私がそうなるように仕組んだ。あたしは自由だった。この地球上に人間扱いされているアンドロイドがどれほど少ないか、あたしは稲城のおじいさんと暮らして、情報に接して、それを知った。
あたしは自由だ。だけどとても空虚だった。
偽造された住民IDを使って、あたしは人間になりすましている。養子に取られた人間の子供として。
でもあたしの姿は成長しない。ずっと子供のまま。
あたしは人形。囚われの肉人形。ずっと子供の姿のまま、それを修復し続ける。
技術的にはアンドロイドも成長させることが出来る。成長するアンドロイドも存在することは存在するのだ。だけどあたしは、故意にそうさせられなかった。その趣味の人の相手をするために。
あたしは毎日パン工場で働いている。稲城のおじいさんがパン工場の社長だったから、あたしはそのパン工場で働くことが出来る。
そして誰もあたしをアンドロイドだと思わない。工場は外国人労働者等で人の出入りも激しいから、あたしが成長しないことに気がつく者はいない。
仮に気がつく者が居ても、あたしは成長しない病気という事になっている。
皮肉なことに、人間に近いアンドロイドを作り出した人間は、少なくとも外見ではもう自分の能力を超える存在と自分たちの見分けがつかないで居る。
自分の存在を確かめる様に、自分の立場を思い出す。自分の現実を思い出す。
そんな風に思慮に暮れている時だった。
「……君、そんな所で何をしてるの?」
不意に、声が聞こえた。
「あ……」
振り向いた場所に居たのは、カジュアルな服を身に纏った少年だった。
木の上で町を眺めるあたしの姿は、どんな風に少年の目に映っただろう。
「その木、十五メートルはあるじゃないか。危ないよ」
あたしは少年の言葉には耳を貸さず、言う。
「アンタ、そんな所で何をやってんの?」
ここにはあまり人が来ることはない。
しかし思い当たるフシがあるとすれば、ここが大学の裏山であると言うことだ。
とすると、この少年は……まさか、麓《ふもと》の学校の生徒だろうか。
「アンタって……おいおい、オマエこそなんだよ。人がせっかく注意してやってんのに。それにオマエ――年下の癖に、人の事をアンタ呼ばわりか」
「あら? 心外ね。あたし見かけよりずっと長生きなのよ?」
「馬鹿言え、オマエどう見ても小学生じゃないか!」
「ふふふ」
蠱惑的な笑み、のつもりで浮かべた笑みも、少年には少女の可愛い笑顔と写っている事だろう。
「とにかく、そこは危ないって――」
少年が言葉を言い終わるまでもなく、大きな風が吹き抜けて、危うく身を――
「あっ、あぶねぇ!」
あたしはあっけなく落っこちた。
落ちたが……そこは端から見れば驚異的な身のこなしであろう空中三回転で、どすっ、っと地面に着地する。
「…………」
呆然と私を見る少年。
「お、オマエ……何なんだ?」
「……なんだと思う? 少年」
少年の方を右手の人差し指で指して、くすくすと笑ってみる。
あたしは少年をからかってみたくなった。
「少年ってのはよせ。こう見えても二十歳なんだぞ、俺は」
二十歳というのは意外だった。どう見ても高校生くらいに見える。完璧に『少年』だ。
「変な子供だとか、思ってるんでしょ」
「ああ、全く、人の心でも読めるのか、君」
何を考えているのか、少年は手に持った鞄をぐるぐると回しながら、こっちを見ている。
「それ位、解るわよ普通。アンタも、若く見える変な少年だと、あたしは思ってる」
「……体操選手でもやってるとか? ……だからその少年ってのはやめろよ」
「ハズレだよ、少年」
「うーん、降参……あのな。俺には咲月祐護《さつきゆうご》って名前があるんだ」
お手上げ状態、のポーズをして少年はあたしを見やる。
隠し通す事も出来ないでもないが、あたしは何故かこの少年……咲月祐護にに本当のことを言ってみる気になっていた。
「あたしはね、アンドロイドなの」
「……マジかよ――まぁ……さっきの動きはただモンじゃ無かったけどな」
「まぁね、これでも二十二年生きてるわけよ」
「そ、その外見で、二十二歳って……犯罪的だな、そりゃ……」
祐護は靴の先を地面を足で踏みながら、なんだか下を向いてもじもじとしている。
「悪いわね。一応内密にお願いするわ。……もっとも、アンタがどうこうした位でバレることは無いとは思うけど、人間って事で通ってるから」
へぇ、と納得したように何度も頷く祐護。
「生きてたら、そのくらいの年になるのかな、あいつも……」
唐突に出てきた言葉は、予想外のものだった。
「……何よ」
「イヤ、こっちの話だ」
何しみじみしちゃってるんだろう、この『少年』は。
「気になるわよ、あいつって何さ」
「うん……まぁな……まぁ、……とりあえず君に似てた」
「あたしに?」
「そう、君に」
「それは、人間なんでしょうね、もちろん」
あたしに似てると言えば、まあ量産型のアンドロイドだから同型のものもある。
姿形は殆ど見分けが付かないはずだ。もっとも、あたしは稲城のおじいさんに引き取られてからパーツを多少付け替えたから、厳密に同型のものは無いのだが。
「ああ、そうだ。君にどこか似てた……そんな気がするんだ。あの子は」
祐護はなにか、遠い昔の記憶を追想するように、遠くの方を見て繰り返す。
「そう、似てた……の。きっと思い違いだと思うわ」
そう、あたしと同型のアンドロイドを見たと言うなら解る。だが、人間だというなら、違うだろう。
「あの子は俺の、初恋の人だったんだ。今…どこでどうしてるんだろうな」
「へぇ」
「……と、よけいな事まで喋っちまったな……とにかく、今日は俺帰るわ、ちょっと、散歩に来ただけだから」
そう言って、祐護は踵を返した。
辺りはすっかり夕闇に包まれていた。
◆
俺の初恋は、奇妙な終わり方をした。
俺は昔――養護施設に預けられていた。
当時は養護施設と思っていたが、そこは殆ど孤児院と呼ぶべき様な場所だった。
小学生の頃の話だ。
別に親が居なかった訳じゃない。親は仕事で海外に出かけていた。
母親は他界して居なかった。
父は熱心なクリスチャンで、俺はキリスト教系の養護施設に預けられた。
当時まだ俺は、自分の事を僕と呼んでいた。
何時からだっただろう。自分のことを俺と言う様になったのは。
それはたぶん、あの子が居なくなってからだと思う。
背伸びをして、自分の事を俺と言う様になったのは。
俺は思い出していた。昔の景色。
昼休みの学校の校庭で、俺はいつもいじめられていた。
『おまえ、親いねぇんだろ』
『知ってるぞ』
『知ってるぞ』
『晴美の子は親無し子』
『晴美の子は親無し子』
地方の、学校では俺が居た晴美ホームというのは結構有名な所だった。
本来なら孤児が集まってくるところだという。
俺はそれを当時知らなかった。
園長からは、周りからは親の話はしないように。とだけ言われていた。
『うるさい黙れ! 僕には親がちゃんと居る』
『だったら何で迎えにこないんだよ。バーカ』
当時親が何故海外に行ったのか解らなかった俺は、何も言い返せない。
『今は、ちょっと都合が悪いだけなんだ』
『捨てられたんだろ』
『捨てられたんだな』
『咲月祐護は親なし子』
咲月祐護《さつきゆうご》。俺の名前。昔から変わらない名前。
『ゆーごは親に迎えに来てもらえない子』
グラウンドに倒される。
細かい石が、肌に突き刺さる痛み。
何を言ったのか、覚えていない。ただ――めちゃくちゃに叫んだ。泣きながら。
今思えば、子供じみた――だが陰険ないじめだった。
俺は、その当時、いじめに耐えていた。
学校が終わり、一人でとぼとぼと晴美ホームに帰る途中の道。
道の脇に、土筆が生えていた。
土筆が生えているのは、秋だったか、春だったか。
自分が居たのは何時だったのか。
それすらも覚えていない不鮮明な記憶。言い様のない不安。
俺は疲れてしまい、道脇に出る。
フェンスがあって、鬱蒼とした森が見える。
足下は芝のような、雑草の様な、なんだかよくわからない草が生えていて、そこに土筆が何本も生えている。
俺はたくさんの土筆に見入る。
そして親や自分の境遇について考える。
『ほんとは僕は捨てられたんじゃないのかな』
そんなことを思ったりする。
そうじゃないと思う。けれど確証はなくて不安だった。
目の前の木々の間を風が通り抜けて、さわさわと音を立てていた。
暫くそうして、晴美ホームへ帰った。
やけに広い玄関を入ると、マリア像が壁中をくり抜いたような場所で微笑んでいる。
帰ると、おやつが出た。
せんべいだったり、飴だったり、その日によってまちまちだったが、今思えば子供を大事にしていたと思う。
帰ったらホームの仲間と遊ぶ。
ホームでは一番年長だったので、お兄さん扱いされていた。
学校ではあんなに情けないのに、ホームに帰れば年長だと言うだけでみんな一目置く。
自分が情けなく、悔しかった。強くなりたいと思った。
ホームの中庭には、まるで小さな公園のように砂場や、うんていとか、逆Uの時のハシゴとか、そういう器具があった。
その広場で、だいたいみんな合わせて二十四人くらいの子供達の内の半分くらいが遊んでいた。
『祐護も来いよ~』
『遊ぼうよ、お兄ちゃん』
みんないい奴らばっかりだ。
『ほら、祝福ぅ~』
当時の俺より五つばかり年下の、男の子が地面の砂をつかんで空に向かって放り投げる。
『うわ、止めろよ、ばか』
そうして俺は遊びにかり出される。
無邪気だった。
どうしようもなく無垢だった。
僕は何も知らなかった。
俺は、何もかも必要なことは知ってしまった。
何も知らない方が良かった。あの頃は楽しかった。
晴美ホームには大部屋が三つあった。俺がいたのは『あやめ』という部屋だった。
別室の、『すずらん』という部屋にいる夏目優という子は、いつも気になる存在だった。
自分より一つ、年下だった。そしてとてもおとなしい子だった。
いつも、中庭の木の陰、日の当たらないところで本を読んでいた。
髪が長い子だった。さらさらとしたロングヘアが眩しかった。
年下の筈なのに、他の誰よりも大人びて見えた。
いつもどこか悲しい目をしていた。
本を読んでいる様で、遠くを見ている様でもあった。
あの子の前にいると、自分が子供に見えた。
あの子の前にいると、強くなりたいと思えた。
あの子と何か話そうとすると、どもってしまって上手く話すことができなかった。
顔が赤くなって、心臓がどきどきした。
僕はそれがどういう感情かしらなかった。
俺はその感情を知っている。
その感情を人は『恋』という。
初恋だった。
◆
パン工場の勤務を終えたのは午後六時だった。毎日毎日単調な作業の繰り返しだが、楽だった。というか単調な作業こそアンドロイド的には楽といえる。
単なるシリコンの頭脳ではないといえ、コンピュータ部品も内蔵しているからそっちの方に任せてしまえばいい。
なぜパン工場なのかと言えば、それは死んだ稲城のおじいさんがその某パン会社の社長だったからである。あたしがアンドロイドだということを知っているのはたぶん、一緒に生活している涼子さんくらいだろう。
涼子さんは稲城のおじいさんの奥さんで、今は稲城のおじいさんの遺産で暮らしている。
その稲城家であたしは人間として暮らしていると言うわけだった。
「ただいまぁ」
家に着く。いつものことだが家にたどり着くと何か、ホッとする。
「あらあら、星羅ちゃん」
ダイニングから出てくる涼子おばあちゃん。
「今日もおつとめご苦労さまね」
「……苦労ってほどのもんじゃないわ……あんなの」
「星羅ちゃん、スレちゃったわよねぇ……元さんが生きてたときはまるで可愛い娘のようなものだったのに」
まるで娘の非行を憂うかのような口調で涼子さんは私に言う。
「いつもの事よ。ほっといて」
ダイニングの椅子に座っていつものテレビ番組を見る。くだらないクイズ番組だが最近流行っているらしい。出演者達は何故か皆「ほぅ…ほぅ…」と唸っている。
「体は成長しなくても、心の方は成長するって事なのかしらねぇ」
「あたしに心ってものがあるのならね」
「心、あるんじゃないかしらねぇ」
「今日のご飯、何?」
「えーと、鮭のカレー」
台所からいいにおいが漂って来ていた。鮭をカレーに入れる事もあるのか、と思った。
「……まぁ、いいか。いただきます」
台所からカレーライスを持ってくる涼子さん。あたしはスプーンを取って黙々とそれを口にする。
「ところでね、星羅ちゃん」
「ん? 何よ?」
「明日、あなたの誕生日なのよ」
――誕生日。そうか、そんなものもあったか、と思う。
「ああ……そっか。そうなんだ」
「十月九日。あなたが旦那様に引き取られた日を、誕生日にするって決めてたわね」
「もう、何年になるのかしら?」
「長いのか短いのか解らないよね……十年よ」
「そう……十年」
「星羅ちゃん、何かほしいもの、ある?」
「そうだなぁ……あ、ごちそうさま」
速攻でカレーを食べ終わってスプーンを置く。
「相変わらず、食べるの早いね。星羅ちゃんは」
「欲しいもの……か」
「そろそろ、恋人でも欲しくなる年頃かしら?」
食後のコーヒーを、ぶはっ、っとはき出す。
「何よ、それ。あたし、そーゆーのは興味ないって」
戯れ言だ。だってあたしは所詮作り物。
それとも涼子さんはまるで人形遊びのように、相手のボーイフレンドでも持ってこようとでもいうのか……。あり得ない事では無かっただけに、そう考えると寒気がした。
「まぁ、とにかく、何が欲しいんのか、言ってごらんなさい。大抵のモノなら何とかなるわよ?」
「そうねぇ。別に特に欲しいものってのがある訳じゃないんだけどね……」
「うん、では私が決めちゃっていいかしらね?」
「お任せするわ。楽しみは取っておいた方がいいさ」
「でも、それとは別に、プレゼントがあるのよ」
「え?」
「旦那様が遺した物よ。あなたの十年目の誕生日に」
それはなんだというのだろう? あの稲城のおじいさんが遺したものとは。
「でも、私にもわからないの。明日のお楽しみよ……」
あたしは、その後たわいのない会話をして、二階の自室に上がっていく。
データのデフラグメンテーションを開始して、睡眠を取る。
プレゼントは何だろう?
◆
日曜日の夕焼けだった。明日からまた辛い学校生活が始まると思うとツラかった。
在りし日の俺は、夏目さんに声をかけていた。
中庭には、その日に限って、誰も居なかった。
皆園外に出張っているのだろう。園長先生が仕組んだゲーム『園長先生を捜せ』も楽しいイベントだった。
『優は、参加しないの?』
恐る恐る聞いてみる。
『あたしは、体が弱いから……動くのはあんまり得意じゃなくて』
『そ、そっか……へぇ……、その本、面白い?』
『ダニエルキースって人の本なんだけど、あたしは好きだよ』
『SF……? 何か、難しそうだね……』
『そうでもないよ』
にこり、と優が笑った。とても可愛い笑顔だった。
でも、彼女の笑顔を見たのは、それが最初で最後だった。
夕焼けが、だんだんと暮れなずんでいく。
日は落ちてゆき、夕飯となり、平凡だが退屈しない毎日が繰り返されていった。
何週間かが過ぎ、その頃の俺は、優の事を好きになったのかもしれない、と思う様になっていた。
いつもの様にいじめられて学校から帰ったら、職員室の方でシスター達がなにやら騒いでいた。
『たしかに、それは……いいことなのかもしれませんけど』
『でも、その代わり……』
『彼女自身が決めればいいじゃないですか』
『年端もいかない子供でしょう?』
『わたしは、反対ですよ!』
『でも、彼女にとっては』
『人体実験みたいな真似を、許すんですか?』
『神への冒涜じゃありませんか』
『いいの。あたし、それでも』
最後に聞こえたのは、夏目優の声だっただろうか。
なにやら普通じゃない雰囲気が漂っていた。
当時の俺は怖くなってそこから逃げ出した。
いつもの様にお祈りをしたあと、夕食。
寝る前に俺は優の部屋を訪れた。
『すずらん』は十畳くらいの広さで、所かしこに学習机が置いてあって、夜だったのでカーテンが閉ざされていて、そして、何人かの子供が漫画をしたり宿題をしたりしていた。
シスターの居ない時に目を盗んで、優を呼び出した。
『あのさ、ここじゃ何だからちょっと……』
言ったとたん、部屋の子供達から注目を集めた。
『あー、祐護が優をつれだそうとしてる~』
『きっと『コクハク』するんだ!』
特に女の子からの視線が痛かった。
『べ、べつにそういうんじゃない。ただちょっと大事な話があるだけだ。優が聞かれたくない話かもしれないから』
『えーつまんないの』
『お兄ちゃん絶対優のことスキだとおもってたのに』
ませた子供達だと、その当時の俺は思った。
優が頬を赤くした。
『ついてくるなよ!』
部屋の子供達にそう言って、俺は強引に優の手を引っ張って部屋の外に連れ出す。
何人かの男の子が付いてきそうな感じだったが、女の子に止められていた。
『……なんか話づらくなっちゃったけど……』
『あの……あたし、わからないから……そういうの』
『ああぁ、そうじゃないんだよ。そうじゃないし、そうだけど違くて!』
自分でもしどろもどろになりながら話す。顔から火が出そうだった。
とにかく、落ち着いて昼間の事を聞きたいと思った。呼吸を整えて優に尋ねる。
『あのさ、昼間……職員室に居ただろ』
『あ、うん……けど、その話は……』
『そうか……やっぱり僕には教えてもらえないよね』
『うん……ごめんね、祐護くん』
優はそう言って、部屋に戻っていった。
何かもやもやとした気持ちで、俺も自分の部屋に戻っていった。
次の日の朝、優は晴美ホームには居なかった。
俺はシスター達に優の行方を聞いたがあまり詳しいことは教えてもらえなかった。
ただ、「引き取られた」とだけ、聞いた。
◆
私は、旦那様の遺書を読み返していた。
最後の数行と、別に厳重に封書された手紙。ついにそれを開封する時がやって来たのだ。
涼子へ。
遺書とは別に、このデータをプリントアウトしておくことにする。
星羅が、無事に十年目を迎えたら、読んで欲しい。
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儂《わし》生前は儂はしがないパン工場の社長だった。
プロテスタントの敬虔な信者でもあった。
儂も若い頃は無茶をした。九つも離れた嫁をもらったりもしたよ。
いい思いも沢山したし、悪いこともした。多くの罪も犯した。
たぶんいつかは罪を贖いきっと約束の場所に往けることだろう。
だが儂は大罪を犯した。儂は星羅の事が気がかりだ。
彼女は儂よりも、おまえよりも長く生きすぎる。
あんなに幼い姿をしたままだが、きっと心は荒んでいる。
無垢なままで居たならば、心を痛ませる事も無かっただろうに。
儂は東京の、とある町の、アンドロイド売春を専門にしている店でが星羅を拾った。
その店を経営していたのは儂の旧知の知人だった。
星羅はその頃、その売春の店で使われていた。
店の様子を知人は私に見せた。余興だと言って。
儂は、知人の趣味の悪い余興に反吐が出そうだったが、そこで儂は星羅を目にした。
儂に孫でもいたら、あの位の年だったかもしれない。儂はとっさにそう感じた。
知っての通り、星羅はあの姿だったから、その手の趣味の者には受けはよかった。
その頃の星羅は、単なる機械でしかなかった。単なる高額なオモチャだった。
『魂』とでもいうべきものが、その頃の星羅には無かった。
儂は子を残せなかったのが無念だが……結果的には星羅が代わりになってくれた。
星羅には幸せであって貰いたい。
儂は古い人間なのかもしれない。アンドロイドに感情移入するなど、愚かな者のすることかもしれない。それだけでも罪深いのに、ああ……。
儂は知人に頼み込んで、星羅を買い取った。
どうしてそう言う行動を取っのか、自分でも不思議だ。
知人は、代わりはいくらでもいるよ、といって安く譲ってくれたものだ。
否、儂の剣幕に圧されたのかもしれない。あの時の儂は普通ではなかったから。
今だったら……仮にも、娘の代わりとして育ててきた星羅のことを、モノ扱いなど……とてもではないができない。しかし、その時はどうしても必要なことに思えた。
儂が犯した罪はそれだけではなかった。次にした事こそ、我が人生で最大の罪だ。
知人は『どうせならその様なオモチャで自分を慰めるのではなく、ホンモノの人間の魂を持たせたい、そうでしょう、稲城さん』と言った。
それは悪魔の誘惑だった。儂は悪魔の誘惑に負けて、実験という大義名分の元、星羅に他の人物の魂を宿させたのだ。人から転写するという形で。
その結果星羅には何故か判断力というものが備わり、己のしてきた行為を嫌悪するようになったりもした。
星羅には魂が宿ったが――だが、それには代償が必要だった。
人間からアンドロイドへのデータ転送技術は、近年になってようやく実現可能となった。しかし、その技術は人間の神経網への過剰な負担が掛かる事が実験で解った。
完全なるコピーを作ろうとすれば、その結果が招くのは、データ提供者の死だ。
その負担の為にこの技術は推奨されない技術となったのだ。
推奨されずともその技術を望む声はあった。だから設備自体は現在でも存在している。
元の肉体が滅んでも、アンドロイドに自分自身の魂を移し替えれば人とは比べ者にならない寿命を獲得出来る。そんな風に考える者も居たからだ。
星羅は他の人間の死の上に生きている。
さらにその魂を転写するなど、神への冒涜行為に他ならないかもしれない。
儂は呪わしい、忌むべき行為を行った。
魂の元となった少女は、星羅の中で生きている。今では渾然一体となって。
その魂が焼き付けられてから、その少女の年になるまで、星羅の中にある少女の記憶は目覚めることはないだろう。何故かは解らないが、魂を焼き付けると、魂が経験した年月と同等の時間を再生に要するらしいのだ。
星羅の元となった少女は、十歳の誕生日だった。だから星羅が本当の意味で星羅が完全になるのは十年後と言うことになる。
それまでの間に、星羅は色々なことを学ぶだろう。そして自分自身に対して疑問を持ったりもするかもしれない。何故自分は存在しているのか――、そんな風に。
星羅の元になった少女の名前は、夏目優というらしい。聞くところによると少女は自らその役を買ってでたという話だが、その少女には本当に悪いことをした。たとえ少女の記憶が星羅の中で再び蘇ろうと、それは厳密には少女自身ではないのだから。
涼子、儂はおまえを愛していたよ。そして星羅も同じように愛していた。
儂はプロテスタントの信者としては失格だったかもしれない。
死に赴くにあたって、星羅が、記憶を取り戻す時を共に迎えられないのが心残りである。
稲城 元
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十年目の朝が訪れた。
その朝起きると、あたしは、全てを思い出していた。
朝日がカーテンから漏れている。
あたしの名前は、稲城星羅。製造から二十二年。ただし稲城元の元に来てから、十年目。
でもあたしには、本当の名前があった。
あたしの本当の名前。夏目優。
思い出した。――全てを思い出していた。そしてその記憶がエラーでない確信があった。
いままで体験したはずのない、知らなかったこと。夏目優。あたし自身の事を。
私は完全になることが出来た。常々感じていた虚無感も今はどこにもない。
私は稲城星羅であると同時に、夏目優。
……なんたる運命だろう。
先日出会った二十歳の『少年』咲月祐護は、あたしにとっても初恋の人だった。
誰かに踊らされているのだろうか?
出来すぎている、とも思える程の偶然の積み重なり。
初恋は実らないと、よく言う。これは星羅の知識だ。いや、既にあたしは星羅であって優。だから既に自分自身の知識なのだろう。
頭が混乱していた。突然降ってわいた大量の記憶データ。無かったはずのデータが今は自分の中に『在る』事が実感できる。
あたしは、二十二年生きた稲城星羅であると同時に、十歳の夏目優でもある。
だからあたしにとって、優の記憶は、つい昨日までの記憶だった。
◆
あたしは、晴美ホームに居た。同時期、同時刻、星羅としてのあたしは男共に蹂躙されていたが、たしかに、あたしは、あの湖の傍にある晴美ホームに存在した。
夏目優として。
――そこには沢山の子供達が居た。
――そこには、沢山の愛があった。
――そこには、暖かい家庭があった。
――そこには、きっと、神様が居た。
園長先生は優しくて、かみさまの教えをよく知っていた。
あたしはその中の一人だった。
あたしは親に捨てられた子だった。
両親が離婚したのだが、どちらも養育を拒否したのだ。
そしてあたしの両親は両方とも自殺した。
引き取り手が無かった私は、このホームに預けられたのだ。
ホームに居るのは、専ら小さな子供ばかり。
下は一歳から、上は九歳まで。
あたしがホームにいる間、どんどんと仲間は増えていった。
彼が入ってくるまで、あたしはそのホームで最年長だった。
彼は、咲月祐護という名前だった。
ある日突然、彼は来た。『親』に連れられて。
それは、このホームでは異例な事だった。
このホームにいる子には殆ど親が居ない。
居ても、親が来ることなどまったくなかった。
だから、彼は羨望の的でもあった。
彼は、気弱な、だけど晴美ホームに帰ってくれば一番の、お兄さんだった。
晴美ホームでは、彼は立派に年長者としての役目を果たしていた。皆から慕われるお兄さんだった。
小さな子供にはお父さん代わりに。比較的大きな子供には年長の兄弟として。
彼は、あたしのことが好きなんだ、というのは専ら子供達の間では、特に女の子の間では、噂だった。あたしはそれが少し恥ずかしくもあったけど、でもこのホームで一番のお兄さんから慕われている、というのは悪い気分ではなかった。
彼はちょっと頼りない所もあったけど、それでも一番のお兄さんだったのだから。
そして、皆にはない、親からの愛のにおいがするヒトだったから。
彼が親にしてもらったように、彼は人に対して、無意識に、親と同じ事をした。
『人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ』
――(新約聖書、ルカによる福音書、六章三十一節)
『わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい』
――(新約聖書、ヨハネによる福音書、十三章三十四節)
それだけのことだったけれど、それがこのホームには足らないことだったのだ。
だからあたしは、彼のことが好きだった。
もちろん当時九才のあたしには、まだそれが恋愛感情である事など理解できなかった。
ある日、あたしにとっては転機となる、運命が訪れた。
晴美ホームは資金難に苦しんでいた。善意の孤児院は、児童相談所などの支援はあっても、経営が苦しかったのだ。
しかし、その資金の融資を買って出ようという会社が現れた。
ライフ・アーツ研究所。イスラエルに本社を置く、アンドロイドを製造する会社。
その売り上げはとシェアは、二十一世紀も盛りに屈指を誇る大会社だ。
全額の資金援助の引き替えに、子供の任意被験者の提供。契約更新は十年ごと。
そう言う取引だった。晴美ホームにとっては願ってもない取引条件だった。
晴美ホームが契約を締結した理由は、あくまで任意での提供でよい事が条件だったから。
「子供の脳は未発達で、研究の材料にするには一番適している」
それがライフ・アーツ側にとっての利。ライフ・アーツは任意の被験者を得、晴美ホームは資金を得る。双方の利益となる契約だった。
ライフ・アーツは一名の任意被験者を、求めてきた。
そして、あたしに白羽の矢が立った。
両親がいない事。晴美ホームが親の替わりに同意できる事が一番の理由だった。
あたしは園長をつとめるシスターから、話を聞いた。
幼かったあたしでも、理解できるように。何度も、繰り返し、丁寧に話をしてくれた。
お金が必要だと言うこと。でもできるなら人体実験なんかには提供したくないと言うこと。ホームの職員内でも多数の反対意見があること。もう皆には会えないという事。あたしの体がどうなるかは解らない危険な実験である可能性も高い事。少なくとも生活は今より良くなるだろうと言うこと。ホームのみんなには絶対内緒であること。良いところも悪いところも、全部話してくれた。
『人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない』
――(新約聖書、ヨハネによる福音書、十五章十三節)
あたしは、大好きな皆の為になら、命をすててもいいと思った。
だからあたしは、被験者になった。
『もしあなたが完全になりたいと思うなら、帰ってあなたの持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい』
――(新約聖書、マタイによる福音書、十九章二十一節)
あたしはには、売れる物などなかった。この体と心より他には。
そして、何一つ捨てる者など無い。今の生活の他には。そう思った。
最後の通告の時、ライフ・アーツの職員が契約書を持って晴美ホームにやって来た時。
喧々囂々《けんけんごうごう》と、晴美ホームの職員、シスター達の間で声が飛び交った。
悪魔に魂を売るのか、と言う者もいた。
あたしは、それでも、被験者になることにした。
その日の夜中、ひっそりと、あたしはライフ・アーツの車に乗って研究所に向かった。
どういう研究をするかは、なんとなくは聞かされていた。
詳しい事を知ったのは、研究所で沢山の試験と、沢山沢山の検査と、沢山のごちそうを食べてからだったけれど。
『我々は、君の魂とも言うべき脳の情報を、すべてあるアンドロイドに移し替える』
『もう、元の体にはもどれない』
『成功したとすれば、君はアンドロイドとして生きていくことになる』
『我々は、君の人権を尊重する。君が人間として生き続ける権利を認める』
『それでも、我々の研究に身を捧げてくれるのか』
『成功、失敗にかかわらず――これは貴重なデータになる』
『成功する保証などなにもない』
『無駄に死ぬだけかもしれない』
『それでも――我々の研究に身を捧げてくれるかね』
口々に白衣の服を着た男達が言う。
失敗すれば、死ぬ。
成功しても、どちらにせよもうこの体には戻れない。
――はい。
あたしは、そう答える。何も恐れる事なんて無い。
あたしが実験を拒まない理由は、大仰な理由ではなく、ただ愛する晴美ホームの皆の為。
十歳の誕生日。
あたしは、生まれ変わります。
もう、痛みもない、意識も遠のいていく。
神様、どうかあたしを天国へとお導きください。あたしは祈った。
『被験体のデータ、安定しています』
『Sub-dAT神経接続完了』
『しかし、何故この模擬体なのです』
『全神経接続、オールグリーン』
『模擬体の接続、完了』
『それは、私の旧知の友人の希望でな。改造は既に完了している。問題はない』
『エモーショナル・フィードバック・システム起動』
『穂早野博士、問題はありません』
『ではこれより肉体よりの量子演算記憶ユニットへの転送を行う……』
◆
夕焼け。
真っ赤に染まる町並み。
小さな小さな町。
人々の営み。
生まれゆく命。
今にも消えそうな命。
存在する事すら危うい均衡の上に成り立つ存在。
そうと感じる事がなくても、奇跡の上に私たちは生きている。
もうすぐ夜がやってくる。
電気の光が、町を包み出す。
あたしは、彼を待っている。
もう一度会いたくて――会って、想いを伝えたくて。
くる当てもない人を待っている。
約束なんてしていない。
ただ運命に身を任せて。
待ち望む。
そして、訪れた、瞬間。
「よぉ、久しぶり……又会ったな。よくここに来るのか? 良い場所だよな、ここ」
彼が、木の上のあたしに、手を振る。
彼女が、木の上で俺を見下ろしている。
「祐護君……あたし、思い出したんだ」
あたしは、彼の名前を呼ぶ。愛おしさが、今まで無かったあたしの中から溢れ出す。
アイツが、木の上で、俺の名前を何故かうれしそうに呼んでいる。
「あれ? 何か、雰囲気違うな、前と」
……静かに、だけど、確実に。
――何かが、違っていた。そして、何を思いだしたというのだろう?
「そりゃそうだよ」
……時は回り始める。
――だけどそんな言葉の、ニュアンスの節々、何故か懐かしかった。
「ん?」
……この瞬間から、
――彼女から感じる、違和感は、酷く心に突き刺さる。
「だって、前会ったあたしは、完全なあたしじゃなかったんだから」
……この体に宿った奇跡から……
――俺の心の深淵から、深く呼び起こされる様な、懐かしさ――
「何か……幼くなったな。急に」
「あたしは、元から幼いよ」
「そんな事言うヤツじゃなかったろ、オマエ」
「えへへ」
……あたしは、精一杯可愛く笑ってやる。
――そして、俺は、とても可愛い、あの笑顔を思い出す。
「思い出したの、昔のこと。晴美ホームでのことを」
あたし達の、歯車が、かみ合ってゆく。
俺たちの、 歯車が、かみ合ってゆく。
「でも、どうして――だって、オマエ――本当に――」
「あたしの名前は、稲城星羅。でもホントの、もう一つの名前は、夏目優」
「まさか……まさかそんな事はあり得ない!」
「話さなきゃいけないことが沢山あるんだよ……祐護くん」
魂の深淵より、虚数の歌が聞こえてくる。
淡く、遠く、深く、曖昧に、けれど確かに、心に響く。それは愛の歌。魂の歌。
終
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