台湾の日本酒シーンが、いま盛り上がっている! (関友美の日本酒コラム)
今年の七月、日本酒関連の取材で台湾に行ってきました。5泊6日の旅です。
台湾の日本酒シーンは、現地輸入会社も一般消費者も若く、30代から40代がメインです。関税が20%と高いため、四合瓶(720ml)は1本5,000円前後で、「ラグジュアリーなお酒」として楽しまれています。一等地には日本酒を取り扱う酒屋が増え、日本酒バーも増加中です。
台湾では、日本統治時代から近代にかけて厳しいお酒の規制がありました。解禁後も、台湾人は「飲酒するのは不良」という印象を持っていましたが、近年では(特に若者のあいだでは)「飲酒はリラックスできる大人の楽しみ」という認識に変わってきました。レストランにボトルを数本持ち込み、大いに飲み語り合う光景が見られます。
台湾のとある日本酒バーのオーナーによれば、2016年には台北に2軒しかなかった日本酒専門バーが、現在では10数軒に増え、専門店でなくても日本っぽいフードと日本酒を置いている店を含めると100軒を超えるそうです。台湾での日本酒シーンは、10年足らずで大きく変わりました。
財務省が発表した2022年度の「貿易統計」によると、清酒の国別輸出数量は、1位がアメリカ(9,082㎘)、2位が中国(7,388㎘)、3位が韓国(4,054㎘)、4位が台湾(3,076㎘)です。金額順でも、台湾は第6位につけています。
順調に伸びている理由の一つには、幅広い世代に親日家が多いことが挙げられます。日本のアニメやドラマ、食べ物、文化、化粧品など、親日になったきっかけは様々です。大学の第二外国語選択でも、英語と日本語が人気で、生徒数は半々くらいだとか。
また、関税が高いとはいえ、2019年7月に日本酒を含む穀類酒の関税率が40%から20%に引き下げられ、以前より身近な存在になりました。
さらにコロナ禍で日本国内の流通がストップした時、多くの日本酒蔵が海外に活路を見出しました。特に台湾は、コロナの流行時期が遅かったため、飲食シーンが通常通り動いており、多くの銘柄が流通するようになり、日本酒ブームが加速しました。
滞在中に、現地輸入会社(Iyo Taiwan Trading)の社長・菅(かん)さんに連れられて、台北の居酒屋『独楽(こま)清酒食堂』に、行きました。台湾風のから揚げや揚げ餃子など、美味しいオリジナルフードと日本酒を楽しめました。宮城県「DATE SEVEN」の七夕解禁の商品が、日本と同日に台湾の酒屋に並び、当日すぐ居酒屋で提供されていました。
お店PBの熟成酒まであり、台湾で日本酒に携わるプロたちの感度の高さや学びの深さ、流通の速さに感銘を受けました。
世界酒となり始めた日本酒。他国で、日本酒を心から愛する仲間に会えたことが本当に嬉しく、励みになる出張でした。
今月の酒蔵
辻本店(岡山県)
1804年(文化元年)創業。美作(みまさか)勝山藩御用達の献上酒として「御膳酒」の銘を受けたことが、現在の銘柄「御前酒」の由来。昭和45年頃から純米酒の製造にも積極的に取り組み、現在では総製造量の7割と占める。弟の辻総一郎氏が社長、姉の麻衣子氏が杜氏を務め、2022年からは原料を地元の酒米・雄町だけで醸す「全量雄町蔵」を宣言した。鎌倉時代発祥と言われる「菩提もと造り」にもこだわり、冷酒でも燗でも美味しく、長期熟成にも適した、伝統的な酒造りを目指している。
庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」9月号転載
(庄司酒店様に許可を得て掲載しています)