蛇足について11『時間の蛇足②』

未来へ時間をずらすための蛇足のひとつとして

（５時間後）

というのがある。

メロスは激怒した（５時間後）

文字通り５時間後にメロスが激怒したことになるわけだが、なぜ５時間経ってから怒ったのかが気になるところだ。５時間経って突然思い出したのか、人に話しているうちに怒りが込み上げてきたのか、バカにされていたことに５時間経ってやっと気づいたのか、悪戯で背中に「僕はバカです」などの貼り紙をされていることに５時間後気づいたのか。いろいろと想像してしまう。
このように（５時間後）という蛇足は想像を掻き立てるかなりのポテンシャルを持っている。
メロス以外の一文に蛇足してみると、さらにその力を知ることができる。

はい、ひょっこりはん（５時間後）

５時間ずっと隠れていたのだろう。もう周りには誰もいなそうである。いるとしたらかなり熱心なファンだ。

安心して下さい穿いてますよ（５時間後）

穿いていることをなかなか言ってくれないから「穿いているの？それとも穿いていないの？どっち？」と見ている者は不安な状況が５時間続いたはずだ。

ワイルドだろぉ（５時間後）

コーラのキャップを捨てるのに手間取って５時間経ったと思われる。

誰かが死んだとき～（５時間後）

悲しさで声がつまり、なかなか話しだせなかった。

あれ、声が、遅れて、聞こえてくるよ（５時間後）

５時間後に聞こえてくるなんて！進化し続ける腹話術である。

ちがうか（５時間後）

５時間間違ったことを言い続けた末。

マダガスカル（５時間後）

地球儀からなかなか見つけられなかった。

ブラジルの人聞こえますかー！（５時間後）

何度もトライを重ねていたら、なんと５時間後ブラジルに声が届いた！

なーに、やっちまったなぁ！（５時間後）

どんな男だったのかの説明が長かった。

なんでだろう（５時間後）

いくら考えても答えが出ない。

チクショー!!（５時間後）

家に帰ってお風呂に入っている時、５時間前の嫌なことを思い出して。

おさむちゃんです！（５時間後）

長い長い自己紹介。

山田君、座布団１枚（５時間後）

昇太が長考の末。

磯野、野球しようぜ（５時間後）

夕方別れて、夜にまた。

ファッキンジャップくらいわかるよバカ野郎（５時間後）

すぐにはわからなかった。

このように様々なドラマ性を生み出すのだ。
もちろん（５時間後）ではなく

（1時間後）

（10時間後）

（30分後）

（0.1秒後）

など、他の数字や単位でも構わない。
それぞれの時間がまた別の光景を想像させてくれるはずだ。