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FC.GUSTA

思うことは、山ほどある。

先日サークルを引退し、長きに渡ったサッカー人生に一区切りをつけた。

3年前、こうなることを全く予測していなかった。夢に敗れ、目標を失い、自信をなくし、ひたすらに自らの無力さに不甲斐なさを感じていた。そんな過去の自分に言いたい。そのどん底こそが僕を強くし、新しい可能性を示してくれた。どん底から立ち上がる勇気と、這い上がることの面白さを教えてくれた。

そして何よりも、素晴らしい人々と出逢わせてくれた。だから今、あの決断を下した僕に心からありがとうを、上を向き胸を張って生きろと、失ったものばかり考えずに前を向いて生きろと伝えたい。何故ならこんなにも熱くなれて、腹がよじれるほど笑って、本気で恋をして、失恋して泣いて、たくさん騒いで、吐いて、潰れて、粗相をして、色々な感情を共有して、時には喧嘩もしたけれども、心から愛せるたくさんの友人たちに出逢えることができたのだから。そしてそんな彼らが僕の学生生活を彩ってくれたのだから。



サッカーしかなかった。6歳から始めたサッカーは気がつけばもう15年。人生のほとんどを費やした。周りからチヤホヤされ、家族からも(おそらく)期待されて、着実にステップアップしていった。この先もずっとこうなることを自分でも期待していたに違いない。ただ、歳をとるにつれて自らの抱く夢の難しさは残酷にも明確に、目の前に高い壁を築いた。歳をとるにつれてその壁はまたひとつ、またひとつと高くなっていく。それでも、夢見ていた。必ず乗り越えて、その先の景色を見てやろう。一握りの人間しか見ることのできないその先の世界に強い憧れと、とてつもない執着心を抱いていた。早稲田大学に進学したのも、その壁を乗り越えるためだった。

壁は、想像以上に高かった。壁を乗り越えるための手段を知る以前に、壁にすら近づけなかった。周りの人間は登り始めているのに、ただその場に立ち尽くす事しかできなかった。思い描いていた未来は、その一歩を踏み出すことなく崩れ去った。
紺碧寮。誰もいない静まり返った3階の一室で、僕は屍のように横たわり、腹が減ったらパスタを食べ、眠くなったら寝る。試合後帰ってきた同期の質問には、偽りの努力を伝える。親からの質問には強がって大丈夫だと伝える。そうしてただひたすらに時は流れていった。飲み物ひとつ買うのですら、罪悪感を覚える。親のお金を使う自分に、無力さに、いい加減さに、クズさに強い嫌悪感を覚えた。認めるのが怖かった。サッカーというアイデンティティを失った僕を愛してくれる人はこの世に誰もいないと思っていた。


けれどそんなことはなかった。世界はもっと寛大で、広くて、自由だった。世界は、夢に敗れ傷心していた青年を、一切の否定もなく受け入れた。終わったと思っていた青年には、再びチャンスが与えられた。一度は見失いかけた、もう2度と味わうことのできないと思っていたあの感動を、青年は結局再認識することになる。



はじめは、馬鹿にしていた。規律もなくてフラフラしてて、不真面目な人間の宝庫だと思っていた。自らにプラスになるようなことは絶対にない、適当な人間の集まりに参加することで、自分も彼らと同様に染まっていくんだ、適当な人間として4年間を棒にふる、そんな未来の来訪を想像するほどだった。サッカーをする環境が欲しいが故に、致し方なく入ったようなものだった。

こんなにも熱くなれるとは、本当に微塵も思っていなかった。こんなにも同じ尺度で感動を共有できるとは夢にも思わなかった。こんなにも考えさせられて、本気で誰かの為に何かを成し遂げたいと思えるようになるとは思わなかった。

新歓期を過ぎた、6月に初めて参加した。はじめは周りを下に見ていたから、自分からは喋りかけたくなかった。彼らと肩を並べるのが嫌だった。マネージャーも同様だった。同じレイヤーに属した瞬間に自分の価値が下がると思っていた。そんなことを思っている人間に対して、彼らは快く受け入れてくれた。心から歓迎してくれた。プライドだけは高くて、口下手な僕にとってありがたかった。自分の中で消え失せたと思っていたサッカーが、また僕に新しい居場所を与えてくれた。なんとなく居心地が良くて、みんなと仲良くなれそうな気がしたから、すぐにここに入ることを決めた。



生まれて初めて酒を飲み、酔っ払い、まっすぐ歩けないことに感動を覚えたあの日を共にしてくれたあの6人は辞めることなく最後までやり切った。
1人は代表として僕に素晴らしい環境を次々と用意してくれて、歳は1つ上だけどそんなこと感じられないくらい打ち解けて、振られたタイミングが近くて一緒に泣いたりして、最初は話しかけづらいと思ってたけど、全然そんなことなくて、周りのことめっちゃ考えて行動できて。
1人は初めての練習で緊張してた僕に喋りかけてくれて、誰よりも勝負にこだわっていて、そして大事な時に得点して僕に素晴らしい景色を見させてくれて、口数は少ないけど優しさがあって、根は真面目で、みんなから信頼されてて、なのに金はいつもなくて。
1人は下ネタ嫌いなのにそれを受け入れてくれるほど僕らのことを愛してくれていて、くだらないことにも付き合ってくれて、口を尖らせる癖があって、でも一生懸命で、そしてマネージャー代表として支えてくれて。
1人はそのマシンガントークで僕をいつも笑顔にさせてくれて、エリーっていう変なあだ名つけたりして、ある時には恋愛の相談に乗ってもらったりして、しっかり者で、でもたまに抜けてるとこもあって、酔っ払うとそのおしゃべりはもう誰にも止められなくて。
1人は謎めいたキャラで、多重人格なとこあって、どんなに笑わせようとしてもそんなに笑ってくれなくて、笑いのハードルがいつまでもわからなくて、自分の軸をもち続けていて、口数は少ないけどみんなのことをよく見ていて、僕に新しい価値観を示してくれて。
1人は口がすごく悪くて、下ネタ大好きでいつも爆笑してて、意外と繊細なところがあって人の気持ちを考えられる素晴らしい1人の女性であって、ありがとうをきちんと言える人で、僕らに欠かせない人物で。

あの日から僕にずっと新しい世界を見せてくれた。教えてくれた。本当に仲良くなれて嬉しく思う。

初めての合宿ではあの2人の存在が嬉しかった。宿を抜け出してやった肝試しが思いのほか楽しかったのは2人がいたからだろうか。
1人は初めて見るくらいサッカー下手くそで、威厳がなくて、でもみんなから愛されてて、誰よりも熱くて、愚直で、正直で、毎年安定して珍プレーを披露して、でも僕の知らないところで頑張ってて、それを誰かに見せようともしなくて。
1人は最初と比べると顔がすごく変わってて、酔っ払うと踊り出して、他サーからすごくモテて、1年生の頃から積極的に参加してて、その背景には体育会系のマネージャーになれない、悔しい思いもどこか混ざっていて、僕とどことなく環境は似てて、だから1番最初に仲良くなって、僕らとマネージャーの架け橋となってくれて、盛り上げてくれて、僕らの代のシンボル的存在であって、献身性があって、誰よりもこのチームを愛してて。

どちらもプレーヤー、マネージャーのキャプテンとして、最後までやり遂げ、僕にその偉大な背中を見せ続けてくれた。頼もしかった。

髪を染めることなく参加した大会。
彼は部屋のトイレを詰まらせて、初めて会話した時は怖くて、でもそんなことなくて、気さくなやつで、驚くほどプライドが高くて、最も扱いづらくて、その難ある性格が災いして、彼はどん底に突き落とされて、でも最後に戻ってきてくれて、また一緒に夢を見ることができて、一緒に笑いあえて。

学年の交流を深める名目でレクリエーションを任されて、一緒に考えてくれて、ここですごく仲良くなれて、芯を持っていて頼れて、でも少し不器用なところがあって、たまに1人で抱え込み過ぎてしまって、だからこそ応援したくて、どんな時でも道を切り開いていって欲しくて、いつでも相談して欲しくて、相談に乗って欲しくて。

尖っていた彼ともっと仲良くなりたくて、どんな人間なのか知りたくてスノボに誘ったら誰よりも楽しんでて、決してブレない自分を持っていて、それでいて酔っ払うと暴れ出すから大変で、こんなにも打ち解けることができて、あの時誘って本当に良かったと思ってて、イケメンで、羨ましくて、でも相変わらず足は臭くて。

本キャンに強い憧れを持つ僕にとっては楽園だった早稲田祭に一緒に来てくれた2人。
1人は同じ埼玉県民として、埼玉車で一緒になることが多くて、彼氏はコンビニ店員っていじられて、散々いじられてるのにそれすらも楽しんでる様に見えるくらいいつでも元気はつらつで、来るたびにみんなに笑顔を振りまいてて、それをみてみんながまた笑顔になって、笑ってる姿しか覚えてなくて、これからもたくさんの人を笑顔にさせていくんだろうと思ってて。
1人は学祭くらいに初めて喋って、振られた直後だったから落ち込んでて、っていうと多分落ち込んでねーしって画面越しに反論してくるほど負けん気が強くて、その年の忘年会で喰らったビンタは忘れられないくらい痛くて、顔に表情がすごく出て、それが良いところでもあって、思ったことをきちんと言えるのは大切なことだと思ったりもしてて、フェフ姉に似てて、タバコ大好きで、時にはその性格が災いして凹むこともあって、でもいつもそれを乗り越えてきて、メンタル強くて、でも辛いものは食べれなくて。

低重音ボイスで、真面目な学生のイメージがあって、でもそんなことなくて、1番みんなを驚かせていて、運転が少しトラウマに感じてきてて、きっとあのカーブを見るたびに思い出して、大変な会計という仕事を遂行して、滞納者という名の敵を相手にしてて、きっと相当なストレスが溜まってて、LINEの一言たまに病んでて、普通なら耐えられないことを1人でこなしてしまってて、ルーティーン度外視を、彼はまさに体現していて。

初めて喋ったのはいつだったのか覚えてなくて、けれど気がつけば仲良くなっていて、1番ちっちゃくて、裏表ない素敵な彼女は誰からも愛されてて、めちゃめちゃ可愛いのにケダモノみたいな彼氏がいて、その彼の行動で不機嫌になってるのが印象的で、涙もろくて、よく笑って、たまに怒って、たくさんの表情を僕に見せてくれて、他人にも、自分にも嘘をつかず素直に生きている彼女にすごい憧れを持っていて、考えさせられることが何度もあって、仲子って言ってくれたことがすごく嬉して、パキると凄く饒舌になって、集合時間に間に合ったことは多分ほぼなくて。

気さくな性格で、家にドカドカ上がり込んでも嫌な顔しなくて、いつでももてなしてくれて、素敵な彼女がいて、いつものほほんとしてて、乱れた心が彼を見るたびに落ち着いて、寛大過ぎて、黒過ぎて、鈍足すぎて、大車輪過ぎて、いざくるでの伝説は忘れられなくて、また彼の家でしこたま飲みたくて、みんなで集まりたくて、でもトイレの黒ずみは申し訳なくて。

童貞で、でも考え方がすごく大人で、1番頭が良くて、でも童貞で、でも料理もできて、一緒に生活したいランキング1位な同期で、馬場から一緒に帰ること多くて、車内でゲロ吐いたこともあって、いつもツッコミしてくれて、なんでも知ってて、でもやっぱり童貞で。

名字が同じで、歳は一つ上なのにそんな感じ全然なくて、練習とかあんま参加してなくて本当はくるのも少しばかり気まずかったりもしていそうで、でも続けてくれて、最後まで応援してくれて、偉大な3マネの一員で。

珍しい名前で、印象的で、怒った表情を見たことなくて、いつでも穏やかでいて、彼女のその雰囲気がどこか生き急いでいた僕にブレーキをかけてくれて、色んなあだ名をつけたりして、けれどネビルロングボトムは僕しか呼んでなくて、つまらん男と一瞬付き合ったこともあって、スノボでいじめられてて、ロータリーで横たわったりもして、歌がすごく上手くて、辞めることなく最後まで続けてくれて、一緒に戦ってくれて。

いつからか、そういう立ち位置の人間になっていた彼は本当にすごいと思ってて、最後まで下手くそで、足は本当に速くて、何度も彼には笑わせられた自分がいて、一緒にいるといつも腹を抱えて笑っていて、あんな面白い顔面してるのにイケてると勘違いしてて、でも真面目な話をすることもあって、頭はでかいけどちゃんと先を考えて行動できて、本当はめちゃめちゃ悔しいはずなのに、泣きたいはずなのに、それを押し殺して勝利を一緒に喜んでくれて、決して温情とかではなく、彼の存在があってこその日本一で、チームであって、9期であって、みんなから愛されてて。

東伏見のグランドを一緒に走った思い出があって、どん底で這いつくばっていて、苦しんでいたけど悔いなくやり通せたのは彼の存在あってこそだと思ってて、彼は結局やり切って、僕の届かなかった世界に入っていって、チームに来た時には嫌な顔をしていたけど、本当は目標をきちんと達成した彼のことが羨ましくて、叶わなかった体育会系への妬みを彼にぶつけてしまっていただけで、実を言うと、初めて喋った駅のホームで彼と一緒にランテストに受かりたいという背景から妙な親近感を覚えてて、新たな目標を見つけ、それに向かって突き進んでいる彼の背中が大きく見えてて、あの時みたいに夢を、目標を叶えて欲しいと思ってて。

9頭身モデルスタイルの彼女は、いつでも元気でいて確固たる自分をもっていて、1番の思い出と聞かれればそれはあの一件なのだけれども、他にも当然思い出はあって、けどあれが強すぎてっていうのがあって、自分をもってて、言いたいことは言えて、けどどこか寂しがり屋なところがあって。元気なマネージャーの中でもトップクラスの元気さをもってて、めちゃめちゃ応援してくれて、参加する回数はそんなに多くなかったけど来てくれた時はなんか嬉しくて、辞めないでくれて本当に嬉しくて。

酒グセが悪くて、パンツ見えそうだし、たまにケツ見えてるらしいけど、実は1番しっかりしてて、1番人のこと考えてて、傷ついててもあまりそれを人に見せずにいて、それが理由で落ち込んだり悩んだりしたりしてるのかもしれなくて、辞める辞めると言いながらも結局最後まで残っててくれて、それがすごく嬉しくて。

僕のわがままに付き合ってくれて、ヒッチハイクで石川まで行けたのは、彼がいたからで、留学に行って帰ってきて、かなり大人な人間になって、人としても大きく、筋トレしすぎで体も大きくなってて、ノカーの愛称でみんなに親しまれたのも、大らかな性格の中でもやるべき事を突き詰め通せる性格があったからで、自分の意見を言わないとか言われてるけど、ただ単純に不器用なだけであって、人にはないものを持ち合わせてる彼に尊敬の念を持っていたのはここだけの話で。

彼女との思い出は1番多くて、1番濃くて、1番大切にしてて、初めて喋ったのは1年の冬で、そこから彼女の真っ直ぐさに惹かれていって、想いを告白して、一緒に色んなところに行って、一緒に色んなものを食べて、一緒に笑って、いつでも彼女の笑顔はキラキラしていて、その笑顔を見ることが僕の楽しみであって、ちょっとしたすれ違いで関係性は変わったけれど、その後も仲良くしてくれて、嘘偽りなくて、裏表のない彼女がみんなから愛されるのは当然で、それでいて彼女もみんなに愛を持って接していて、僕にとって彼女と過ごした時間はかけがえのないものであって、それは関係性を変えた今でも同等のものがあって、本当に全てを尊敬できる人で。

関西弁を喋るセクモンの周りには、いつでも人が集まってて、分け隔てなくみんなに接することができて、周りを許せる寛大な心があって、うまくいかないことがあってもその先を考えて、行動できてて、人の心に対して優しくタッチできるのに、ドリブルのタッチは大きくて、自分のことより友人を大切にできることが誰よりも秀でていて、その性格が羨ましくて、一緒に録画面接したりして、今度は一発で決めてほしくて。

バイトも同じで、帰る方向も同じで、1番長い時間を共にして、可愛いキャラであることに味をしめて、好き放題してて、子供っぽいところがあっても実は真剣に将来とかを考えてて、そして何よりみんなを誰よりも1番愛してて、愛されてて、失恋もしてまた1つ大人になって、彼は人の懐に入り込むのがうまくて、それが僕にはできなくて、羨ましくて、でもやっぱり1番バカで、アホで、やること全部しょうもなくて、でもそれがすごく楽しくて、笑わせてくれてて、かけがえのない時間であって、だからこそ居心地が良くて、一緒にいる時間が長かったのは、僕も結構ガキなところがあって、気が合ったのかもしれなくて、試合中は全部抜いてくれるから頼もしくて、中学時代は相見えたけど、一緒にサッカーできて楽しくて、1年生のあの時、新参者を受け入れてくれて嬉しくて、一緒に笑いあえて、本当に楽しくて。


思い出は思い返せば返すほどに溢れ出てきて、
そしてそれは際限がなくて、
思いがけないトラブルによって偶然にも訪れた場所には素敵な出逢いがあって、
星の数ほどあるサークルの中でみんなに出逢えたことは僕の予想を良い意味で裏切ってくれて、

伝えたいことがありすぎて、忘れないうちに文面に残しておこうと思っていたけれど、文字を打ちながら涙が滲んでくるのは、
みんなとの思い出が深くて、
忘れ難くて、
もう離れ離れになるのが寂しくて、
まだ次のイベントが残ってる、がもうなくて、
これから先みんなと会うことが難しくなると考えると、後悔ばかりが頭の中を駆け巡って、
もっとあの時こうしていればよかったが止まらなくて、
同時にみんなに依存していた自分が見えてきて、
感謝の思いが溢れてきて、
それを無性に伝えたくなって。


誰かに、別れがあるから、時間には限りがあるからこそ、何かを創り上げることができるって言ったけど、
心ではそんなこと思ってなくて、
この時間だけはいつまでも続いて欲しくて、
いつまでもみんなと一緒に笑っていたくて、
もう一度みんなと夢を見て、そしてそれを成し遂げたくて。

けれどもうそれはどんなに頑張ってもできないから、
せめて感謝の想いをみんなに伝えたいけど、忘年会ではきっと想いが込み上げすぎて、時間が短すぎて、伝えたいことも全然伝えられないだろうから、
ここに残そうと思う。




あまりにも一瞬すぎた。

青春を、どうもありがとう。

FC.GUSTAは僕のすべてでした。



關慎之介

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