ドイツの少数民族「ソルブ人」とは?
ヨーロッパは、国名とその国に暮らす民族名が一致すると思われているきらいがあります。しかし、細かく見てみると、様々な民族が暮らしているケースは少なくありません。
今回は、ドイツに住む「ソルブ人」について解説します。
ソルブ人は、ドイツに暮らす少数民族で、ザクセン州バウツェン辺りに住む上ソルブ人と、ブランデンブルク州コトブス辺りに住む下ソルブ人に分かれています。彼らは「ソルブ語」というスラヴ系の言語を持っています。チェコ語やスロバキア語、ポーランド語と同じ西スラヴ系の言語です。ソルブ語は更に、上ソルブ人が使う上ソルブ語と下ソルブ人が使う下ソルブ語に分類されています。しかし、ソルブ人の多くは言語・文化面においてドイツ人化し、ソルブ語話者は減少しつつあり、ソルブ語は消滅の危機にあります。
ナチスドイツ時代には、ソルブ人の言語が禁止されるなど、弾圧が行われました。ナチスは、スラヴ系はヨーロッパ人の中でも「劣等民族」であるという理由で、スラヴ系に対してもユダヤ人同様に迫害を行っていました。しかし、第二次世界大戦後に、同じくスラヴ系民族が多数派のソ連により「解放(これも意味深な言葉ですが…↓下のリンク参照)」されます。
ソ連侵入後は、ソルブ人の言語や文化を保護するような政策が行われ、東ドイツがその政策を引き継ぎます。しかし、それはあくまでも社会主義政策の一環で、ソルブ人に対する強制移住政策も行われていたと言います。↓下の記事参考
単一民族国家という印象が強いドイツですが、実は少数民族、それも移民でなく昔から住んでいる人達も存在しています。ナチスによる迫害や、社会主義体制による支配の歴史など、日本で耳にする機会は少ないですが、この際に知っていただけると嬉しいです。
参考文献
笹原健「ソルブ語」(「ニューエクスプレス・スペシャル ヨーロッパのおもしろ言語」白水社、2011、48-67)