踊るうさぎ。
それでも僕は生活がしたい。生存ではないのだ。
激安八百屋をみつけた。正しくは教えてもらった。この辺りでは有名らしい。わたしは大きなリュックを背負って戦場へ向かうことにした。慣れない場所での買い物、ましてやスーパーではなく個人経営の青果店なんて独自ルールがありそうで緊張する。
八百屋さんに向かう途中、いつも混んでいるあのお店を覗く。可愛らしい女子大生たちが溢れているうさぎが踊るいちごのお店。緊急事態宣言が出てからお店から伸びる列はなくなり、テイクアウトとウーバーイーツのみ。
いつも気になってはいたけど、今度行ってみよ〜もう少し可愛い服着てる日に行ってみよ〜と思っていた。わたしという人間はいちごミルクを買うのにも可愛い服を着なければならない見栄っ張りだなと自分が少し嫌になる。でもみんなそういうところあるよね?知らんけど。
勇気を出して店内へ。
お洒落な可愛い瓶に入ったいちごミルク。かわいい。可愛すぎる。せっかく入ることができたのだ、いちごタルトも買おう。蜜で赤くてらてら光るいちごとちょこんとツノをたてるクリーム。かわいい。百点。嘘みたいに平坦に塗ってあるクリームと嘘みたいにきれいな断面をしたショートケーキ。かわいい。食べ辛そうな入り口の小さい小瓶に詰められたいちごソースのかかったプリン。かわいい。あれもこれもと買った。
完全に野菜を買うのが先だった。後悔しつつ大切に大切にいちごたちを抱えて八百屋さんへ。期待しすぎたのか思ったよりも感動はなかった。スーパーの三倍量入ったミニトマトを買い、先程のいちごたちをまた大切に大切に抱えて家に帰った。一緒に買ったあおねぎの先っぽがリュックからすこし出ていてかわいい。正しくはあおねぎを背負ってる27歳のわたしがかわいい。
1円でも安いトマトを求めて、750円のいちごミルクを買う矛盾。
でもわたしは生存ではなく、生活がしたいのです。
一番最初に載せたのは好きな芸人さんが言っていた言葉で、今の自分にとても身近な言葉だった。
さすがにいちごづくし、3886円は買いすぎたけど。