未来志向型プロトタイピングの現在地
こんにちは。
そろそろ梅雨に入りそうな雰囲気ですが、
コロナで外出もままならないし、早めに梅雨入りするのは、
アリ派の僕です。
さて、今週も大学院にお越し頂いたゲストから聞いたお話を
共有させて頂きます。
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科CLコース
クリエイティブリーダーシップ特論第5回目(2021/5/10)は
株式会社ソフトディバイス 八田 晃さん
にお越し頂きました。
3分で読めるので、是非ご覧ください!
ソフトディバイスさんは、京都にあるデザイン事務所で、
その特徴を以下のように話されていました。
・プロトタイピングに強み
・ソフトウェアとハードウェア、サービスとプロダクトの区別なく
一体的に提案
・社是は「Predicting the Future by Making」
ちなみに
ソフトディバイスさんの主なお取引先と、受賞歴はこちら (HPより引用)
名だたる大企業との協業をされていらっしゃいます。
さて、今回お聞きしたことをまとめましたので、
ご覧ください。
今回の全体像!
詳細は以下〜
1. 人の振る舞いのデザイン
八田さんが大事にしているのは
「人の振る舞いのデザイン」
で、
”人の行為"と"体験”を特に重視しているそうです。
2. デザインの目的と手段
デザインと聞くと、反射的に
「課題解決」
という役割期待を想起させます。
しかし、デザインも色々あります。
目的に応じたデザインと、そのアプローチも異なるのだなと
八田さんのお話を聞きながら思いました。
八田さんのお話からは、次のように分けられると思います。
現在志向型デザイン: 現在見えている課題に対するデザイン
未来志向型デザイン: 未来にあり得る課題を描くデザイン
そして、
ソフトディバイスさんは
・「未来志向型デザイン」に強いデザイン事務所で
・プロトタイピングを活用して、”将来ありそうな”問題を妄想
・その問題解決の手段としての「提案」を行い、ディスカッションを促す
そんな役割を果たされていると理解しました。
3. プロトタイピングの位置
そして、デザインをする目的によって、
プロトタイピングの位置付けも変わってくると思うのですが、
こんな感じかなと。
「問題解決型」の現在志向デザインでは、
ユーザーインタビューやエスノグラフィを通じた観察で情報収集をし、
それを持ち寄り、「どうしたら〇〇という課題を解決できるだろうか?」
と問いを立て、アイデアを発散し、アイデアを絞り込む収束を行い、
そのアイデアの具現化としてプロトタイピングという順番に進みます。
一方で、「問題発見型」の未来志向デザインでは、
”未来にあり得る問題を妄想するため”に、
まずプロトタイピングからスタートして、
そこからの発見を集め(発見の発散)、それを統合し(発見の収束)、
あり得る未来、こうありたいという望ましい未来(=ビジョン)を
描くという流れになるのかなと。
八田さんが仰るには
"未来のデザインにおいては、現場観察で課題を発見して解決策を考えるという従来型のデザインアプローチがなかなかうまくはまらない。
だから、大事にしているのが、とにかくプロトタイプを作って体験化してから議論するということ"
ということで、
デザイン思考的な、ユーザー観察起点での
ぶっ飛んだアイデアやビジョン、イノベーションは生まれにくい
ということなのかも知れません。
4. プロトタイピング参加者
そして、未来志向型デザインにおいて目的とする
あり得る未来の問題や、あるべき未来を描くことは
企業のビジョン・ミッションに資するという観点で、
このプロトタイピング&アイディエーションにおいては、
幅広い参加者による「共創型」の取組
が好ましいと、八田さんから伺いました。
ソフトディバイスさんのプロトタイピングでは、
デザイナーだけに閉じられたものではなく、
ノンデザイナーも参加されるものであり、依頼主も参加されます。
お話の中ではお伺いできなかったのですが、
このプロトタイピングにおいては、ここから私見ですが、
・ビジョン・ミッションの最終意思決定者である経営陣も参加すべき
・ノンデザイナーという観点では、社内外から多様なバックグラウンドを持つ有識者を集め、多様な視点でプロトタイピングを体験し、そこから感じ売るもの=つまり解釈、を持ち寄り、議論を闊達に行うのが理想
と考えました。
5. プロトタイピングの手法
そして、プロトタイピングの手法をいくつか紹介頂きました。
この辺はググった方が動画や画像含めて、
いろいろ詳しく知れると思うので、ここでは割愛します。
6. まとめ -デザイナーに求められるもの-
プロトタイピングの役割が
問題解決型の現在志向型デザインによる
アイデアの確認・ブラッシュアップの手段から、
問題発見・問題提起型の未来志向型デザインへと
その領域が拡張しています。
そして、プロトタイピングの参加者も
多様なメンバーで構成されることに意義があります。
これはスペキュラティブ・デザインの発想に近いと思いますが、
思索的なデザインとして、
人類学・政治学・法律・経済・環境...
そしてそこを繋ぐデザイナー
という構図なのかなと。
そう考えると、
デザイナーに求められるのは
造形力ももちろんですが、
多様的で包摂的な知の集合から
創造を促していくファシリテーション(問いや対話のデザイン等)
が重要になってきているのではと感じました。
それをまさに実践されている
ソフトディバイスさん、八田さんは
未来を描くプロトタイピングの先駆けであり、
大企業にイノベーションの火を焚きつける革命参謀
だなーと、心地の良いため息をついた夜でした。