その一針に、エールをこめて。
長男が背番号を頂いて帰ってきた。
普段はベンチ外の長男。ベンチ入りできる機会は滅多にないからすごく嬉しい。
背番号を縫えるって幸せ
普段の私が応援している長男は、グランドでトンボをかける後ろ姿や荷物を運ぶ横顔。
でも、それを悔しいと思ったことは実はあまりない。レギュラー選手たちの実力が圧倒的に高すぎて、悔しさすらいつの間にかどこかにいってしまった。
むしろレギュラー陣は惚れ惚れするほどのプレイを毎回見せてくれ、その活躍のおかげで様々な大会に行き、各地の強豪チームの素晴らしいプレイも見ることができて、本当にいい経験をさせてもらっている。
かといって、普段、出場機会のない長男のような立場の子達は放っておかれるわけでもなく、オープン戦の機会を用意し、レギュラー同様に日々指導してくれる監督さんやコーチにはただただ感謝の気持ちしかない。
だから公式戦でベンチ入りできなくても、不満などなく、十分ありがたいのだが、そんな中で頂いた背番号。もはや感謝の言葉が見つからない。
一針に込める母の思い
長男の背番号を前回縫ったのはいつだっただろう。確か1年生大会の時にはみんな背番号をもらったはず。それが最後だったかな・・・。
記憶に無さすぎて過去のLINEトークを漁り、チームのママ友と縫う位置をやり取りした履歴を探し当てた。
それを確認しながら縫う位置を決め、まち針を細かく打つ。
真っ白な糸を縫い針に通し、一針、一針縫い進めながら、そこに込めるもの。
それはこのユニフォームを着てベンチにいられる奇跡の時間を存分に楽しんでほしい、という母の思い。
整備したばかりのグランドの土の匂い。
試合前のウォーミングアップ。
ベンチ内で仲間たちと交わす何気ない会話。
試合前のシートノックの手伝い。
近くに聞こえる審判団の声。
ベンチ前の気持ち良いほど綺麗な整列。そこに加わる嬉しさ。
バット引き、ボールボーイ。試合球の感触。
一秒でも長く、1ミリでも深く、その空間のいろいろなものを焼き付けてきて欲しい。それはきっと大人になったキミを支える力になるから。
普段込められないエールを時間をかけて丁寧に縫い込んでいく。
おまけ
学童の頃とは違う、ひとまわり大きな背番号をようやく縫い終え、背番号を両手でシュッシュっと伸ばした。うん、歪んでない。
ユニフォームをそっと畳み、背番号を上にしてソファの上に置く。
背番号ついたユニフォームはやっぱりカッコいいなぁ。
裁縫は苦手な私だけど、これだけは別格。
背番号を縫わせてくれる親孝行に、静かに感謝。
野球好きな母が日々感じたことを綴ってます。何かのお役に立てたら幸いです。