言葉って、人柄。
言葉には人柄が出る、っていつも思う。
例えば、困っている人へのとっさの声かけ。
例えば、辛い思いをしている人にそっと寄り添い、勇気づけるひとこと。
いざという時に言葉には人柄が出る。思いやりや優しさが言葉の端々から滲み出るのだと思う。
素敵な言葉は祖母が教えてくれた
そう思うようになったのは、今は亡き祖母との手紙のやり取りのおかげ。
78歳でこの世を去った祖母とは折に触れ、手紙を送ったり貰ったりしていた。
暑中見舞いに年賀状。誕生日や入学式などの人生の節目に丁寧な梱包で送られてきた贈り物にそっと添えられた昔ながらの、縦書きの罫線だけが描かれた便箋。そこにはいつも変わらない祖母の几帳面で美しい文字があった。
丁寧な言葉で書かれたその手紙はいつも「お元気ですか」から始まり、「体にはくれぐれも気をつけてください」との一言で結ばれ、文末にはきちんと日付と名前が書かれていた。
ハッキリ書かれているわけではないのに、祖母の真面目な人柄や温もりや私への励ましがジワーッと伝わってくるあったかい手紙。
返事を書こうとキャラクターものの便箋を前にした小学生の私は身の回りの出来事や贈り物への感想をどう伝えたら、雰囲気や気持ちが伝わるのか、うーん、うーん…と悩み、何枚も便箋を書き直していたから、レターセットの封筒だけが余ってしまった。
素敵な言葉は優しさを人に届ける
祖母が亡くなる半年前くらいまで、手紙のやり取りは続いた。70歳を過ぎた頃からか、祖母は手紙を書くのがしんどいと言い、手紙を受け取ると電話をかけてきて私を心配してくれた。その後体調を崩し、自力で手紙を読めなくなってからは看護していた叔父や伯母が読み聞かせてくれていたと、後になって聞かされた。
葬儀の時、私は孫代表で弔辞を読むことになった。夜遅くまで、何度も何度も書いては消し、言葉を直した。
たくさん祖母から素敵な言葉を教わったのに、祖母を送り出す言葉が見つからない。小学生の頃のように紙を前に悩み、交わした手紙を思い出しながら、祖母との思い出を弔辞に一生懸命込めた。祖母の人柄が伝わるように。
私から祖母へ、最後の手紙だった。
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ねぇ、おばあちゃん。
私はあの時、ちゃんと言葉を選べていたかな。
葬儀に来ていた方におばあちゃんの人柄、伝えられたかな。
もう答えは聞けないけど、祖母から教わった沢山の素敵な言葉は、メールやチャットが主流となった今でも変わらず、優しさを私の大切な人達に届けてくれる。
言葉には人柄が出るから。
私は祖母のようにいざという時に優しい言葉をかけられる人でありたい、と思う。
(この作品は拝啓 あんこぼーろさんの「ことば展覧会」へのお誘い。という企画に参加させていただいております。あんこぼーろさん、素敵な企画をありがとうございます!)