会社のバレンタインからやっと卒業した話。
2月14日、バレンタインデー。
私にとっては20年以上気の重い日だった。
社会人になった年に迎えた最初のバレンタインデーのことは今でもよく覚えている。
女性の先輩に数と予算を言われて、仕事帰りに百貨店の地下で人波かき分けてショーケースを見ては予算とにらめっこし、たくさんのチョコレートを買った。
インターネットなんて全然普及してなかったから、事前リサーチもできず、臨戦あるのみ。
チョコ自体の質量はきっと大したことないんだけど、過剰なラッピングとお渡し用紙袋までオンされて嵩張った大きな紙袋を両手にぶら下げ、電車に乗ったことを覚えている。
バレンタインデー当日はそれを「⚪︎⚪︎さんと××さんと△△さんと私からです」といちいち言って配って回らねばならず、これが毎年続くのか・・・とうんざりした。
1ヶ月後。3月14日のホワイトデーはお贈りしたチョコのおそらく3倍くらいする高級なお菓子をいただいてしまい、心底恐縮した。差し上げた単価から見たら恥ずかしいほどだったけど、いただいた先輩たちは「やったー!」と喜んでいる。
これは誰が買いに行ったんだろう。さすがに部長は買いに行くまい。同期に聞いたら若手男子が買いに行かされるらしい。やっぱりな。ここでも若手が走らされていた。これは誰にとっても嬉しくないイベントだなとつくづく思った。止めたい。でも言い出す勇気は20代の私にはなかった。
そんな会社のバレンタインデーにここ数年逆風が吹いた。
義理チョコ廃止の動きがニュースで取り上げ始められて、会社内でも少しずつ廃止が進んでいくようになったのだ。
廃止されてお返しを気にしなくて済むから助かった、なんていう男性側のコメントもあったりして、廃止の勢いはますます加速。
その勢いに乗って少しずつチョコレートの配布先を減らしていった。
「今年から廃止しますね。」
その一言を言うと、言われた男性たちはほぼ100%安堵の表情。
女性の気持ちに気遣って男性も言えなかったんだろうな。
とは言っても、簡単に廃止できたのは、同世代とそれ以下。年上の層はやはりチョコをもらうことがなんというかメンツ?人気?そういうバロメーターだと思っているフシがあり、なかなか止めづらかった。
でも、ある時、お返しをくださった上司が言った一言が大きかった。「こういうの何買っていいかわかんないから、毎年奥さんに頼んで買ってきてもらってるんだよ」
薄々わかっていたけど、やっぱりそうか。それなら奥様の負担も減らしたいって思えるようになり、年配層へお渡しするのもすぐに止めた。
結局、渡す選択をしていたのは自分。私が止めると決めればいいことなのだ。
そして、今年ようやく最後の「終わりにします」を伝えることができた。
二十数年ぶりに、何もリサーチしなくていいバレンタインを迎えられる。なんと清々しいんだろう。
美味しいチョコは食べたいから、ふらっとデパ地下に寄って、その時の気分で食べたいものを買おう。
長年のバレンタイン業務からようやく解き放たれて、今年の2月は気持ちスッキリで迎えられそうだ。
野球好きな母が日々感じたことを綴ってます。何かのお役に立てたら幸いです。