見出し画像

銭湯で湯治


冬になると、寒くて動きたくないからか横着になりがちで、ちょっと立てばいいのに体をひねって済まそうとかするものだ。で、背中の筋を違えてしまい、今、何をするのにもいちいち立って動かなければいけない状態である。
で、横着のできる身に早く戻りたくて、銭湯に行くことにした。
 
というわけで、銭湯支度をしておりましたら、家にはシャンプーが特大サイズのしかでなくて、試供品なども、入れる容器なんかも見つからず……、でもそんなときに ハッ と閃いた。「頭の地肌に染みこませて行けばグーじゃないか!」と。
 
で、家を出る寸前にシャンプーをポンプ2押し、ササッと地肌にだけ……と思ったら思い通りにはいかず、髪にベッタリ。付いているところと付いてないところのギャップでサザエさんみたいになっちゃって、これじゃダメだ。
なので、今度は整髪料のように髪全体に、泡立てないように注意して擦りつけ、まあ無事おっさんのロカビリー野郎として生まれ変わることができ、まあ「ちょっとの泡立ちはご愛嬌」とばかりに颯爽と外へ出ました。
 
したらば、ミント系シャンプーでもないのにけっこうスースーして、匂いもかなりして、なんだかかゆくて、でも触ると泡立っちゃうから手もつけられないし、ちょっとの泡立ちにも自信がなくなった。なるべく暗がりを歩き、遠回りして15分。不自然な姿を不自然に見えないように、口笛を吹きながら歩く。
「ゆ」と書かれたのれんをくぐり、そそくさと番台に500円玉を置き、お釣りを待つ。番台から見下ろすオヤジとは目を合わさなかったけど、「なんだコイツ、シャンプーぬってきてやがる」とか思われたかもしれない。こんな思いをするんだったら……とお釣り銭の隣にある40円のミニシャンプーを見やる。
 
脱衣所でも困った。外に出る間際にシャンプーを塗ったので、脱ぐ時のことを考えていなかった。だからヒートテックのタートルネック着てしまっていたんだけど、後で着る時にベトベトは嫌だ。
でも変な脱ぎ方をしたらシャンプー塗って来てることが周りにバレちゃうし、だから普通に脱いだけど……「なんでタートルネックだったんだオレは」と後悔。
 
そそくさと中に入り、ケロリンの桶に湯を溜めて、まずは体にかけて、周りの様子を伺う。そこそこ混んでたけど、こういうところはお互いをジロジロ見ないという暗黙のルールがあるから、何もつけてないのに泡立つというマジックのような出来事が起こっても、誰も何も言ってこないはず。シャンプーをつける振りは省いた。
泡立つわ 泡立つわ  シャワーの出が悪かったためにいつまでも泡が止まらなかった。「どんだけぇー」とテレ隠しに心の中で呟いた。
 
あとはゆっくりと湯船に、サウナに(ここはサウナ無料)。幸せのひととき。
タートルネックには思ったほどついてなかったけど、やっぱりちょっと気持ち悪い。一瞬「直接裸にダウンを着るかな」とかよぎったけど、帰り道にトラブルが起きて、で上着を脱ぐようなシチュエーションにならないとも限らないし、で、裸に直接ダウンという変態じみたその姿が、もし裁判沙汰とかになったら不利になる可能性だってあるのでやめた。
 
家に着くとなんだか気持ち悪くって、もう一度シャワーを浴びるはめに。その時に「さっきはどんなだったかな?」と、さっきみたいにもう一度シャンプーを髪に付けて撮ったのが、この写真です。贔屓目なしに見ると、やっぱりシャンプーでした。



 
歯車は一度狂うと次々と変な展開を生むので、皆さんにこの「事前シャンプー」のアイディアを真似することを勧めません。でも、もしやってみたいという人がいましたらば、前開きのファスナーかボタンの服をお忘れないように!
 
というわけで、あれやこれやで背中の痛みがすっかり心から消えてなくなっていた、という「銭湯で湯治」の話でした。
これでまた横着ができる!

いいなと思ったら応援しよう!