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空想対話10〜外観デザイン
旧公衆衛生院をとおして建築家・内田祥三との空想対話10〜外観デザイン
「内田先生、ゴシック建築の観点からすると安田講堂(1925)は色濃く残っているように見受けられますが、旧公衆衛生院(1938)は多くの経験を重ねられた後の作品、いわば"内田ゴシックの最高峰"と言っても良いのではないでしょうか?(ちなみに竣工時、先生は51歳)」
「我が家からもよく見えました。」
「最も脂が乗った頃ですね!」
「はて。。。」
■ゴシック建築のエッセンスを残した外観デザイン
尖塔を造ることなく天への憧憬を表現するデザインとして、尖塔状のピラスターが用いられている。
また、植物をデザインしたようなテラコッタで装飾され生命力を感じさせている。
外壁にはスクラッチタイルを用い、風格を感じさせながら汚れを目立たなくしている。
同様に東大に残る内田建築の多くはスクラッチタイルを用いている。
正面エントランスには本建物で唯一アーチをかけロマネスク様式を取り入れ、柔らかさを演出している。
逆に横エントランスは、尖塔状の屋根とリブボールトのデザインを用い、ゴシックデザインを強調している。
建設当時としては異例と思われる窓開口を大きくとり、光を取り入れるゴシックデザインのエッセンスを表現している。
内装仕上げと同様に人が触れる箇所は外構も含めて丸く角を取ったデザインを採用している。
また、窓枠、庇、水切り、樋、土台に至るまで細やかな配慮がされている。
扇状石畳 ピンコロ
先生のデザインは安全を最優先させた構造と細やかで洗練された意匠の絶妙のバランスから生まれたものですね?△◯◇」
「そうなのですか。。。」
つづく
(文責 関原宏昭)