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C-10

 ルックスというのは1つの才能だ。しかしそれは本人の努力というより親に感謝すべき資質だろう。こんな事を言うといかにも僕らはルックスがよかったと思っている様にとられるかもしれないが何の事はない、僕らは近所の兄ちゃんといった感じの実に平凡な見た目だった。

 ファンの人達は、いや、カッコよかった、と言ってくれるが、ここで種明かしを1つ。

 テレビにしても雑誌にしてもメディアにはそこに映る人に特別感を与える不思議な力がある。例えばテレビという四角い画面に切り取られると何故かその中の人はカッコよく、また、美しく、そして不思議なのは、大きく見える、という魔法の様な効果がある。カメラのレンズや照明や効果音やテロップのテキストのキラキラもあるだろう。しかしそれだけではない何かがある。色々考えた末僕が出した答えは、存在という絵に額縁がつく様なものではないか?と考えている。額装も間違えると台無しだけどねw

 僕らは間違いなく普通の兄ちゃんたちで、それを痛感したのはテレビ局などに出入りする様になってからだった。局内で出会ういわゆるアイドルの方達ときたら驚く様な美形そして超絶スタイルなのだ。びっくりした。

 代表的な例を1つ上げると僕らの少し後に鳴物入りでデビューしたジャニーズ事務所の少年隊だ。中でも東山さん
。初めてベストテンに出演した彼等。踊りの凄まじさはもちろんの事あのスタイルは一体なんなんだ?!と思った。手足の長さと頭の小ささ、宇宙人か、って感じがした。テレビタレントを腐るほど見てきたはずの黒柳徹子さんが彼等のパフォーマンスの最中思わず、足長い、すごいわねぇ、と呟いたのを僕はハッキリ覚えている。

 その様な方々と同じ番組の同じ赤いツイードのソファに僕らが座る事ができたのは楽曲や演奏の賜物だけではない

 CCBを生んだ功労者の1人にKさんという人がいる。何故本名を今出さないか?というと彼はあまり表に顔を出したがらない伝説のヘアーメイクアーティストだったからだ。今一体どうなさっているか僕は知らない。僕の想像だが今もどこかの現場で天才的な感性でヘアメイクをやってらっしゃると思う。希望的観測でもある。そうであってほしい
。パリコレとかミラコレとかで。

 Kさんこそが平々凡々だった僕らの見た目を激変させた人物に他ならない。彼がロンドンから発売されたばかりの
ヘアダイ、つまり染粉?染料?とにかく僕らをあの強烈な色の髪の毛にしたソレを個人輸入して僕らを極楽鳥の様に仕上げた張本人なのだ。

 原宿竹下通りにある美容室を借り切って僕らの髪はブリーチされて金髪になりその後それぞれの色がそこに乗っかった。みんな鏡に映る自分の髪を見て言葉を失った。黒いままの髪を選んだ米川以外は。

 僕と英樹は興奮した。

 この髪の色、パない…..

 面白がって僕らは店を出て竹下通りから原宿の交差点まで歩いた。原宿だから時々茶髪の子もいた。しかし原色のミドリやブルーの髪は誰もみた事がなかった。少なくともそこに歩いていた人達にはよほど脅威だった様で、僕と英樹を中心に半径1メートルほど人が寄り付かなかった。ちょっとしたソーシャルディスタンスだ。あの混雑した原宿ラフォーレ前で、だ。人の視線はあたかも人間以外の多少危険な野生動物でも見ている様な感じだった。

 そこにピンクや紫が加わればそれはもうものすごくて、今でこそ当たり前の様な髪の色も当時は、全国の派手な輩が集まるテレビ局内でも十分威力を発揮した。赤いソファに座る事ができたのもイギリス製の染粉と親が産んでくれた体に髪の毛がまだ生えていた事と、何よりあのKさんのおかげなのだ。

         もう、とっまらない、つづく。


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