デジタル教科書の可能性を発見する冒険:藤井資子先生
1年目の大冒険。
本務校では、ビジネススクールスタイルのケースメソッドを学部生向けにアレンジして、討論型の授業を実施していました。そんな私にとって、デジタル教科書を用いたオンデマンド型の授業は大冒険でした。弊学では、リアルタイム・双方向の授業形態が認められていなかったのです。1年目の大冒険。どうなることかと思いました。やってみると意外と楽しく、いろいろな発見がありました。
2年目、授業形態を模索する。
授業は、予習・復習をしてくださいとシラバスでお知らせし、初回のオリエンテーションでもお知らせしました。予習の際に、わからなかった言葉にマーカーを引いて、わかったら消すか、色を変えるかしてみよう、というものです。自分が大事だと思うところに線を引いてもいいですよ、とマーカー機能を好きに使いながら事前に教科書にざっと目を通すことを推奨していました。どれくらいの方が実践してくださったかはわかりません。アンケートの中に、「動画の重要ポイントで解説されているワードに線を引いていた時は嬉しかった」という自由記述を発見したときはほっとしました。マーカー機能、なぜか使いづらいと学生さんからの評判があまり良くなかったのです。その後、プラットフォームの改良により、使い勝手も随分良くなったのではないかと思います。
3年目、学生間インタラクションが始まった!
経営戦略論Ⅱで、第5回から第15回まで「お便りコーナー」を開設しました。はじめは、「身の周りで気がついたこと何でもいいですよ。お便りください。良いお便りは顕名で紹介して、点数を加点します。」とアナウンスしました。
そして、私からの「返信」を付けて徐々に経営学に誘導してまいります。経営学に関係することに少しでも興味を持ってもらうために、取り上げるお手紙には、経営視点を少し織り交ぜたお返事とともにLMS上に公開しました。たくさんの方がいろいろなお手紙を寄せてくださいました。入口のハードルを下げて始めてみたのが良かったのかもしれません。
気がつくと、学生間インタラクションが始まっていました。オンデマンド配信型の授業でも学生同士のインタラクションが起こるのだという発見が驚きでした。60名弱の受講生でした。「ユニクロやGUの忘れちゃってるポイントってどうしてる?」、「どんなプリンが好き?」という調子です。
私の勤務地は熊本です。熊本のプリン消費額を総務省のデータで調べてみると、全国で下から5番目。まずは受講生のプリン消費や好みに関するアンケートを実施しました。そして、全国で下から5番目のプリン消費。これを上位に持っていく戦略をみんなで考えようというのを期末レポートにしました。「お便りコーナー」が発端となった期末レポートです。みなさん楽しんで取り組んでくだったようです。熱心な考察が印象的な期末レポートでした。
4年目前半、教室の収容制限のある中でのオンデマンド授業。
2023年度が始まりました。弊学の前期の授業は、教室の主要制限があり、最大定員の半分程度でした。一番大きい教室を使っても同時に授業を行うことができません。今年もオンデマンド型の授業を行うことにしました。
収容人数内の講義は対面授業も始まったようです。授業時間内に終ることを目指し、15分程度の解説動画を5~10分程度にしてみました。そこで、自分の動画の視聴動向というのを始めて真面目に見てみました。衝撃の結果です。なんと、最初に今日やるところ、重要なポイントを解説した2枚目までのスライドの途中でガクッと視聴率がさがっていたのです。知恵を絞って5~10分に要約した動画はダメだったのかと碩学舎デジタル教育研究会で発表しました。ある先生が、その後のグラフに着目し、「逆に言えば、その他の解説は安定して50%程度は見られているということですよね。」とコメントを下さいました。「!」な瞬間です。そうか。受講生はうまく飛ばし見をしてくれているのかもしれない。そんなポジティブな捉え方をすると、工夫をする元気が湧いてきます。
次のアドベンチャーへ向けて。
後期はデジタル教科書の共有機能(デジタル教科書購入者を紐付けして、私の書き込みを皆さんに見てもらうことができます)を利用して、いろいろな仕掛けを用意した授業に取り組んでみたいと思います。
デジタル教科書は、文字がただ電子化されたものではないのです。使い方によって、学生さん達と我々教員の架け橋になり、また学生間でのインタラクションを起こすものでもあります。オンデマンド型の授業であってもLMSを通じてその手応えを感じることができる「生き物」みたいなツールだなと思います。
そして、これまでずっと支えてくれていたのが、碩学舎デジタル教育研究会です。自由闊達な議論の場です。ある先生が、「我々教員はそれぞれが個人事業主のようなものです。この研究会が相互扶助ネットワークになると良いなと思っています。」とおっしゃっていらしたことを思い出しました。この相互扶助ネットワークに支えられているからこそ、いろいろな冒険ができるのだと思います。
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