『メル・リルルの花火』第12話をみました
【芝居のポイント】
影響を与えあうカギ
【公演概要】
おぼんろ第18回本公演『メル・リルルの花火』
語り部:末原拓馬、さひがしジュンペイ、わかばやしめぐみ、高橋倫平、黒沢ともよ、田所あずさ
ムーブメントアクター:渡辺翔史、坂井絢香、山城秀彬、miotchery、堀田聖奈、権田菜々子
公演期間:2020年4月17日(金)~26日(日)
劇場はオンライン(公式YouTubeチャンネル):https://www.youtube.com/channel/UC5gxLbqTgaKOcfOI2k0CIJQ
公式ホームページ:https://www.obonro-web.com/16-1
2020/04/25/18:00開演観劇
「クルパジムン、クルパジムン」
そう唱えることでこの物語に関われるのなら私は全力で「クルパジムン」と繰り返したいと思った。これはペズロウの塔の中の物語に登場したおまじないの言葉。ヒトマカセたちはクルパジムンと呼ばれている別世界の妖精に向かって「クルパジムン、お願いします」と祈れば、その妖精が「クルパジムン、クルパジムン」と唱えて願いを叶えてくれると信じている。「クルパジムン」とは別世界への呪文なのである。今日の物語の最後、語り部たちは「ヒトマカセやチルやメブキや…みんなを、別世界にいる私たちが助けられるかも知れない」といって「クルパジムン、クルパジムン」と唱えた。この言葉で、物語世界と語り部たちのいる世界、そして現実、観客のいる世界をも繋ぐことができると示唆したのだ。
私はうれしかった。この物語に自分が関われる気がしたのだ。変な例かも知れないけれど、プリキュアの映画で怪獣に負けそうなとき、観客のパワーを集めてプリキュアたちが強くなるシーンがある。物語への参加、つまり自分が物語に関与できる扉を開いてもらえる瞬間だ。コミュニケーションにおいても人の話を聞くだけでは不十分で相手に質問などリアクションをすることで初めてその人と話しをしたといえる。以前からおぼんろは観客を『参加者』と呼び物語の一部になれるような仕掛けを用意してきた。今回リモートな状況であったとしても、「クルパジムン」という言葉や語り部たちの素的物語を入れ込むことで参加者がこの芝居に関わる仕組みを作った。
また、今回語られたチルが人間への復讐を誓った時の様子が印象的だった。「チルはうれしそうだった」とメブキ。何故チルは憎悪で心を満たすことがうれしかったのか。私は、これも他人との関わりを見いだせた瞬間だったからではないかと感じた。悲しいことにどんな目的、行為であろうと自分が他人に影響を与える存在になれる、と気づくと人はうれしくなる。それこそ人間なのだと思うのだが。また、外出を自粛している今、私が一番欲している感覚かも知れない。
後2話でこの物語は終わる。全力で前のめりに関わって、最後まで参加者でいたいと思う。