続・時代劇レヴュー㉘:三匹が斬る!(1987年~1995年)
タイトル:三匹が斬る!
放送時期:1987年10月~1995年8月(全七シリーズ全百三十七話)
放送局など:テレビ朝日
主演(役名):高橋英樹(矢坂平四郎=殿様、第一~第六シリーズ)
役所広司(久慈慎之介=千石、第一~第五、第七シリーズ)
春風亭小朝(燕陣内=たこ、全シリーズ)
近藤真彦(吉良右近=千両→若殿、第六、第七シリーズ)
脚本:野上龍雄、小川英、胡桃哲、蔵元三四郎、和久田正明、塙五郎、
志村正浩、藤井邦夫、長坂秀佳ほか
1987年~1995年にかけてテレビ朝日で放送された時代劇「三匹が斬る!」は、三人の浪人達が旅先で遭遇した事件に各々別の形で関わり、最後は三人で悪人を斬り捨てるロードムービー式の時代劇で、好評を博して全部で七シリーズが放送された。
今回「三匹が斬る!」と言う名称で一括して扱ったが、一貫したシリーズながら放送時は各々別のタイトルがつけられており、第一シリーズが「三匹が斬る!」、以下「続・三匹が斬る!」「続々・三匹が斬る!」「また又・三匹が斬る!」「新・三匹が斬る!」「ニュー・三匹が斬る!」「痛快、三匹が斬る!」となっている。
旅のルートは、第一シリーズが江戸から京都(中山道経由か?)、第二シリーズが京都から江戸(東海道経由を思わせる描写がある)、第三シリーズが九州、第四シリーズが山陰道から江戸、第五シリーズが「奥の細道」の道中をたどり、江戸から奥羽・越後、第六シリーズが江戸から東海道経由で四国、第七シリーズが江戸から甲州街道、北陸道を経由して山陰までである(ただし、後述のように特に前半は架空の藩などが登場するので、上記はあくまでも目安である)。
時代劇と言う形式を取りつつも、台詞には現代語が随所で挟まれ、また特に第一シリーズと第五シリーズでは架空の藩や宿場が舞台になるなど、考証よりも娯楽性を重んじた作風であるが、一応全編十一代将軍家斉の治世末期(一部十二代将軍家慶の治世)が舞台で、水野忠邦や水野忠成、鳥居耀蔵など幕閣の要人が所々で登場したり、伊能忠敬や間宮林蔵など同時代の著名人物が関わるエピソードもある。
本作の特徴は、三人の個性豊かな浪人達が織りなす人間模様で、時に確執あり、時に友情ありと言った三人の関係が、絶妙な掛け合いを交えて各シリーズの随所で展開される。
三匹のリーダー格で高橋英樹演じる矢坂平四郎は、どこか高貴な身分を連想させる振る舞いから「殿様」、役所広司演じる豪放磊落で情にもろい薩摩浪人・久慈慎之介は、千石取りの武士を夢見ることから「千石」、春風亭小朝演じる常に金儲けを考えて、行く先々の宿場でいかがわしい商売を展開する香具師の燕陣内(正体は京都町奉行の板倉内膳正)は、最初に出会った時に「たこの吸い出し」を売っていたことから「たこ」と言うそれぞれ個性的なあだ名で呼ばれ、それぞれ最後の殺陣での戦い方にも特徴がある(矢坂は正統派剣法を使い、久慈は示現流をベースにした我流の剣法で「ぶった切り」、燕は両先の仕込み槍や短筒を使う)。
当初はこの三人で固定であったが、第六シリーズで役所のスケジュールの都合で一時「千石」が脱退して、代わりに近藤真彦演じる「千両」こと吉良上野介の子孫・吉良右近が加わり、第七シリーズでは今度は高橋のスケジュールで「殿様」が脱落して、代わりに千石が復活した(この時、右近は「若殿」とあだ名が変わっている)。
また、三匹と同行する若い女性キャラクタがシリーズごとに登場し、このうち第三~第五シリーズに登場したお蝶を、演歌歌手デビュー前アイドル時代の長山洋子が演じている。
設定や展開はややはちゃめちゃな所があるが、痛快な展開と、思わず笑ってしまうアドリブとも台本ともつかない三人の掛け合いなど、現在から見ても見応えあって終始飽きさせない作品であり、1990年代を代表するテレビ時代劇の一つと言えよう。
なお、本作には2002年にキャスト・設定を一新したリメイク版が放送されるも、そちらはシリーズ化に至らず一シーズンで終了している。
また、本作の「後日談」的な要素を持つ作品としては、里見浩太朗・谷啓・丹波哲郎の三人が実年齢通りの役に扮した「痛快!三匹のご隠居」(1999年テレビ朝日放送)があり、設定や役名は全く別であるが、丹波哲郎演じる乾三四郎が自称どこかの元藩主であったり、谷啓演じる玄夢の正体が町奉行の板倉内膳正であったり、「三匹が斬る!」を連想させる設定が一部に存在する。
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