東北地方の石造物㉓:薬王院有頸五輪塔

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名称:薬王院有頸五輪塔

伝承など:なし

所在地:岩手県西磐井郡平泉町平泉 毛越寺薬王院


奥州藤原氏二代・藤原基衡が開いた毛越寺には、複数の塔頭があり、そのうちの一つである薬王院の墓地には、有頸五輪塔と呼ばれる石塔がある。

この石塔は、平泉周辺にのみ見られる特異な形式のもので、五輪塔の亜種とも、塔身の形から宝塔の祖形の一つとも捉えられ、議論の分かれる所である(「有頸五輪塔」の名は石田茂作の命名による)。

以前にも数回、平泉周辺のこの形式の石塔を紹介しているが、この薬王院の石塔も他の事例とさほど時代差のない時期の造立で、鎌倉時代前期の作と思われる(この形式の石塔は、鎌倉時代前期に集中的に造られたが、以降は造立されていない)。

平泉周辺の有頸五輪塔の中では比較的小ぶりであるが、ほぼ完形のもので貴重である。

なお、毛越寺にほど近い龍玉寺の墓地内にも、同型同時期の有頸五輪塔が二基存在するが、そちらは個人墓地内にあるため拝観だけにとどめた。


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