FC東京を振り返る(2021年第18節vs横浜FC)
欧州サッカーのシーズン終了とともに、2週間程度の国際Aマッチデーによってリーグ戦が中断となった。
日本代表には小川諒也、五輪代表を絞り込む最後の機会としてのU24には田川亨介が選出され、それぞれチームの活動から離脱した。
その間、チームはルヴァン杯のプレーオフステージ(実質的な決勝トーナメント1回戦)で湘南と2試合を戦い、第2戦で相手を圧倒した結果、逆転にてプライムステージ(準々決勝)へ駒を進めた。
来シーズンの加入が発表され、特別指定選手として合流した直後の明治大学・岡庭愁人が第1戦でいきなり先発出場を果たすなど、後半戦に突入していくシーズンを見据えた動きも垣間見えた。
そうした中で再開されたリーグ戦、6月19日(土)18時に開始されたアウェイ横浜FC戦を振り返る。
●試合前
現在の横浜FCの勝ち点は『7』であり、4チームが降格する今シーズンにおいて非常に厳しい現状だった。
そして彼らの本拠地はニッパツ三ツ沢球技場である。
首都圏において数少ない球技専用スタジアムであり、どこか欧米の小規模スタジアムを感じさせる素晴らしい雰囲気がある。
過去を振り返ると、まだ明治大学生として特別指定選手だった長友佑都が当時のナビスコ杯でデビューを飾った試合がこのスタジアムだった。
試合後にゴール裏に煽られた結果、なぜかでんぐり返しで声援に答えるという訳の分からなさに笑わせてもらったことを良く覚えている。
そして、鈴木規夫が公式戦5戦連続ゴールを決めたのもニッパツではなかっただろうか。
幼い頃の記憶なので曖昧だが、思い出深いスタジアムであることは間違いない。
そんな素晴らしい環境で、かついろいろな思いがあるスタジアムである。
そして来シーズンはJ1にいることが厳しいと予想される中で、是が非でも行っておきたいところではあった。
しかし、緊急事態宣言下の東京から迂闊に県外へ出るわけにもいかず、泣く泣く現地でも応援をほかのサポーターへ託した次第であった。
●先発出場選手
目下の懸案事項となっている右サイドバックには中村拓海を起用。
代表帰りの小川がいる左サイドバックにはなんとカシーフを抜擢した。
ルヴァン杯の湘南戦では強度の高い守備と鋭いクロスを見せていたので、そこへの評価の現れかと思われる。
中盤は、東京でのタスクに順応し安定してきた青木と安部で底を担ういつものスタイル。
前線にはブラジル人トリオを並べ、東が攻守の舵取りを行う。
●前半
以下、試合中に記録した好プレーを中心に紹介する。
全てのプレーがハイライトに選ばれてはいないので、DAZNでの振り返りに活用していただきたい。
4分、カシーフのクロス
8分、拓海の前へ押し込む前目のプレス
9分、森重の対応vsクレーベル(判定はファール)
10分、アダイウトンからレアンドロのパス
16分、解説・中田浩二の小川諒也評
18分、カシーフの守への切り替えの速さ
18分、波多野のセーブ
27分、波多野の判断ミスから森重のスーパーカバー
28分、カシーフのダイレクト弾丸クロス
30分、ショートカウンターからアダイウトンのゴール。ブラジルトリオで崩す。
32分、青木のオーバーラップ
33分、安部の奪取からショートカウンター
レアンドロとディエゴが頻繁にポジションを入れ替えて、相互に組み立てとゴール前への出没を繰り返す。
アダイウトンは左サイドに貼り気味にして、相手右CBの伊野波を釣り出す。
そのスペースを使う。
3-5-2の横浜FCのウイングに対して、アダイウトンと東が厳しくチェック。
両SBも前目のポジションを取りそれをフォローする。
37分、ネガトラで拓海が中央ハーフラインまで進出して中を絞り、ボールカットする。
39分、カシーフからニアへ弾丸クロス
40分、ネガトラでカシーフが前に出てプレス(ファール)
43分、森重のフィードからレアンドロ、東が形を作る
●ハーフタイム
前半の東京の組み立ては、レアンドロとディエゴが頻繁にポジションを入れ替えて、相互に組み立てとゴール前への出没を繰り返していた印象だ。
アダイウトンは左サイドに貼り気味にポジショニングして、カシーフの上がりを活かして相手右CBの伊野波を釣り出す。そして空いたスペースを安部やレアンドロ、ディエゴが使うという攻め方だった。
守り方については、3-5-2の横浜FCのウイングに対して、アダイウトンと東が厳しくチェックし、両SBも前目のポジションを取りそれをフォローすることでサイドでの数的有利を確保していた。
力強く突進してくるクレーベルと、その周囲で運動量豊富に動き回るジャーメインの両FWに少々手を焼いていたが、先制したこともあって落ち着いた対応ができていた。
何より27分の森重のカバーリングが素晴らしい。その直後に先制点が生まれたという結果から見ても、やはり必死にボール姿は流れを引き寄せるプレーだと言える。
●後半
後半開始から中村拓海を下げ、小川諒也を投入した。
小川はそのまま右サイドバックに入った。
たまたま解説が中田浩二氏ということもあり、「左サイドバックの選手が右サイドに入ることはどうなんですか。やりづらさとかはありますか」と実況に質問されていた。
「やはり、身体の向きが全く違うのでやりづらい。右利きのサイドバックが左に入るのとは訳が違う」といった趣旨の発言をしていたが、我々東京サポは心配することはなかった。
数年前から幾度となくそのチャレンジを見守っている。
いつかの日立台、アウェイ柏戦で先発から右サイドに抜擢された小川をハラハラしながら見届けた経験があるのだ。その時も及第点の活躍をしていた。案外器用な選手である。
46分、アダイウトンのドリブル
47分、カシーフからクサビのパス
48分、アダイウトンのドリブル突破(ファール獲得)
50分、CK崩れからディエゴのクロス、青木のヘディングシュート
51分、ディエゴとレアンドロの中央突破
53分、アダイウトンのパスカットから独走、シュートできず
55分、東のボールロストからポスト直撃のシュート被弾、こぼれ球へのシュートブロックに東のハンドを取られる(PK)
→VARでハンド取り消し
61分、小川のシュートブロック
55分から61分まで続いた横浜FCの流れをゴールキックで断ち切る
63分、レアンドロがドリブルで3人相手に時間を作る(ファール獲得)
64分、レアンドロのFKは枠を捉える
65分、ディエゴの絶妙なトラップからシュート
71分、ネガトラでの小川の守備
72分、アダイウトンOUT永井IN、東OUT田川IN
73分、波多野のセーブ
横浜FCの攻撃、東京がカウンターを狙う形が続く
80分、ポジトラでのカシーフのボールロストから守備陣が抑えるが、安部が痛む
83分、カシーフOUT岡崎IN
84分、ネガトラからディエゴがボールを出し永井がゴール前へ(CK獲得)
88分、ディエゴOUT高萩IN
88分、波多野のクロスへの対応、こぼれ球を青木がシュートブロック
89分、途中出場の中村俊輔のCKから、同・渡邉千真がフリーでヘディングシュート
91分、田川のシュート
93分、レアンドロのヒールパスから田川がGKと1vs1
●試合終了
55分から61分までは横浜の波状攻撃が続いていたが、弾き返すことができた。
東のミスを発端として発生した苦しい時間帯ではあったが、ミス直後にスプリントして身を投げ出しシュートブロックをするメンタリティには拍手を送りたい。
追加点を取れないことは昨シーズンから引き続いた課題となっている。
それでも、今シーズン序盤は得点力を増そうと守備のバランスを崩していたため、まずは守備、とにかく失点しないという意識付けが戻ってきたことを喜ばしく思う。
14節の柏戦以降の東京の好調を支えているものが守備なのは間違いない。
青木と安部のボランチコンビが安定感を増してきた。
ただ、折返しとなるシーズン後半以降を戦い抜くためにはバックアップは必須である。
誰が担うのか。
アルトゥール・シルバや品田には大きな期待をしている。