
FC東京を振り返る(2021年第10節vs福岡)
負け試合を振り返ることほど腰の重たいものはない。
そうこうしている内に週末が過ぎ、もう火曜日となってしまった。
今回は2021年4月17日に行われたJ1リーグ第10節、アビスパ福岡とFC東京の試合を振り返る。
試合結果は1−0でホーム福岡が勝利した。
決勝点はブルーノ・メンデス。そのアシストは田邉草民だった。
草民には素直に拍手を贈ろう。
●試合前
今節はアウェイに参戦せず、自宅でのDAZN観戦だった。
試合開始が14時からだったからか、Twitterのタイムラインには午前中から現地にいるサポーターが食事の写真をアップしており、久々の「蝗活(※FC東京サポーターが遠征先で名物を食べ尽くす様子)」が行われていた。
福岡へは航空機を活用したサポーターが多くいたようだ。確かにコロナ禍で航空業界は苦闘中であり、新幹線より安くなるのも頷ける。
その交通費で浮いた分を食事に回しているのが東京サポだ。「各地で歓迎されるイナゴ」という珍しい存在である。
そういう自分は、近くのファミレスでハラミステーキを食べて昼を済ました。2千円近いランチとなったが、福岡行きを我慢したのだからこれくらいの贅沢は許容範囲だ。
●先発出場選手
🔵🔴#STARTINGXI #TokyoFukuoka
— FC東京【公式】🔜4.21大分戦(A) #LIFEwithFCTOKYO (@fctokyoofficial) April 17, 2021
vs #アビスパ福岡
スターティングメンバーが発表されました!!🔵🔴@DAZN_JPN でともに勝利の喜びを!!🔵🔴
▶️https://t.co/A7rpBDJYNH#LIFEwithFCTOKYO#fctokyo #tokyo pic.twitter.com/RsoKSNJW0b
まず驚いたのが、メンバー発表の時間だった。
慣例では「2時間前」がその目安となっているが、この試合で東京側が発表したタイミングは「2時間15分前」だった。
Twitterでこのツイートを見かけた時、あまりに早いものだから「今日の試合は13時キックオフだっけ?」と焦って確認したほどである。
どうやら福岡サイドの発表が早く、東京もそれに追従したようだが、タイムライン上の福岡サポも自分と同じように焦っていたので、いつものことではないようだ。きっとスタッフも気合が入っていたのだろう。
さて、本題のメンバーである。
右サイドバックに岡崎慎を起用。中村拓海がベンチに入っている。
この起用法に関してSNSでは一部から「中村拓海への懲罰起用だ」などとの声があったが、戦術的な起用だろう。
4−4−2で両サイドにストロングポイントがある福岡に対して、川崎戦で自身を失いかけている守備にテコ入れをし、本来の守備への自信を取り戻させたかったのではないかと感じた。
更に、中村帆高の全治6ヶ月の怪我がこの試合の翌日に公式発表されたが、このタイミングでチームスタッフは把握していたはずである。
そのため、右サイドバックの人員が不足する中、岡崎慎がその代役として機能するかどうか、見極めに起用したという見方もできるだろう。
室屋の移籍前はリーグでも屈指の層の厚さだったが、今は東京のアキレス腱となっている。
今季、札幌へ完全移籍をした右サイドバックの「柳貴博が居ればな」と思わずにはいられない。
出場停止から復帰の渡辺剛、オマリがセンターバックに入ったことで森重がアンカーで起用され、その両脇を東と三田で固める。
前線にはディエゴ、前節好調だったアダイウトン、田川が入った。
🏆明治安田生命J1リーグ第10節🏆#アビスパ福岡 🆚 #FC東京#ふくやDAY
— アビスパ福岡【公式】 (@AvispaF) April 17, 2021
🕑14:00KO 🏟#ベススタ
FC東京戦のメンバーが発表されました🐝
勝利に向けて熱い応援をよろしくお願いします‼️
J1、J2、J3【全試合】中継 DAZN独占#DAZN 加入&視聴はこちら➡️https://t.co/394EELsEUm#avispa #行こうその先へ pic.twitter.com/JnUIqQqYQO
対する福岡の注目選手は、何と言ってもボランチの田邉草民。古巣対決での先発出場となった。
そして右サイドバックのサロモンソンと、同じく右サイドの金森。
小川とアダイウトンとの同サイドでの主導権争いが期待された。
●前半
15分、東京に決定機が訪れる。
アダイウトンからのスルーパスにディエゴが反応、福岡のCBグローリーと競り合いながら抜け出しGKとの一対一。ディエゴは左足でゴールを狙うも、福岡のGK村上に触られてゴールポストに。
試合全体を通してディエゴとグローリーは激しくマッチアップをし続けたが、上手く出し抜けたシーンは序盤のこの一本のみだった。
以降は、21分の場面などを筆頭に、前を向かせてもらえないことが増える。
22分、今度は田川にチャンスが訪れる。
ペナルティエリア中央、後ろ向きでボールを受けて反転。力強く持ち込み角度のない深い位置からシュートを放った。
枠は捉えなかったものの、動きのキレを感じさせた。
それ以降の観戦メモは以下のようになっている。
36分、左からのクロスに対して児玉が目測を誤る。ファーに流れたボールに対して飛び込んだ金森がダイレクトでシュート。児玉がかろうじでクロスを触っていたため軌道がわずかにずれた結果、ボールは枠から外れた。
37分、東京の速攻からディエゴがGKと一対一となるも、ドリブルが大きくなりシュートを打てず。
38分、小川のファーへのクロスから田川が潰れて、折返しとなったこぼれ球に詰めたディエゴが鋭いシュート。福岡のGKがナイスセーブでしのぐ。
46分、児玉の無回転気味のゴールキックに福岡の右SBサロモンソンが目測を誤り、アダイウトンが受ける。左サイドへドリブルで持ち出してCKに。
48分、田川が東からの緩いクロスに対して相手DFと競り合い、反転しながらアウトサイドでシュート。その競り合いでファールを取られる。
●ハーフタイム
前半は0−0で終了。
チャンスを多く作り出したのは東京だった。
スタッツでは全体の攻撃に占める左サイドからの組み立てが「75%」という驚異的な数値を記録。
東京はアダイウトン、小川をストロングポイントとしてサロモンソンを抑え込むという戦術には成功しており、後は先制点を決めるだけだった。
また、左サイドを中心に組み立てを行うことで、ボールを奪われた際の即時回収にも繋げられていた。
右サイドバックに普段は起用されていない岡崎慎へ圧力をかけさせないという方策にも効用を発揮し、全体的に安定感があった。
しかし、前半で先制点を取れないと厳しくなってきたのがこれまでのFC東京であった。今節は得点力を爆発させてひっくり返してきたが。果たして。
●後半
50分から、東京が福岡のライン間、相手選手と選手の間でボールを受けられるようになり、パスがスムーズに回っていた。
比較的右サイドでよく繋ぐことの出来ている印象だった。
しかし、53分や55分には福岡のゴール前まで形を作るものの、どちらもオフサイドとなった。
こちらのパス回しに対しても福岡がラインを下げすぎず、我慢して間を詰めて対策をしたということだろう。
その直後には、福岡に決定機が訪れる。
56分、グローリーの右サイド奥へのフィードから選手二人でタメを作られ、ゴール前へのクロスを上げられた。ファーから飛び込んできたFWの山岸に対してマーカーの岡崎は絞りが間に合わず、あわや失点という形を作られた。
57分、更に攻め立てられた東京は先制を許す。
敵陣深くから仕掛けたプレスを剥がされ、中央で2本のパスを通される。左サイドでFW山岸からオーバーラップしてきた左SBの志知にボールが渡り、チェックに行った三田と入れ替わる。
中へグランダーのクロス、田邉草民が落とし杉本がシュート、跳ね返ったボールに田邉草民がシュートを打ち、ゴール前に居たブルーノ・メンデスが詰めてゴールとした。
志知の鋭い突破とボランチを含め大人数がゴール前に入ってきた福岡の波状攻撃を止められなかった。
何より田邉草民はゴール前で前向きの選手へ正確にボールを落とし、そのこぼれ球への反応も良く、得点を生み出した要因となっていた。
この後にもCKのこぼれ球からシュートを放つなど、計3本右足を振り抜いた。古巣相手に成長した姿を見事に見せつけた格好だ。
その後、東京は永井、内田、レアンドロを一気に投入するなど攻勢に出ようとするが組み立てに終始苦しんでいた。
対する福岡の左サイドでは攻守に渡って志知が躍動し、東京は攻略の糸口を見い出せなかった。
75分、その志知が再び得点機会を演出する。
左サイドからインナーラップした志知がサイド深くからグラウンダーのクロスを供給。ダイレクトでFW山岸がシュート。これは児玉がセーブし、こぼれ球に詰めた右SBのサロモンソンにボレーシュートを打たれるも、カバーに入った渡辺剛がライン上でヘディングしクリアした。
福岡のゴールへの組み立ても見事で、それに対する東京の守りも失点を防ぐというボールへの執着が感じられた。とても見ごたえのある攻防だった。
94分、同点を目指す東京がパワープレーを仕掛ける。
レアンドロの右CKから生まれた混戦から小川諒也が左足でニアを狙った強烈なシュートを打つが、ボールはポストに直撃した。
決めれば「さすが日本代表」と褒めそやされる一撃。
思い切りとシュートの威力は十分。素早い判断だった。
そして試合終了。0−1で敗戦となった。
●試合終了
左サイドを攻略した前半と、右サイドを攻略された後半。
「先制点を取れていれば」は東京の敗戦時に用いる常套句になりつつあるが、まさにそんな試合だった。
そして今季も「いい人トーキョー」が炸裂してしまった。
昇格組の福岡に対して自信を付けさせるような渾身の1試合。田邉草民も会心の出来で、志知に至っては今後のブレイクスルーのきっかけとなりそうなパフォーマンスだ。
川崎戦のような試合後では得てしてチームはバランスを崩しがちである。
福岡戦ではそこまで顕著ではなかったが、後半の中盤以降は前線と守備陣の意思疎通がイマイチでライン間が大きく空いてしまっていた。
4月21日のルヴァン杯では、選手を入れ替えながらこれまでのスタイルを取り戻してほしい。
J1リーグでの次節は4月24日の第12節vsサガン鳥栖。
無敗の名古屋を倒した難敵に走り勝ち、今後のシーズンを走り抜く自信としたい。
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