FC東京を振り返る(2021年第11節vs鳥栖)
長年サポーターをやっていると、思い出したくない試合・シーズンは無数に存在している。
例えば降格したシーズンや、監督が解任される直前の試合。
そうした雰囲気が漂っているスタジアムの諦めムード。
試合に勝利した喜びとは裏腹に、敗北は尾を引く。
ここ数試合はそんな「思い出したくない記憶」に分類されている。
よって振り返りが遅れた。
勝っていれば筆が進むが、負けたら進まない。
執筆時点は、第13節のアウェイ鹿島戦の直前である。
なかなか難しい心境であることは、お察しいただけると思う。
●試合前
試合開催日は4月24日の土曜日。
その直前には、GWを対象とした緊急事態宣言の発令が政府より発表され、4月25日以降はスポーツ・劇場・ライブなどの無観客開催が要請された。
そんな状況下での開催であり、再びスタジアムへ入場できない日々が続くことを覚悟した自分は、青赤パークで暴飲暴食を敢行した。
「この一口がFC東京を支えている」
「この一杯がFC東京の役に立つ」
こう信じて疑わなかった。
そして、普段は通り過ぎるコンコースのグッズ売り場へ突入し、
「このハンカチを買うことでスタッフが助かる」
財布を見ずにクレジットカードで購入した。
結果、試合開始直前まで食事は継続され、スタジアムに『You'll never walk alone』が鳴り響く間も咀嚼を繰り返す羽目となった。
●先発出場選手
引き続き4−3−3を選択し、アンカー森重を継続。
中村帆高離脱後に安定しない右SBには岡崎慎を据えた。
前線は、永井・アダイウトン・ディエゴというパワフルな面々。
●前半
「長谷川トーキョー」はどちらだろうか。
球際、攻守の切り替え、ファストブレイクといった全てにおいてお株を奪われていた。
前半17分。試合が動く。
鳥栖FW酒井に右クロスを合わせられ、失点。
前半33分、流れを取り戻せないまま加点を許す。
自陣からのビルドアップ、アンカー森重にボールが渡る瞬間を狙われ相手にボールが渡る。
その直後の切り替えが遅く、右サイドの鳥栖FW樋口がボールを持ち込みミドル一閃、ゴールネットへ突き刺さった。
その樋口への寄せも遅く、左SBの小川、東はフリーでシュートを打たせてしまった。
前半39分、試合は動かないが小川に事件が訪れる。
競り合いの際に、相手の肘が顔面に入り前歯が吹き飛んだ。
試合後に差し歯を入れた様子が公式Twitterより報告されている。
●ハーフタイム
全くいいところがなく、全ての面で良さを感じられない前半だった。
ハイライトを見ても決定機はゼロ。
観戦途中も、シュートまで持ち込めた記憶がほとんど残っていない。
これまで失点を重ねているせいもあるだろうが、最終ラインの押し上げがなく、前にプレスのスイッチを入れる永井の動きに連動できていない。
全体が間延びしているのは、川崎戦以降の特徴である。腰が引けてしまっている。
おそらくラインコントロールを担っていた渡辺剛が前半限りで交代したのも納得がいく。彼1人のせいではないが。
●後半
後半スタート時点から、岡崎に代えて内田、渡辺剛に代えて青木を投入。
森重を最終ラインへ下げ、青木をアンカーで起用することで、本職がアンカーポジションを務める形となった。
この起用により、後半開始直後より鳥栖を押し込むことに成功する。
後半7分、東京が1点を返す。
小川の左コーナーキックから、森重が合わせて得点。
個人的な思いだが、左コーナーキックは小川の精度が圧倒的に高いように思う。
右CKで東や三田が担当するのは理解できるが、左CKで小川に固定しないのはなぜだろう。
おそらく、カウンターに備えた場合に小川が最終ラインに居ないと怖いという監督の意図だろうが、合わせやすいボールの質といった観点から考えるとレアンドロや東、三田よりも上であるように感じる。
それ以降は、森重を中心に鳥栖の攻撃に蓋をし続け、ビルドアップでも勢いが出ていた。
例えばこのシーンでは、森重の読みでカットした直後、前線の永井、ディエゴの連携でシュートまで持ち込んでいる。
アンカー森重では生まれない利点がここにあり、ボール奪取時に森重が前を向いていることが肝要である。
この選手はフィード能力が図抜けており、最終ラインからでも正確に前線へボールを供給できる。
アンカーに位置してしまうと、この状況であれば最終ラインのCBから後ろ向きで一度ボールを受け取り、前に向き直してからフィードを蹴る必要がある。
そうすると、少なくとも2タッチ分プレーが遅れる。その時点では前線へのスペースはなく、逆に間を詰められボールロストのリスクが大きくなる。
森重をアンカーで起用するメリットよりも、森重を最終ラインで起用しないことのデメリットが大きすぎる。
昨シーズンは過密日程で苦しむ東京において、圧倒的なパフォーマンスを見せた森重。
ACLやルヴァン杯決勝でアンカーが成功したことから、今シーズンもメイン戦術として扱われていたが、彼はやはりセンターバックが天職だ。
●試合後
右SBの駒不足に悩む東京において、内田のコンバートは嬉しい発見であった。
それまでウイング、センターハーフなど、途中出場で監督が期待するタスクに概ね答えることができていた。
特に勝っている場面で投入された場合の守備への貢献は素晴らしく、スピードを持ってプレスをし、ボールを奪取すれば持ち前のテクニックを使ってドリブルで前へ運ぶ。そしてボールを失わない。
負けている時の打開はほんの少しの改善点であるが、それでも川崎戦でゴールを奪ってみせた。
彼のポジション適正として、ここまで右SBがヒットするとは思わなかった。
スルスルと抜け出すドリブルが持ち味で、U23では度々見せていたが、トップチームではそれを見せることは少なかった。
ファイターとしての守備面に着目された今、そのドリブルを織り交ぜ攻撃での組み立てに多く絡めるようになればレギュラー奪取が見えてくる。
最終ラインに戻った森重と、そこに加わった内田へ希望を託し、今回のまとめを締めることとする。
次節は、5月1日にリモートマッチとして開催される横浜Fマリノス戦。
もはや味の素スタジアムで開催する理由がよく分からないが、お上に従うより仕方がない。
たまにサポートをいただけるのですが、あまりにも申し訳ないのでお題のリクエストなどを併せていただけるとありがたいです。もちろんなくても大丈夫です!読んで頂きありがとうございます。