これでいいのか:「案内過多の世界」
日本の英語を考える会のnoteでも紹介されている内容について、改めて皆さんで考えてみませんか?
それは、記事に出ている個別案件のことではありません。
まずは、これをご覧ください。
[男性トイレだけの表示]
一歩前へ;もう一歩前進してください
これは、日本でしかみられないメッセージです。
さらに、この日本にしかない注意事項を、無理やり英語や中国語などにしてトイレに書かれているのですが、その英語がまたおかしいものばかり(他の記事に写真と共に記載)。
[東海道新幹線]
Ladies and gentlemen, we will arrive at Tokyo terminal in a few minutes. Passengers going to the Chuo,Yamanote, Keihintohoku, Tohoku, Takasaki, Joban, Sobu and Keiyo lines or to the Tohoku, Joetsu and Hokuriku shinkansen trains or to subway lines, please change trains here at Tokyo terminal. Thank you.
これは東海道新幹線が東京駅へ到着する時の、英語のアナウンスです。黒い字はすべて日本語です。訪日外国人が、いったいどれだけこの○○線というものの認識をしているのでしょうか。あるいは東京へあまり行ったことがない日本人の地方出身者は、どのくらいこれを認識できるのでしょうか。
今回の記事で何を言いたいのか。
それは日本ではアナウンス、案内、注意事項が多すぎることです。韓国、中国、シンガポール、タイ、アメリカ、メキシコ、フランス、ドイツ、スペイン、イギリス、イタリア、スイス、ルーマニア、ブルガリア、カナダ、モロッコ、エジプト、イスラエル…。いったいどこの国で、自動アナウンス以外に車掌や運転手が追加で、直にマイクを握って話しているでしょうか。
・傘の忘れ物が多いから忘れるな
・ホームと電車の隙間が広いところがある
・優先席付近で携帯はオフにせよ
・リュックは前に持て
こんな注意をする国は、日本以外で聞いたことがありません。マクドナルドのコーヒーが熱くて火傷をしたといって訴訟を起こし勝ってしまう「あの訴訟王国」でさえ、こんなにくどくどと案内放送が流れることはありません。ニューヨークの地下鉄でも、ロサンゼルスのバスでも、間違える方が悪い。ミスをする方が悪い。それはそうなのです。事業者のミスではないのです。
しかし日本では、注意喚起をすることが美徳なのか、注意喚起をすれば「ほら事前に言ってるじゃないか」とクレーマーに言い返せるからなのか、とにかくあーしろ、こーしろというアナウンスが多すぎます。
さらに東京のJRに乗っていると、「1分遅れてしまいました、大変申し訳ございません」と車掌さんが案内放送をしてくれる。1分で、です。
JALやANAに乗っていると、出発や到着が5分遅れただけで、
「お急ぎのところ、大変申し訳ございません」
と客室乗務員のアナウンスが流れてくる。
これは「優しさ」なのか、「責任逃れ」なのか。
こんなことを続ければ、それに甘やかされた客がさらに苦情を言うようになるのだと、なぜ思えないのだろうか。1〜2分遅れて鉄道会社や航空会社が「謝罪」?なぜ?そんなのは織り込み済みではないですか?
アメリカの空港へ行って出発時間を見ていたりすると、1:16分発とか、8:22分発とかになっている。1:15や8:20にすればいいじゃないか、と思えます。しかもほとんどの場合その時間より遅れるか、あるいは早まっています。
謝るどころか、何も言いません。通常の搭乗アナウンスのみ。
飛行機が遅れて到着、それもそれなりの遅れなのに、ねぎらいの言葉も次の乗り継ぎ便についても、一切何も言わず、降りたら係員に聞いて…という通常のアナウンスのみなされます。
傘を忘れた?
電車に乗るときに段差で転けそうになった?
そんなの客側の勝手。客の事情ではないですか。
新幹線の例に戻してみますが、自動アナウンスの後に、最近車掌が追加で同じようなことを繰り返しカタカナ英語でちらっと言いますが、あれも無意味。デッキ手前の電光掲示板に出口はどっちか表示されています。
先日ラジオで、フリーアナウンサーの小島慶子さんと武田砂鉄さんも同じようなことをおっしゃっていましたが、とにかく日本は「アナウンスの嵐」です。
その日本にしかない習慣を英語で外国人に伝えようとしたって、伝えられる方としては「いったい何事?」としか思えません。
また、最近は日本人も外国人も、多くがイヤホンをしたりしてアナウンスを聞いてもいないし、訪日外国人ほぼ全員がスマートフォンを持っている(特に今の時期は訪日外国人向けのコロナ・アプリも入れていなければいけないし)のだから、わざわざ音にして情報を垂れ流す必要は全くないのだと思います。
ちょっと長くなりましたが、まとめるとこうです。
・不要なアナウンスが多すぎる日本
・日本だけの習慣を無理やり外国語にして伝えようとしている失敗
・「客」を"幼稚園児"だと思っている企業、案内や注意喚起をすることで逆にクレーマーを増産させている
日本に存在する間違った英語表記は山のようにありますが、中には、英語でそんなこと言わない!ということまでWeb翻訳を使って訳してしまっているので、読む側は返って「?」になっているのです。
各企業、自治体担当者の方は、溢れかえっているアナウンスは、「優しさ」ではありません。単なる責任逃れです。そんな往生際の悪いこと、利用者(客)側をある意味バカにしたようなアナウンスやその翻訳は、もうやめませんか?
もちろん、フランスの国鉄に乗っていて、いきなり運転打ち切りになったことがあり、何もアナウンスがなくどうしていいかわからないとか、ニューヨークのJFK空港へいくはずの電車が急に運休になり、どうやって向かったらいいか分からなくて困ってしまった時は、アナウンスあったらいいな〜とは思いましたが、逆にそこでYou should take a shuttle bus departing xxx in front of xxx hotel ….などと言われてもパニックになりますが。
皆さんはどう思われますか?1分遅れて車掌に謝ってもらいたいですか?あんなにしつこく注意喚起をするのに、停電で新幹線が止まって復旧の見込みが立たないときに「復旧の見込みがたっていません」と延々20回も放送されることの方が気分が良いのですか?(しかもその時、英語ではアナウンスが全くなされなかったそうです)
外国の現地ガイドさんに言われたことがあります。
「日本のお客さんって幼稚園児みたい。こっちがいちいち彼らの行動を言ってあげなきゃいけない」
おっしゃる通りです。