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【まとめ】国立国会図書館個人送信サービスで読める世界史の一般書

  • 国立国会図書館デジタルコレクション個人送信サービスで読むことのできる、世界史をテーマにした一般向け書物(一般書)を採録した。
    ここでいう「一般書」はかなり広義にとらえている。歴史学の専門家の記した人文的な書籍に必ずしも限定していない。歴史を切り口とした時事論評史論についても広く「世界史の一般書」とみなし、筆者のいうところの「ニッポンの世界史」形成への寄与を踏まえ、できる限り採録しようという考えによる。

  • 年代は刊行年を示す。

  • 1950年代以前は採録していない。1945〜1950年代には教科書検定制度以前のいわゆる「準教科書」や戦中・戦前にはかなわなかった社会主義的な書籍が多いく刊行された。これらは戦中・戦前期の書籍を含め、また別の機会に整理する。

  • なお、児童書や歴史教育関係の書籍は上原専禄『日本国民の歴史』を除き含めていない。シリーズものの概説書も採録しなかった。また、1970年に増加するオカルト系の超古代史本は採録しなかった。「日本史」と銘打つものや社会学、人類学的な見地から書かれたものについては、世界史的な視野をもっていれば一覧に含めた。

  • 共著・共編著などの場合は、筆頭者あるいは重要とみなした著者の項目に分類した。

  • リスト内の書籍はあくまでNDLデジコレで閲覧可能なものに限られている。これだけをもって動向の全貌をとらえようとするものではない。

  • 随時、追加する(初版は2024/10/17時点)


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1960年代

この時期にはある程度定型化された検定教科書が整っていったこともあり、世界史の手引きや概説書の刊行は1950年代に比べ盛んではなくなる。それでも受験向け、高校生・夜間中学通学社向けの参考書が多くなったほか、新書1冊で世界史をコンパクトに総まとめする一般書(西村貞二『教養としての世界史』)や三浦一郎に代表される「こぼれ話」系の本も人気を博した。


浅野晃

・浅野晃 著『少年少女世界史物語』1,偕成社,昭和43. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1654892
 解題「歴史学者と児童文学者の協力で正しい歴史の知識を興味深い読物として教える」(全6巻)。戦後初期の世界史イメージを知るのにうってつけのシリーズ。たとえば2巻(https://dl.ndl.go.jp/pid/1627670/1/86)には「左手にコーラン右手に剣—アラビアの預言者マホメット」、「びっこのティムール」、4巻の「金の島・銀の島の発見—コロンブスの新大陸発見」など、その後学校世界史・受験世界史で語り継がれるエピソードの多くがおさめられている。なお、同様の企画はほかにも数多くある。


飯塚浩二

・飯塚浩二 著『東洋史と西洋史とのあいだ』,岩波書店,1963. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3006675
 名著。



上原専禄

・上原専禄 編『日本国民の世界史』,岩波書店,1960. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3017516
 上原専禄については、こちらに位置付けたことがある。


高坂正尭

・高坂正尭 著『世界史を創る人びと : 現代指導者論』,日本経済新聞社,1965. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2988089 (参照 2024-10-17)
 高坂正堯については1980年代を中心とする内容だが、こちらで位置付けたことがある。

河野健二

・河野健二 編『世界史入門』上,三一書房,1961. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2971059

辻静雄

・辻静雄 著『舌の世界史 : ラーメンからキャビアまで』,毎日新聞社,1969. 国立国会図書館デジタルコレクション  テーマやモノを1つ挙げ、お題に沿って世界史を語るものとしては比較的早いもの(参考:国内の著作として他に先行するものとして『音楽の世界史』(1960)、『エロティシズムの世界史』(1966)、『演劇の世界史』(1966)がある。のちに中公新書から『ワインの世界史』(1975)、『茶の世界史』(1980、刊行中)と続く)。


西村貞二

・西村貞二 著『教養としての世界史』,講談社,1966. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2974406 (参照 2024-10-17)


フォークト,J.

・J.フォークト 著 ほか『世界史の課題 : ランケからトインビーまで』,勁草書房,1965. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2976449
 フォークトの本書は世界史論として、かつてかなり読まれたもの。


松田寿男

・松田寿男 著『東西文化の交流』,至文堂,1962. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3006663


三浦一郎

・三浦一郎 著『クリオの微笑 : はみだした世界史』,学生社,1962. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2973773
・三浦一郎, 山口修 共著『世界史のナゾ』,毎日新聞社,1966. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2974405
 三浦一郎(1914〜2016)は世界史(特に西洋史)をネタとした「エッセイ」「エピソード」の分野での戦後における功労者。
 すでに1955年には、以下を刊行し、続編も執筆。角川文庫にも収録されるベストセラーとなった。
・三浦一郎 著『世界史こぼれ話』,学生社,1955. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2932526 (参照 2024-10-18)

三上次男

・三上次男, 秀村欣二, 関野雄 編『あなたの世界史 : 文明の起りと古代の世界』,学生社,1961. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2974080
 1950年代に刊行された『眼で見る古代の歴史』(学生社)を新書向けに再編集したもの。


ロストウ,W. W.

W.W.ロストウ 著 ほか『経済成長の諸段階 : 一つの非共産主義宣言』,ダイヤモンド社,1961. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3009611

ロストウ(1916〜2003)はアメリカ合衆国の経済学者で、1961〜69年までケネディ大統領、ジョンソン大統領のもとでの政策ブレーンとなった人物。
本書で経済成長が①伝統的社会、②離陸の準備、③離陸、④成熟への前進、⑤大量消費社会の5段階で進歩していくとし、貧しさを抜け出すための適切な処置を施せば、途上国は社会主義に向かうことなくアメリカ型の消費社会に発展(「離陸」=テイクオフ)していってくれるはずだと主張しました。欧米の近代化に欠けた部分を途上国に見いだす考え方を「近代化論」といい初期の開発援助の典型的な前提となります(むしろ、同様の発想は現在の開発援助にも見られます)。なお、社会は5つの段階を経て豊かになっていくというロストウの説は、スターリン時代のソ連で確立された、社会主義に至るまでの発展段階論(原始家父長制→奴隷制→農奴制→資本主義→社会主義)を強く意識したものでもありました。



1970年代

従来の「発展段階論」的・西欧中心主義的な世界史叙述から距離を置き、新しい視点によって世界史を再編成しようとする著作が目立つようになる。


秋間実

・秋間実 著『人類史への散策』,新日本出版社,1977.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12241545
 マルクス主義研究者。「人類の歴史に関心をよせる一哲学者による歴史談義」とのこと。


飯塚浩二

・『飯塚浩二著作集』2 (東洋史と西洋史とのあいだ・世界史における東洋社会),平凡社,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12148828
 『東洋史と西洋史のあいだ』は1963年の著作。


石毛直道

・石毛直道 編『環境と文化 : 人類学的考察』,日本放送出版協会,1978.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12144931
 のちに『食事の文化論』(1982)、『梅棹忠夫著作集』編集に関わる。

太田秀通

・太田秀通 著『世界史認識の思想と方法』,青木書店,1978.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12144398

黒羽茂

・黒羽茂 著『世界史の構造』,南窓社,1978.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12185853

香内三郎

・香内三郎 著『5W1Hの知的世界史 : ジャーナリズムでとらえた時代の流れ』,情報センター出版局,1979.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12277853
 香内三郎(1931〜2006)は社会学者。ギミックのある世界史論としてはかなり早い段階に位置付けられると思う。この手のものは西洋史偏重が多いが、東西のバランシングに留意し、エピソードの羅列の感はいなめないが、コンパクトに「メディア(ジャーナリズム)の世界史」を編もうとしている。

  • 目次

  • 1章 言葉と文字が人間の文化を変えてゆく BC5000-AD1430

  • 2章 活字万能時代の幕があがった 1451-1775

  • 3章 読む者がいるから伝える者がいた 1776-1868

  • 4章 「新聞」が歩き始めた巨大資本への道 1869-1917

  • 5章 文化革新の波動にラジオが登場する 1918-1929

  • 6章 裏切られたマス・メディアへの期待1930-1945.8

  • 7章 メディアに熱い希望がかけられた 1945.9-1954

  • 8章 日常化したマス・コミュニケーション 1955-1964

  • 9章 メディアと人間の関係を洗い直す 1965-1979

 近年の書籍でいえば田中靖浩『会計の世界史』(2018年)のように、あるお題に沿って自在に歴史を紐解く、そんな現在のよくある世界史一般書の原型ともいえるのではないか。


古賀守

・古賀守 著『ワインの世界史』,中央公論社,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12100378
 中公の看板商品となる "モノ"の世界史の走り。


謝世輝

・謝世輝 著『新しい世界史の見方』,講談社,1972. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12176851

・謝世輝 著『世界史はどう見るべきか : その5つの要点』,大和出版販売,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12178196


竹内好

・竹内好 著『状況的 : 竹内好対談集』,合同出版,1970. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11924766
 竹内の著作のなかでも特に読みやすく、世界史のなかに現代のアジアをとらえようとする議論を多く収録。


成瀬治

・成瀬治 著『世界史の意識と理論』,岩波書店,1977.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12148657

ファーキス,ビクター C.

・ビクター C.ファーキス 著 ほか『テクノロジカル・マン : 《来るべき技術文明とシームレス社会》の人類史的考察!』,サイマル出版会,1973. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12126042

フォークト,J.

・J.フォークト 著 ほか『世界史の課題 : ランケからトインビーまで』,勁草書房,1976(再版). 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12144422

藤原肇

・藤原肇 著『石油危機と日本の運命 : 地球史的・人類史的展望』,サイマル出版会,1973. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12023986

増田四郎

・増田四郎 編『西洋と日本 : 比較文明史的考察』,中央公論社,1970. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12208703

リントン,ラルフ

・ラルフ・リントン 著 ほか『人類学的世界史』,至誠堂,1976.10. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12141312 (参照 2024-10-17)

 

その他

・『人類文化史』2,講談社,1974. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12177269






1980年代〜


梅棹忠夫

・梅棹忠夫 編『文明学の構築のために』,中央公論社,1981.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12145898
 文明学、比較文明学にについては、また別に論じることとしたい。

江上波夫

・江上波夫・松田壽男・杉山二郎著『世界史の新視点 : 学問・略奪・探険』,六興出版,1981.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12178082
・江上波夫, 伊東俊太郎 著『文明移転 : 東西文明を対比する』,中央公論社,1984.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12141520
 この2冊とも、おすすめのエッセイ。
 歴史を切り口にしながら専門家同士が奔放に対談・鼎談するスタイル。

江口朴郎

・江口朴郎 著『世界史における現在』,大月書店,1980.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12142020
・江口朴郎 著『世界史の現段階と日本』,岩波書店,1986.4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12177939

大谷瑞郎

・大谷瑞郎 著『世界史のなかの日本史像』,亜紀書房,1981.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12206212

河合信和

・河合信和 著『400万年の人類史 : ヒトはいかにして地球の主になったか』,光文社,1983.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12712159 (参照 2024-10-17)


河野健二

・河野健二 著『世界史への招待 : 歴史のサイクル構造』,大阪書籍,1985.4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12177393

木村光伸

・木村光伸 著『人類史の構図』,晃洋書房,1984.4. 国立国会図書館デジタルコレクション  人類学の成果や展望を整理したもの。

堺屋太一

・堺屋太一 著『現代を見る歴史』,プレジデント社,1987.9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12142513
  世界史を引き合いに出して、大きなスケールで文明論を語るのみならず、これまで戦国武将や宋名臣言行録でやっていたような人物評を、これまであまり言及されなかったような人物をとりあげたり、現実の国内外の政治・経済のアナロジーを駆使してわかりやすく語る。
 こうした世界史の教養と文化の違いを踏まえた戦略的な発想を備えてこそ、ビジネスの荒波を乗りこなすことのできる「国際的日本人」となれるのだというメッセージは、まさに2020年代の「ニッポンの世界史」の1ジャンルとして脈々と受け継がれているといえる。


坂梨靖彦

・坂梨靖彦 著『生存と繁栄を求めて : 世界史からの提言』,協和協会出版部,1984.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12017959

渋谷寿夫

・渋谷寿夫 [ほか]編『人間生存の危機 : 地球史の中で考える』,法律文化社,1984.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12136059

ツァンダー,H.C.

・H.C.ツァンダー 著 ほか『西洋史こぼれ話』,社会思想社,1984.3. 国立国会図書館デジタルコレクション  浴槽のナポレオンからパナマのサボテンの後ろに隠れたフランシス・ドレークまで。

浜林正夫

・浜林正夫 著『民主主義の世界史 : 「殺しあい」から「話しあい」へ』,地歴社,1993.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12754760


松本健一

・松本健一 著『「世界史のゲーム」を日本が超える』,文芸春秋,1990.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12717392
 1990年代の一連の著作『日本がひらく「世界新秩序」』徳間書店( https://dl.ndl.go.jp/pid/12759167 )に連なる著作。岸田秀との対談「ジャパン・バッシングの深層構造」などを収録し、いわゆる「第三の開国」にあって、世界史の流れに関連づけて日本の針路を提言する。要するに現在ひろく見られるスタイルを先取りしている。

三浦一郎

・三浦一郎 著『世界史のなかの女性たち』,社会思想社,1985.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12258536  

村松剛

・村松剛, 勝田吉太郎 著『一つの時代の終りに : 世界史のなかの近代日本 対談』,日本教文社,1986.1. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12228146


森本哲郎

・森本哲郎 編『黄金帝国の謎 : インカ・アステカ・マヤ 驚異の世界史』,文芸春秋,1986.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12185769
・森本哲郎 責任編集『世界知の旅』1,小学館,1987.1. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12159668
 森本哲郎(1925〜2014)は元・朝日新聞記者で、世界各地の遺跡・史跡をめぐり内省的な紀行文・評論で人気を博した。

 1980年代末に刊行された『ある通商国家の興亡』(1989)は、日本におけるローマ=アメリカ言説のネタ元としても重要な位置を占めることになる。


安田喜憲

・安田喜憲 著『環境考古学事始 : 日本列島2万年』,日本放送出版協会,1980.4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12209578


山内昌之

・山内昌之 著『世紀末のモザイク : 民族から読みなおす世界史』,毎日新聞社,1994.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12759487

山崎正和

・山崎正和 著『文化開国への挑戦 : 日本の世界史的実験』,中央公論社,1987.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12239080

渡辺京二

・渡辺京二 著『なぜいま人類史か』,葦書房,1986.10. 国立国会図書館デジタルコレクション  真宗寺における「人類史講義」の文字起こしなどを所収。






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みんなの世界史
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