軽井沢で日本型インタープリターに出会う
保護・保全が重要視される自然遺産においては、動物、植物、人間が互いを理解し、尊重し、共存することが最も大切だ。
これまで、1984年に世界自然遺産に登録された米国カリフォルニア州ヨセミテ国立公園が発祥と言われる「インタープリター」の存在に注目してきた。
日本ではあまり馴染みがないが、彼らの活動は、生態系を理解し、自然との共存のために何が必要かをネイチャー・ツアーという体験を通して、楽しみながら学ばせてくれるもの。アメリカを中心に、世界的に取り組まれているエキスパート集団組織である。
今回、星野リゾートの厚意により、星のや軽井沢に隣接する『Wildlife Research Center Picchio』の主催するネイチャー・ツアーに2日にわたり参加した。新型コロナウィルスにより世界的な緊張が続くなか、ヨーロッパからの訪日旅行者たちと共に英語ツアーに参加した。
ピッキオのツアーは、多言語に対応しているところもが素晴らしい。アメリカ人が米語でインタープリットするのとは違う意味で、大変奥深く、楽しむことができた。
それは、日本固有のアニミズムの世界の中で、古来より、そこに生きる人々と自然との共存から生まれたインタープリテーションの違いと感じた。(私の経験だが、米国や豪州における先住民のインタープリターツアーも大変興味深いものだ)
前夜からの降雪で身に染みる寒さであったが、素晴らしいインタープリターと、ベアドッグ(bear dog)の力を借りて、クマと人間の境界線を巡る共生の取り組みや森の動物達のナイトタイムライフなど、Wildlife の世界を深く探訪することができた。
最後に、丁重な説明を頂いた楠部様、ベアドッグの卓越した能力を教えて頂いた田中様、時間を忘れる楽しいインタープリテーションを体験させて頂いた森様、そして、星野リゾートとピッキオの皆様、心から感謝致します。
高橋政司
ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント
1989年 外務省入省。外交官として、パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2005年、アジア大洋州局にて経済連携や安全保障関連の二国間業務に従事。2009年、領事局にて定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。2012年、自治体国際課協会(CLAIR)に出向し、多文化共生部長、JET事業部長を歴任。2014年以降、UNESCO業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」など様々な遺産の登録に携わる。