証券アナリストが教える数式不要でROE理解
投資の勉強を開始すると、必ずぶつかる関門が、PER、BPS、ROEなどなどなど、
投資判断で重要と本に書いてある様々な指標だと思います。
そして、この指標、残念ながら、ほぼ全て何かしらの数式があります。
例えば、今回説明するROEなら、
当期純利益➗株主資本=ROE(株主資本利益率)
という式で計算されます。
単純な割り算なので、式自体の計算は小学生でもできるでしょう。
そしてROEの日本語訳は、株主資本利益率(自己資本利益率)ですので、
大人であれば、言葉の意味も何となく分かると思います。
文字通り、株主資本に対する利益率を表しています。
そして、利益率と言われるくらいなので、ROEが高い方がいいんだろうなということは理解できるでしょう。
一方で、式も言葉も覚えたのに、何となく本質の意味が理解できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
重要なのは、式や言葉を暗記することではなく、
ROE10%と見た時に、概念をフワッと体感で理解しているかどうかです。
数年前から、日本企業は、欧米企業に比べてROEが低いとか、ROEを経営者も投資家も重視すべきとか色々と騒がれています。
ROEだけで、一冊丸々語られた本も出版されています。
しかし、そんな本を一冊読んだり、式や言葉を覚える必要もありません。
今回、重要と語られているROEについて、数式を使わず簡単に意味が理解できるように解説します。
読んで頂ければ、ROEはある程度重要だけど、そんなに騒ぐ程、重要でもないんだということを理解して頂けると思います。
【ROE昔話】
ROEとは何かを、体感で理解できるよう日本昔話風にご説明します。
昔々、おじいさんが100円持っていました。
おじいさんは100円を、どこかに投資してお金を増やしたいと考えています。
そこに、隣村から、日本社長とアメリカ社長が会いにきました。
日本社長は、その100円を私の会社に投資してくれたら、1年間で、10円の利益を約束します。
110円に増やせます。と言ってます。
一方で、アメリカ社長は、その100円を私の工場に投資してくれたら、20円の利益を約束します。
来年には120円に増やせます。と言っています。
おじいさんは100円を効率よく増やしてくれる、アメリカ社長に投資しました。
めでたしめでたし。何のこっちゃ。。。。。
読者の皆様は、日本社長とアメリカ社長のどちらに投資するでしょうか?
勿論、おじいさんと同じく、100円を効率よく20円増やせるアメリカ社長ですよね。
単純に言えば、ROEとは、たったこれだけの話です。
ROEが高いということは、株主資本=投資家が投資した100円を、アメリカ社長のように効率良く増やせるということを表しています。
ここでは、日本社長のROEは10%、アメリカ社長のROEは20%です。
これは現実の日本企業とアメリカ企業の大まかなROE平均の差でもあります。
つまり、ROEが高い企業は、同じ金額を投資しても、効率よく僕達私達のお金を、沢山増やしてくれるんだなー、くらいの肌感覚が分かれば十分で、計算式を覚えたりする必要はありません。
仮に100円投資して、50円増やしてくれる、ROE50%の企業があったら、胸熱ですよね。
【借金には気をつけろ】
ROEは、上記の昔話のストーリーを理解出来ていれば十分です。
しかし、中級編というか、もう少し別の本質もあります。
上記の昔話だと、ROE平均が高いアメリカ企業がいいじゃんと思うかもしれません。でも、そうとも言い切れないのです。
昔話の続きに話を戻しますと、
爺さんに、高いROEを約束すると、また投資してくれるはずと、アメリカ社長は思いつきました。
すぐさま、爺さんに会いに行ったアメリカ社長は、
新しい会社を作るので、また100円投資してくれたら、今度は来年150円にしますと約束します。
驚愕のROE50%です。
爺さんは小躍りして投資しました。
半年経過した頃、アメリカ社長は困ります。。
50円増やすと約束したけど、100円の元手では、やっぱ無理。。。
50円増やすには、追加で、営業社員や設備投資が必要だ。。。
でも、爺さんから貰ったお金は100円だけ。。
営業社員を雇用したり、設備投資するには、追加で300円必要。。。
そんな、ある日、グッドタイミングで、闇金ウシジマ君が、300円貸しますよと電話してきました。すぐ借金したアメリカ社長。。。
そして、1年後、約束通り50円の利益を計上しました。
爺さんもROE50%を叩き出したアメリカ社長に大満足。
めでたし、めでたし。でも本当にめでたいでしょうか。
前回は爺さんからもらった100円だけで20円増やしたのですが、今回は、闇金ウシジマ君から300円も借りていたのです。
合計400円で50円を増やしただけです。
当然ですが、闇金ウシジマ君の高金利に苦しめられて、アメリカ社長の会社は途中で倒産して、元本の100円すらも戻って来ない可能性もあります。
ROEの計算は、他人の誰かからの借金は加味する必要がありません。
つまり、他人からいくらお金を借りていたとしても、ROE50%はそのままなのです。
もうお分かりだと思いますが、ROEが高い企業を、単純にリストアップして投資する行為は危険です。
借金の金額も確認しないといけません。
アメリカ企業は、見せかけのROEを高くするために、この他人から借金戦法を使うこともあります。
ROEを重視しているバフェットが、従業員と、借金が少ないROEの高い企業が好きと言っているのは、そのためです。
バフェットも、ただ単純にROEが高い企業が好きな訳ではないのです。
【最後に】
ROEについては、
儲かる企業ほど、株主資本の額がどんどん大きくなるので、高ROEをずっと維持するのは、非常に難しいというジレンマがあります。
高ROEを維持するため、株主資本を減らす目的で、自社株買いをしたり、配当を多くしたりする企業もあります。
上記のような論点もあるのですが、それこそ一冊の本になってしまうので割愛します。
そして、日本で騒がれているROEですが、正直なところ、私の知り合いの外国人投資家達は、指標として単純すぎるので、そんなに重視していません。
ここまで説明しといて、重視しないのかと怒られそうですが、それでも基本的な知識として、ROEの本質を理解していないと、投資本を読んで勉強しようにも、最初からつまずくことが多いと思います。
本noteを読んで、ROE◯◯%と見た時に、体感で何となく意味が理解できるようになっていたら幸いでございます。
他にも何か良いテーマがあればコメント頂けたら幸いでございます。
引き続き宜しくお願い致します。
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