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「世界はジャズを求めてる」2021年2月第1週(2月4日)放送分スクリプト(出演 村井康司) #鎌倉FM


M1  テーマ曲:What The World Needs Now Is Love / Stan Getz



こんにちは。「世界はジャズを求めてる」、第一週の進行役は、音楽評論家の村井康司です。
この番組は週替りのパーソナリティが、ジャズを中心としたさまざまな音楽とおしゃべりをお送りします。
さて、今年に入ってすぐにスタートしたこの番組ですが、今日で2ヶ月目、4組5人の進行役が一回ずつ出演したわけですが、みなさんいかがでしたか?
私たちは音楽評論を書いたり、ジャズの雑誌や本を編集したり、CDを制作したりラジオ番組を作ったりDJをしたり、という音楽の世界の仲間なのですが、それぞれとても個性的な面々です。番組もその個性がくっきり出ているんじゃないかな、と思っています。
番組の感想、リクエスト、メッセージなどを、鎌倉FMのホームページの送信フォームから送ってくださいね。お待ちしてます!

さて、今日の1曲目は、1月のわたしの放送で最後にご紹介したギタリスト、ケニー・バレルの「I Think It's  Going To Rain Today」です。ケニー・バレルは1950年代から活躍しているジャズ・ギターの第一人者ですね。今でも健在ですが、ここのところちょっと目立った活動がないみたいです。この曲はシンガー=ソングライターのランディ・ニューマンの曲で、さまざまなシンガーが歌っていますが、ジャズ・ミュージシャンのカヴァーは珍しいかもしれません。


M2   I Think It's  Going To Rain Today / Kenny Burrell


ケニー・バレルの「I Think It's  Going To Rain Today」でした。
ケニー・バレルはアメリカ・ミシガン州のデトロイトの出身です。実はデトロイトは音楽がとても盛んな町で、デトロイト出身のジャズ・ミュージシャンも大勢います。
ご存じかと思いますが、デトロイトは自動車産業で発展した都市です。フォードやゼネラルモーターズが工場を持ち、そこで働くために多くのアフリカン・アメリカンが南部から移住してきたんですね。ですので人工の黒人比率が非常に高く、ということはブラック・ミュージックも盛んになったわけです。

デトロイトのすぐ近くにポンティアックという町があり、そこ出身のジャズメン3兄弟がいます。ピアノのハンク、トランペッターで作曲家のサド、そしてドラマーのエルヴィンの「ジョーンズ3兄弟」です。

まず、ハンク・ジョーンズがリーダーで、弟のサド・ジョーンズの曲を取り上げている演奏を聴いてみましょうか。「Little Pixie」です。

M3  Little  Pixie/Hank Jones


ハンク・ジョーンズがリーダーの大編成バンドの演奏で、サド・ジョーンズの「Little Pixie」でした。
そして、ジョーンズ3兄弟の末弟が、ドラムスのエルヴィン・ジョーンズです。エルヴィンはジョン・コルトレーンのバンドに長く在籍して有名になったドラマー。コルトレーンの死後も、コルトレーンのようなタイプのサックス奏者をバンドに入れて、亡くなるまでコルトレーン的なジャズを演奏し続けました。エルヴィンがコルトレーンに捧げた曲「Dear John C.」をお聴きください。

M4  Dear John C./Elvin Jones



エルヴィン・ジョーンズの「Dear John C.」でした。この曲はコルトレーンの「インプレッションズ」という曲にそっくりですね。

デトロイト出身のジャズメンは他にもたくさんいまして、だったらデトロイト生まれのメンバーだけで作っちゃえ、というアルバムもいくつかあります。その中の1枚、『モーター・シティ・シーン』から1曲おかけしましょう。
メンバーはドナルド・バードのトランペット、ペッパー・アダムズのバリトン・サックス、ケニー・バレルのギター、トミー・フラナガンのピアノ、ポール・チェンバースのベース、そしてルイス・ヘイズのドラムスです。曲は、これもサド・ジョーンズの作曲で「Bitty Ditty」です。

M5 Bitty Ditty/Donald Byrd, Pepper Adams etc.


アルバム『モーター・シティ・シーン』から「Bitty Ditty」をお聴きいただきました。
さて、1950年代終わり頃になると、ブルースやジャズではない、もっと新しいブラック・ミュージックの需要が高まってきました。そこに目をつけたのが、デトロイトでレコード店をやっていたアフリカン・アメリカンのベリー・ゴーディJr. です。彼は「モータウン」というレコード会社を設立、次々とヒットを飛ばしたモータウンは、またたく間にアメリカを代表するレコード会社になりました。
では、モータウンを代表するグループのひとつ、シュープリームスのヒット曲「Baby Love」を聞きましょう。

M6 Baby Love / The Supremes



昨年、ドキュメンタリー映画「メイキング・オブ・モータウン」が日本で公開されましたね。ご覧になりましたか? この映画は、いいお爺ちゃんになったベリー・ゴーディが、最も信頼するソングライターで歌手のスモーキー・ロビンソンと昔ばなしをする、という映画なんですが、当時のスタッフやシンガーたちがたくさん出てくる、とても楽しいものです。
では、スモーキー・ロビンソンとミラクルズで、「涙のクラウン」です。

M7 The Tears Of A Clown / Smoky Robinson And The Miracles



モータウンのアーティストではありませんが、ソウル界のクイーン、と呼ばれた大歌手、アレサ・フランクリンもデトロイト出身なんです。アレサのお父さんはデトロイトで有名な牧師さんで、アレサは教会でゴスペルを歌うことからキャリアをスタートさせました。では、アレサの大傑作のひとつ「Think」をお聴きください。

M8 Think/ Aretha Franklin



M9 Devices /Jeff Mills 



今かかっている曲は「デトロイト・テクノ」と呼ばれるジャンルの代表的なミュージシャン、ジェフ・ミルズの「 Devices 」です。現在でもデトロイトの人口に占める黒人比率は80%ほどありまして、ヒップホップやデトロイト・テクノといった音楽が盛んです。

ここで1冊の本を紹介しましょう。日本の作家、原田マハさんの『デトロイト美術館の奇跡』という、事実を元にした小説です。

デトロイトにいた資産家たちが収集した名画を展示している美術館がデトロイトにあります。セザンヌやゴッホなどをはじめ、値段がつかないほどのコレクションを資産家たちが市に寄付して作られた美術館で、市民たちの憩いの場として愛されてきました。

ところが、デトロイト市は自動車産業の不況で財政難に陥り、破産状態になってしまったのですね。市当局がまず考えたのは、美術館のコレクションを売却して市の財源にあてるという解決策でした。

それを惜しむ市民たちや美術館スタッフたちの尽力で、世界中から寄付を集めて美術館は生き残ったのですが、そのことを書いたのがこの小説です。原田マハ著『デトロイト美術館の奇跡』、新潮社から出ております。よかったら読んでみてください。


さて、今のデトロイトは、ヒップホップも盛んですが、ジャズをやるミュージシャンも少なくありません。その象徴というべき人が、デトロイト出身のドラマー、カリーム・リギンズです。彼はオーソドックスなジャズ・ドラマーとしても一流ですが、そのかたわらヒップホップのプロデューサーとしても大活躍しています。
カリームのヒップホップ的な短い曲と、ジャズ・ドラマーとして日本のピアニスト大西順子と共演した曲を続けて聴いてみましょう。

M10 Suite Intro / Karriem Riggins



M11  GL/JM / 大西順子


さて、今日のお別れの曲です。デトロイト出身の才能あるピアニスト、ジェリ・アレンがピアノ・ソロでデトロイトゆかりの曲を演奏した『Grand River  Crossings : Music of Motown & Motorcity Inspirations』から、フォー・トップス1964年のヒット「Baby I Need  Your Loving」です。
ジェリ・アレンは惜しくも2017年に60歳で亡くなってしまいました。
時間いっぱい、この感動的な演奏をお聴きください。

M12  Baby I Need  Your Loving / Geri Allen



「世界はジャズを求めてる」、お相手は音楽評論家の村井康司でした。毎週木曜午後8時から1時間、鎌倉FMにチューンインを! ではまた!

*このプレイリストは2021年1月放送分以降に村井康司が選曲したものを随時増やしていきます。Spotifyにない曲は割愛します。


(「世界はジャズを求めてる」は、アプリやウェブサイトを使って世界のどこでも聞けます。毎週木曜午後8時から1時間、再放送は毎週日曜お昼の12時から1時間です。)

また、「世界はジャズを求めてる」の記事をアーカイブするマガジンもあります。公開した記事を随時入れますので、こちらもチェックしてください!


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