見出し画像

「世界はジャズを求めてる」2021年4月第1週(4月1日)放送分スクリプト(出演 村井康司) #鎌倉FM


M1 テーマ曲:What A World Needs Now Is Love/Stan Getz


こんばんは、毎週木曜午後8時からお送りしている「世界はジャズを求めてる」、第一週は音楽評論家の村井康司がお届けします。
週替わりのパーソナリティが進行役を務めるこの番組も、今日で4か月目を迎えます。みなさん、楽しんでいただけてますでしょうか。番組の感想、リクエストなどは、鎌倉FMホームページの送信フォームや、ツイッター、フェイスブックなどでどしどしお寄せください。ツイッターでは、ハッシュタグ「#世界はジャズを求めてる」を付けていただければ助かります。また、noteにもこの番組のページがありまして、番組の選曲リストや概要などをご紹介しています。noteで、「世界はジャズを求めてる」で検索していただければ、私たちのページをご覧になることができます。そちらもよろしくお願いします!

さて、今日から4月ですね。コロナウィルスのせいでお花見や入学式、歓迎会なんかもいつものようにはいきませんが、春たけなわというのはやっぱりいいですよね。
というわけで、今日は「4月」と「春」にちなんだ曲をご紹介していくつもりです。
まずは、「4月」といえばこの曲、「April in Paris」、「パリの四月」を、極めつけカウント・ベイシー・オーケストラの演奏でお送りします。

M2 April in Paris/Count Basie Orchestra

カウント・ベイシー・オーケストラで、「April in Paris」、「パリの四月」でした。
この曲は非常に有名なスタンダードで、私は1月の放送の1曲目にチャーリー・パーカーの演奏でかけたんですが、ベイシーのダイナミックな演奏も最高ですね。
さて、次の曲はあまり知られていないと思います。「April in Portugal」「ポルトガルの四月」という曲です。これはもともとポルトガルの曲で、後で英語の歌詞がついたみたいですね。
では、ルイ・アームストロングの歌とトランペットで、「April in Portugal」「ポルトガルの四月」をお聴きください。

M3 April in Portugal/Louis Armstrong

ルイ・アームストロングの「April in Portugal」「ポルトガルの四月」をお送りしました。
4月の曲で、「April in Paris」とおなじぐらい有名なものは「I’ll remember April」かな、と思います。「四月の思い出」という邦題が付いています。この曲もたくさんの名演があるんですが、今日はちょっと渋めの演奏を聴いていただきます。二人のギタリスト、ジム・ホールとビル・フリゼールの共演で、「I’ll remember April」です。

M4 I’ll remember April/Jim Hall and Bill Frisell

ジム・ホールとビル・フリゼールで、「I’ll remember April」でした。ジム・ホールは現代のジャズ・ギタリストの多くに多大な影響を与えた存在でして、ここで共演しているフリゼールもジム・ホールの愛弟子といっていいと思います。こうやって聴くと感覚がよく似ていますよね。
さて、次は実にユニークなサックス奏者、ローランド・カークが演奏する4月の曲、「April Morning」をご紹介しましょう。カークは3本のサックスを同時に演奏して、おまけに鼻でフルートも一緒に吹いちゃう、というとんでもない技で有名ですが、ここではアルト・サックスと同じ音域の「ストリッチ」という楽器で、しっとりとバラードを吹いています。ローランド・カークの「April Morning」をお聴きください。

M5 April Morning/Roland Kirk

ローランド・カークの「April Morning」をお送りしました。次もサックス奏者の演奏する4月の曲です。こちらはぐっと新しく、2017年の録音、テナー・サックス奏者ベン・ウェンデルの、その名も「April」という曲をおかけします。ウェンデルは『Seasons』というアルバムを出しまして、その中には1月から12月までの曲が入っているんですが、これはもちろん4月のパートです。では、ベン・ウェンデルの「April」です。

M6 April/Ben Wendel

ベン・ウェンデルの「April」でした。さて、もう1曲だけ「4月」が題名に入った曲を聴いて、後半は「春」の曲をおかけしたいと思っています。今度の曲は「Aprilling」という不思議なタイトル、エイプリルにingが付いて進行形の動詞になっているんです。日本語だと「4月ってる」みたいな感じかな。演奏しているのはアルト・サックス奏者のリー・コニッツと、作編曲家でピアニストのギル・エヴァンス。実はこの曲、さきほどご紹介した「I’ll remember April」のコード進行、和音のつながりをベースにして、その上で自由に即興演奏をしたものなんです。というわけで、リー・コニッツとギル・エヴァンスの「4月ってる」演奏を聴きましょう。

M7 Aprilling/Lee Konitz and Gil Evans 



M8 Spring Ain’t Here/Pat Metheny Group

今後ろで流れている曲は、パット・メセニー・グループの「Spring Ain’t Here」、「春はここにはいない」という屈折したタイトルの曲なんですけど、なんとなくけだるい春の夕暮れ、みたいな雰囲気のサウンドですね。今日はこの曲をバックに、常盤新平さんの短篇集『片隅の人たち』をご紹介します。常盤新平さんはアメリカ文学の翻訳家、小説家、エッセイストとして知られた方です。この『片隅の人たち』は、常盤さんが若い頃、昭和30年代前半ぐらいに出会ったさまざまな翻訳家たちのエピソードを小説仕立てにした短篇集で、ミステリやSFの翻訳が好きな人だったら、ああこれはあの人がモデルなんだな、ということがお分かりになる登場人物がたくさん出てきます。たとえば福島正実、清水俊二、小林信彦など。
で、この短篇集に「四月の雨」という作品が入っていまして、この「四月の雨」、エイプリル・シャワーというのも曲のタイトルなんですね。1921年に作られた古い曲で、フランク・シナトラやメル・トーメも歌っています。常盤さんの「四月の雨」の主人公は、才能はあるけど性格的にかなり問題がある若い翻訳家でして、その翻訳家と美しい妻のエピソードが、雨の降る4月の街角を舞台に綴られています。なかなか味わい深い、しみじみとした短篇です。というわけで、常盤新平『片隅の人たち』、中公文庫から出ておりますので、よかったら読んでみてください。


さて、4月がタイトルに入っている曲はあまり多くありませんが、「春」の曲はたくさんあります。まずは春のよろこびが溢れている楽しい曲を聴きましょう。クリフォード・ブラウンのトランペット、マックス・ローチのドラムスを中心とした演奏で、ブラウンのオリジナル曲「Joy Spring」です。

M9 Joy Spring/Clifford Brown and Max Roach

クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットで、「Joy Spring」でした。
次の曲は、今の楽しい春とは正反対の、だるい春をテーマにした曲です。「Spring Can Really Hang You Up The Most」というタイトルなんですが、これは日本語に訳すのが難しいですね。「春はほんとに憂鬱になる」とか「春になってめちゃくちゃ落ち込んでる」とか、かな?まあ失恋の歌なんですが、落ち込んだ雰囲気がものすごくよく出ているヴァージョンを聴いてみましょう。リッキー・リー・ジョーンズの歌で「Spring Can Really Hang You Up The Most」です。

M10 Spring Can Really Hang You Up The Most/Rickie Lee Jones

リッキー・リー・ジョーンズの歌で「Spring Can Really Hang You Up The Most」でした。リッキー・リーはシンガー=ソングライターですが、ジャズ・スタンダードもたくさん歌っています。これはスタンダードを集めた『Pop Pop』に入っているヴァージョンで、やさぐれた感じが実にいいですね。

さて、今日のお別れは4月1日の曲です。バート・バカラックの名曲「April Fools」を、アール・クルーのソロ・ギターでお聴きください。

M11 April Fools/Earl Klugh


「世界はジャズを求めてる」、4月第一週のお相手は、音楽評論家の村井康司でした。来週の進行役は、音楽書籍編集者の池上信次さんです。
では来週も木曜午後8時から、鎌倉FMにチューンインを! またお会いしましょう!

*このプレイリストは2021年1月放送分以降に村井康司が選曲したものを随時増やしていきます。Spotifyにない曲は割愛します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「世界はジャズを求めてる」は鎌倉FMで毎週木曜午後8時から1時間(再放送は毎週日曜昼の12時から)、週替りのパーソナリティが、さまざまなジャズとその周辺の音楽をご紹介するプログラムです。

進行役は、第1週が村井康司、第2週が池上信次、第3週が柳樂光隆、第4週がeLPop(伊藤嘉章・岡本郁生)、そして第5週がある月はスペシャル・プログラムです。

鎌倉FMの周波数は82.8MHz。
鎌倉エリア以外の方は、JCBAインターネットサイマルラジオ

https://www.jcbasimul.com/radio/768/

またはTuneIn Radioでリアルタイム聴取ができます。

鎌倉FMのウェブサイトはこちらです。トップページ右の「今すぐ聴く!」バナーをクリックしても聴くことができます。


また、「世界はジャズを求めてる」の記事をアーカイブするマガジンもあります。公開した記事を随時入れますので、こちらもチェックしてください!


※お願い
この番組はJAZZを愛する出演者たちが自らスポンサーとなり、各自の手弁当で運営されています。
スポンサーとしてご協力をいただければとてもありがたいです。番組のスポンサーとなることをお考えの方は、下記にご一報頂ければご連絡さしあげますのでよろしくお願いします。

sekaijazz@gmail.com

また、このサイトの各記事に投げ銭でサポート頂くこともできます。
記事の最後に300円を任意でお支払いいただく購入ボタンがあり、それとは別にお好きな金額を選んでいただけるサポートボタンもございます。
「世界はジャズを求めてる」を長く存続するために、ご助力いただければうれしく思います。(「世界はジャズを求めてる」出演者・スタッフ一同)

ここから先は

0字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?