「辺野古の新基地は本当に必要なのか」by 稲田はなの / 鎌倉女学院高等学校(神奈川)#生物多様性を守ろう

沖縄県名護市辺野古。20年以上前に普天間基地の移設先になり、美しい海の埋め立てが今も続いている。埋め立てによって何が起こっているのか、これ以上新しい基地が必要なのか、考えてみた。

1.沖縄について

 日本の面積の約0.5%を占める沖縄県。その沖縄県に、日本の在日米軍基地の74%が集中している。
 日本の南端という地理的位置から、沖縄には亜熱帯林、マングローブ林、サンゴ礁などの貴重な生態系と自然環境があり、世界自然遺産の候補地としても認められている。        

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(引用:原発問題‐The Truth is Out There「沖縄の辺野古」)

2.辺野古の自然
 辺野古の海、大浦湾には絶滅危惧種のオキナワハマサンゴの群体、アオサンゴ群集が生育しており、ジュゴンの生息地としては世界の北限とされている。絶滅危惧種の「危急種(VU)」とされていたジュゴンは、2019年には絶滅の危険度が最も高い「絶滅寸前(CR)」に引き上げられた。その際、国際自然保護連合から「辺野古で進められている米軍基地建設が脅威となっている」と指摘された。

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(引用:野生生物保全論研究会HP)

 また大浦湾には、ハマサンゴやジュゴンの他にも絶滅危惧種262種を含む5800種以上の海洋生物の生息が確認されている。この5800種のうち、約1300種は分類されていない生物で、種が同定された場合、多くは新種の可能性がある。
(毎日新聞2018年12月14日)

3.埋め立てに使われている土砂
 辺野古の埋め立てには、東京ドーム17個分の土砂、2062万立法メートルもの土砂を海に投入する計画である。(2013年防衛省沖縄防衛局計画書より)
 その土砂の大半を占める岩ズリ(岩を砕いたもの)は、沖縄本島や九州・瀬戸内地方の7地区13カ所の採石場から運ばれている。驚いたことに、この大量の土砂を、沖縄防衛局はアセスメント(環境影響評価)無しに搬入しようとしていた。

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(引用:JAWAN通信No.110)


もしそうなれば、搬入される辺野古だけでなく、搬出される側の奄美群島・瀬戸内海地域でも広範囲にわたって自然破壊や生態系破壊がもたらされてしまう。
 沖縄県は2019年に、辺野古埋め立ての土砂について、外来生物調査を行った。その結果、県内に持ち込まれる可能性のある外来生物は、動物57種、植物147種の合計204種にのぼる事が判明した。(沖縄タイムス2020年5月9日)

4.サンゴの移植
 現在、沖縄県と国でサンゴの移植許可を巡った裁判をしている。すでに移植された絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ9群体のうち、3群体が死滅していたニュースも目にしたが、そもそもサンゴは移植できるものなのか疑問だった。
 
今回、#せかい部×SDGs探究PJで生物多様性をテーマにさまざまなプログラムに参加したが、「市民の協働で推進する生物多様性」で国連SDGs10年市民ネットの宮本育昌さんの講義を聞いた時、「サンゴの移植は不可能」だとわかり驚いた。絶滅危惧種を、国がこんなにも軽く扱うのか。

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大人の背丈より高いハマサンゴ
(引用:ジュゴン保護キャンペーンセンター)


5.辺野古の地盤
 2014年になってから、沖縄防衛局の調査により大浦湾の海底が軟弱地盤だとわかった。ニュースでは「マヨネーズ地盤」と呼ばれていた。強度としては、完成後も震度1の地震で崩壊する可能性があるぐらい、弱い地盤だ。
その補強のため、海底に追加の杭を打ち込む工法が取られることとなったが、軟弱地盤に基地を建設する事自体が無理なのではないだろうか。

6.沖縄の民意
 これまで、沖縄県知事選挙・名護市長選挙など、選挙の度に辺野古反対派のオール沖縄が勝利してきた。2019年2月の辺野古の賛否を問う県民投票では71.7%が辺野古反対を占めた。現沖縄県知事の玉城デニー氏も、オール沖縄の故尾長雄志氏の跡を継いで当選している。
 何度も民意が示されているのにも関わらず、国はそれを無視して工事を進めている。

7.普天間基地の返還
 世界一危険な基地として知られる普天間基地。その普天間基地を辺野古に移設するという政府の説明だが、普天間返還に関して、日米間では8項目の条件が交換されている。
 その中で滑走路についての項目が、辺野古が完成してもアメリカ側の合意を得られない可能性がある。普天間の滑走路は2700メートルだが、辺野古の滑走路は1800メートルしかないため、辺野古が普天間の代替とは認められない場合、普天間が返還されないかもしれない。これについては、2017年6月の国会答弁で稲田防衛大臣が認めている。
(沖縄タイムス2019年2月23日)

8.辺野古の工事が進められる理由
 辺野古の基地建設は、もう全国紙の新聞でもなかなか取り上げられなくなってきたが、選挙の前数週間を除いてずっと続けられている。が、自然や生態系を破壊している行為、沖縄県の民意、どれを取っても工事を進める正当な理由は見当たらない。

9.まとめ
#せかい部 ×SDGs探究PJ「深海の世界にみる生物多様性」では「日本の海の容積は全海洋の0.9%しかないのに全海洋生物の13.5%がいる。海洋生物多様性のホットスポット」であることを知った。この貴重な日本の海、それも絶滅危惧種も生息している辺野古の大浦湾を埋め立てる事は、日本だけでなく世界、そして人類の大きな損失である。
 そもそも基地は戦争の一部で、戦争というものは、人命はもちろん自然やその他の生物の命までも奪う破壊行為以外の何ものでもない。辺野古の基地建設は、取り返しのつかなくなる前に、今すぐに止めるべきなのだ。


鎌倉女学院高等学校(神奈川)稲田はなの
#せかい部 ×SDGs探究PJ高校生レポーター(生物多様性を守ろう)

#せかい部sdgs

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