透明人間
きみにはぼくの事が視えているのだろうか。
ぼくの存在は誰かに認められないと実体化できない。だからきみに認められないぼくは透明のままだ。
きみはぼくをよしとしない。
ぼくの生きる世界を、全てを、よしとしない。
きみはぼくのことが見えないから、ぼくが痛くても壊れても気が付かない。
ぼくは誰かに見つけてもらいたかった。見つけてもらえるならなんでも良かった。
だから性格も何度だって変えたし、耐えうることなら何でも耐えた。自分なんてものはとうに捨ててやった。
でも 誰にも見つけてもらえなかった。
自分をもたない人間なんてつまらないから、コロコロ自分を殺す人間なんてつまらないから、空気ばっかり読んだフリでへらへらしてる人間なんてつまらないから、とかつまらないことを人間に成れた作り笑い共が言う。
ならばぼくはどうすれば良かったのだろう。
誰か一人でもぼくじゃないとだめって言ってくれないとぼくは生きている価値がまるで無い。
ぼくにとっての「承認」は何よりも暖かくて報われてしまうものであるから情けなくて笑ってしまう。
誰かぼくに価値をくれ。
少しだけでいいからぼくを見てくれないか。
少しだけでいいからぼくの存在を認めてくれないか。
少しだけ。
少しだけ。
透明な からだ から透明な水が流れた。
誰の瞳にも映らないぼくはやっぱり透明のままだった。