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東京五輪サッカー日本代表についての雑感

東京五輪のサッカーは、ブラジルの優勝で幕を閉じました。メキシコとの3位決定戦に敗北し、日本はメダルを獲得することができませんでした。過去の成績や、世界における日本の立ち位置を踏まえると、決して悪い結果ではなかったように思います。ただし、ヨーロッパで主力としてプレーする選手の多さや、A代表でもレギュラーを務めるオーバーエイジの招集など、期待値が高かっただけに、どこか空虚な雰囲気も立ち込めています。

そんな中、準決勝のスペイン戦は最高視聴率43.3%を記録するなど、オリンピック×サッカーというコンテンツ力の高さも改めて認識しました。

そんな今大会の日本代表について、いくつかの観点で感じたことを簡単に記します。

選手選考

今大会で招集されたメンバーはこちらです。

正直なところ、この年代のここまでの道のりをそれほど熱心に見ていなかったので、この観点はそれほど詳しくありません。感覚的に把握している限りで言えば、選考そのものに大きく違和感はありません。この東京五輪までの道のりの中で招集されていた、「本当であれば呼びたかった選手」は他にもいたと思います。ただ、今大会時点におけるコンディションや、所属クラブでのパファーマンス状況を踏まえると、妥当だと思います。

気になるのは、1列目と2列目のバランスでしょうか。

1列目は林、前田、上田が選出されていたのに対し、2列目相馬、三好、三笘、堂安、久保というメンバーです。実際には前田は2列目起用も想定した招集だったと思いますし、実際の出場も2列目となりました。

しかもこの2列目を務める選手のうち、ボールの「出し手」といえるのは辛うじて三好がいるくらいで、他の選手は「受け手」となります。仲間からパスを受け、仕掛けたりシュートを打つことで輝きを放ちやすい選手たちです。選考基準に叶う「出し手」が育っていなかった、といえばそれまでかもしれません。ただ、「ポジションのポリバレント性」を気にするのであれば、選手のキャラクター・役割ももう少し調整したいところです。

一方で1列目、つまりこのチームの場合は1トップを務める選手についても気になります。得点こそなかったものの、林は前線からのプレッシングや、一定の確率で勝っていたポストプレーなど、通用するレベルであることを見せてくれたのはサプライズでした。もう1人の上田は大会前の怪我から間に合ったものの、コンディションが戻ってきているようには見えないパフォーマンスでした。2列目に同じタイプの選手が渋滞している状況に対して、1列目はコンディションも含めて層に不安のある陣容でした。

本来であればこの世代のCFとしては小川が期待されていたところでしたが、思ったようなパフォーマンスが残せずに最終的に選考外となってしまったことは、本人のみながらずチームにとっても痛かったように思います。

オーバーエイジ枠

厳密には選手選考の中に位置する話ですが、今回の日本代表の成果に大きく影響を与えた要素です。オーバーエイジ枠として、吉田、遠藤、酒井宏樹を招集しました。酒井宏樹は東京五輪後に浦和レッズへの加入が決まっていますが、3人とも昨シーズンは欧州の所属クラブで主力として高いパフォーマンスを誇った、A代表でもレギュラーを務める選手たちです。

事実、今大会ではこの3人のパフォーマンスの安定感は目を見張るものがありました。これだけの実力をもっていて、かつチームのバランスを崩さない(ピッチ内外)選手を招集できたということは、オーバーエイジ枠の使い方としては成功だったと言えます。

確かにメキシコとの3位決定戦では遠藤のパフォーマンスが安定せず、失点にも絡んでしまいましたが、ここまで連戦で獅子奮迅の活躍を見せていたことを考えると仕方ないとも言えますし、そういった状況でありながらも安心して任せることができるバックアップがいなかった結果の現れとも考えられます。

監督

今大会は、A代表と兼任という形で森保監督がチームを率いました。結論、「日本サッカー協会が求めている方向性に対しては」最適な人選で、今のチームの力をほぼ最大に引き出したと言えます。

長くなるので詳細は割愛しますが、そもそも日本サッカー協会は戦術的な駆け引きができるような、「現代的」な監督を求めていないと思います。選手が自由なアイデアやコンビネーションでゲームを作っていくことを尊重するような監督を求めている印象があります。

そもそも戦術的な要素を強く求めるのであれば、サンフレッチェ広島に栄冠をもたらした偉大な監督であるものの、在任期間終盤では明らかに引き出しがなくなってしまった状態であった森保監督を招聘しないでしょう。

では戦術的な駆け引きを得意とする監督を招集していたら結果は変わっていたでしょうか?勝負は水物なので蓋を開けてみないとわかりませんが、個人的にはNOであると考えます。それは、「選手側が適応できない可能性が高い」と考えているためです。

ハリルホジッチ監督の件もそうですし、Jリーグ国内クラブの件もそうですが、いわゆる欧州のトレンドに沿った、「戦術的」なサッカーに舵を切ろうとすると選手からの反発があったという報道を耳にします。その具体的な反発の内容は定かではありませんが、そうした動きがあっても不思議ではないと思います。

というのも、そもそも選手たちがこれまでに経験してきているサッカーと大きく異なるものが提示されたとき、ネガティブな反応が出ることは自然だと思います。ましてや選手としての競技寿命が少ないサッカーにおいて、大きな変化に対して我慢の時間を過ごす必要があるということは、相当勇気がいることだと思います。

そういった状況を踏まえると、ファンが望むかどうかは別にして、日本サッカー協会が持っている基準、それによって招聘された森保監督、そして今大会のパフォーマンスとしては、悪くなかったのではと思っています。

育成

前章の話に関連しますが、そもそも選手一人ひとりが育成年代で経験しているサッカー、そしてそこから得ている戦術メモリーにはやはり差がありそうです。ボランチとして高いパフォーマンスを発揮していた田中が、スペイン戦後に語ったコメントは興味深いものでした。

 「個人個人でみれば別にやられるシーンというのはない。でも、2対2や3対3になるときに相手はパワーアップする。でも、自分たちは変わらない。コンビネーションという一言で終わるのか、文化なのかそれはわからないが、やっぱりサッカーを知らなすぎるというか。僕らが。彼らはサッカーを知っているけど、僕らは1対1をし続けている。そこが大きな差なのかな」
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/2a7b320f23b3d091c8454be7a28601616cee369e

このコメントからは、そもそもサッカーというスポーツの構造の捉え方において、大きな違いがあることを示唆しているように思います。

見方によっては、南米や欧州と比べてサッカーの歴史が浅い日本が、近年の成績を出せているということ自体が驚異的といえるかもしれません。ただし、そうしている間にもサッカーというスポーツの研究、言語化、アウトプットが進んでしまっています。トップレベルのみならず、育成年代も含めて、いかにそのような差を埋めるための人・情報を国内で広げていけるかという点は、時間はかかると思いますが必要な取り組みと言えます。

無観客試合

本来であれば満員のサッカーファンに囲まれて試合ができたであろう今大会で、無観客となってしまったことは残念です。ただしその状況が、チームにポジティブな影響を与えたか、ネガティブな影響を与えたかは判断が難しいと感じました。

前提として、この観点については既に考察・研究が進んでいますが「無観客だとホームチームのアドバンテージは縮小する」というのが今のところよく目にする結論の方向性です。

よって、一見ホスト国としてのアドバンテージを失ったようにも見えます。しかし、今大会の日本代表においては、観客という存在がいない分、選手たちは自らがやることに集中することができていたようにも見えました。「観客の後押しによるもうひと頑張り」のようなものは得られなかったかもしれませんが、一方で「観客のテンションに左右されての失策」も起きなかったように感じました。

どちらにせよ選手としては超満員のスタジアムでプレーしたかったことは間違いないでしょうから、それは非常に残念です。

まとめ

いろいろ書きましたが、個人的には日本は今の力を出し切った大会だったと思っています。同じ大会を10回やったら、4位という成績を下回る回数のほうが多いのではないか、と思ってしまうほどです。そのようなパフォーマンスを一発勝負の本番で発揮することができた選手、スタッフ陣には本当に称賛を送りたいと思います。

更に上の結果を出す、またはA代表でも同等の結果を出すためにはもう1段ステップアップが必要ですが、それはまた長い道のりの話だと思います。

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