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若き日の墓標①〜セックスするだけの関係

22歳、私がいちばん美しかったときに、すごくすごく好きな人がいた。

価値観とか人間性とかわからないし、どっちかというとダメな人だと思った。

それでも、この人が欲しい。私のものにならなくても、いっしょにいられるときがあればそれでいい。狂おしい気持ちで、その人の要求にはなんでも応じていたころがあった。


それから20年。その人が、私に会うためだけに5時間車を運転してきた。変わらないにおい。あのころ、あんなに焦がれたにおいだけど、車の窓を開けたくなった。

自分の話なんてする余地もなく、セックスに溺れて、他の記憶なんてほぼなくて、いつも呼び出されてセックスして帰るだけだった日々。

絶対に戻りたくないのに、あんなにもひとりの人間として尊厳のない扱いだったのに、今の私を形作った原点のひとつであるのには違いない、私の若き日の墓標。

セックスレス夫婦って、どうしてこうありふれているのかしら。愛し合っていた時期があったはずなのに、やがて家族になって、家族には欲情しないというパターンのひともいたり、価値観の相違で疎んじあうようになったり。

ひとつ屋根の下で暮らすのは、まったくロマンチックとはかけ離れる行為なのに、どうしてそれを求めるのか。

彼のほうは奥さんがせいよくがなくなっていて、私のほうは夫がせいよくがなく。

私に対してだけなのかもしれないけど、それは私にはわからないことだし。

結論。彼と私はセックスしなかった。

もしかして、次会ったらするのかもしれないし、もう会わないのかもしれないし、彼の言うように会っても何もしないで散歩するだけでも楽しいのかもしれない。

20年前とは真逆の関係。そんなことがあるなんて、君は20年前に予想しましたか?

墓標に語りかける。


しもべ

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清翼しもべ
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