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私のGap Year ギャップ・イヤーについて
1 はじめに
こんにちは。プロノモスです。今回は、私のいわゆる “Gap Year”について述べたいと思います。
2 ギャップ・イヤーとは?
ギャップ・イヤーというと、一般に高校卒業後の一年の間、旅をしたり、留学をしたり、インターンシップやアルバイト、ボランティア活動をしたりするなど、大学入学への準備期間として知られています。つまり、高校卒業と大学入学の間の期間がギャップ・イヤーなのです。一種のモラトリアムとも言えるでしょう。
米国や英国、北欧諸国ではギャップ・イヤーをとる人が少なくなく、その充足度は、下記のGap Year Associationの調査結果を見ればわかるように、明らかです。とりわけ、自分自身と異なるバックドロップを持つ人との交流、自己の成熟、自信の向上はギャップ・イヤーの顕著な効果です。
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3 私のギャップ・イヤー
ここまで、ギャップ・イヤーの概要について述べてきましたが、ここからは私のギャップ・イヤーについて、実体験を述べていこうと思います。
私のギャップ・イヤーは少し一般的なそれとは異なります。というのも、アカデミックなことを含むギャップイヤーだからです。
私は2021年3月に日本で高校を卒業しました。いわゆる大学受験は失敗に終わり、絶望の日々が続きました。しかし、私の学問に対する情熱は相変わらずでした。
それからというもの、英検やIELTS、独検など語学検定に励み、古典ギリシア語や現代ギリシア語、フランス語やイタリア語、ラテン語などの言語の学習に注力し、その語学力で、論文やモノグラフ、原典をひたすら読みあさり、自分にとって興味のある分野を探求していきました。
そして、ついに昨年2022年、音楽考古学を私の専攻に決め、音楽考古学の分野で著名な研究者が在籍するヨーロッパの某大学に入学することが決定しました。
もし、私が2021年の大学受験に無事に合格し、高校卒業後直ぐに国内の大学に進学していたら、どうなっていたでしょうか。おそらく、自らが心から強い情熱を持って学びたい、研究したいと思う分野には遭遇していなかったでしょうし、外国語学習にもそれほど重点が置かれていなかったでしょう。
別に無理に高校卒業後すぐに進学する必要はないです。無理に学費を払って、学生ローン(貸与制奨学金)を借りてまで妥協して大学に行く必要なんてありません。
家や図書館で一人で学習し、それで培ったもの、それが私の今を形成しています。
もし今あなたがアメリカに留学したいなら、そのためにギャップ・イヤーをとってアルバイトをして貯金すればいいし、TOEFL対策に時間を費やせばいい。
もし今あなたがドイツに行きたいなら、そのためにギャップ・イヤーをとってドイツ語を勉強し、行きたい大学や専攻をじっくりと決めればいい。
もし今あなたがロシアに行きたいのなら、そのためにギャップイヤーをとってロシア語を勉強し、その語学力で今あるこの状況について考察し、来たるべき時にロシアに行けばいい。
もちろん、学部生のうちにじっくりと学びながら自分の学びたい、研究したい分野を探すこともできます。(ただし、学部内に限られますが)。
ですが、ギャップ・イヤーを経て学部からその分野を学んでいる学生と修士課程から学び研究している学生とでは隔りがあります。
一つはその能力、もう一つは熱意です。
その分野に関する知識や能力は当然ながら前者の方が秀でていますし、その熱意もまたより時間を経ている前者の方が熱いことは想像に難くありません。
この点はとりわけ、博士課程への進学を志望する方には重要かと思われます。
長くなりましたが、つまるところ、高校卒業後の約二年間が私のギャップ・イヤーです。
現在は、先に述べた欧州の某大学進学に向けての準備をしており、資金調達や奨学金手続き、ビザなどの事務的作業に取り組んでいます。これもまた、ギャップ・イヤーの一環です。
4 おわりに
先述したように、日本ではギャップ・イヤーに対する評価は消極的で、日本の平均大学入学年齢は18歳で、OECD加盟国の中では最年少です。
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もちろん、大学に入学する年齢が早いことが最大の利点となる場合もあります。早い段階から自分自身について知り尽くし、興味のある分野を見つけられる成熟度の極めて早い人、換言すれば、いわゆる、飛び級をする能力のある人がその典型例でしょう。
しかし、自由の少ない閉塞された日本の高校を卒業した普通の18歳の少女・少年が、自分にとって真に興味のあるものを見つけることが果たしてできるでしょうか。その道に進んで後悔しないでしょうか。
時間を少し置けば、何が自分にとって面白いと思えるのか、何が自分のしたいことなのか、自分自身の将来についてじっくりと考えることができます。
それに、お金の問題も解決するかもしれません。というのも、ギャップ・イヤーの期間で大学入学に向けた資金を調達でき、奨学金の選択肢も大きく広がるからです。
極めて残念なことに、この国では、ギャップ・イヤーを「浪人」という言葉で表現します。一浪、二浪という風に。
果たしてギャップ・イヤーを取る学生は浪人なのでしょうか?18歳で大学に入学しようが、ギャップ・イヤーをとって19歳、20歳で進学しようが、それもまた c’est la vie です。
ギャップ・イヤーをぜひ一つの選択肢として心に留めていただければ、幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。