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『味の台湾』
熱々が食べたい。たとえ口内の皮がベロベロになったとしても。
突然そんなことを書いてしまうほど、料理は熱々で食べたいのがわたしの性分です。できたばかりの熱々の料理を、ハフハフしながら食べるときの幸福感は何物にも代え難いと思います。
連日猛暑が続いていますが、こんな暑い日にこそ熱々のものが食べたい。そして熱々の食事のお供にキンキンに冷えたビールがあればもう、他に望むものはありません。
『味の台湾』の著者である詩人の焦桐も、熱々の食事を愛してやまない一人です。『味の台湾』には六十の台湾料理に関する散文が収録されています。次に紹介するのは「肉円(豚肉とタケノコ餡の葛まんじゅう)」のなかの一節です。ちなみに、肉円はバーワンと読み、さつまいもや片栗粉の皮でお肉の餡を包んだもので、台湾では庶民の食べ物としてごく一般的だそうです。
蒸した肉円のいいところは油っこくないことだが、私は揚げたほうの肉円を偏愛している。(中略)油の温度は激情のごとしだ。(中略)油のなかから引き上げたばかりのため、皮から餡まで非常に熱い。ふうふう吹きながら食べ、急いで美味を味わうことと口をやけどすることのぎりぎりの線にいると、ふいに爽快さと危険とはこれほどに近くにあるのだということを悟る。ああ、人生には肉円を食べるときのように、あわただしく進まなければならない瞬間のいかに多いことか。
あるいは「封肉(豚肉の醤油煮込み)」についての一節。
封肉と合わせるには、あっさりとして熱いものがよい。やけどするほどあつあつの白米が、その脂の香りを最もよく表現できる。その肉の味、息遣いは挑発に満ちており、こらえきれない激情のようだ。情欲に満ち、人を魅惑する封肉のかたまりがあるのに一杯のあつあつの白飯がなければ、どんなに寂しいことか。
かたまりで肉を食らい、大口で飯を頬張れば、そのうまさは神の名を噛み締めるがごとし。激情と渇望が思うさま引き出され、心中に駆け上がってくる。
熱々のものを食べるときの爽快感、そして高揚感がありありと感じられるような筆致に、ただただ唾を飲むばかりです。ごくり。
台湾には4年半ほど前にいちどだけ行ったことがあるのですが、とにかくご飯が美味しかった思い出があります。
話はそれますが、台湾は外食文化が根付いていて、朝からお店で食べることも多いそう。朝早くからご飯屋さんが開いているという光景もそれだけで新鮮だったのですが、そこにお客さんが列をなしているのもまた面白かったです。
ただ、(当たり前ですが)この「食事は熱々にかぎる」という嗜好は必ずしもみんなからの共感を得られるわけではありません。
我が家も妻は猫舌なので熱いものが苦手です(ちなみに辛いものも)。
料理が出来上がったら一刻も早く食べたいわたしと、キッチンの片付けをすませてから食卓につきたい妻のあいだには、常にせめぎ合いがあります(わたしが思っているだけかもしれませんが)。
ああ、熱々が食べたい。
台湾にも行きたい。
今回紹介した本。
以下は2019年に台北を訪問した時の写真。とにかくご飯が美味しかった。
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