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「今ここに一緒にいること」から始める。

雑談が苦手です。
挨拶までは大丈夫、むしろ笑顔で愛想良くできている(はず)。
そこからが問題で、どんな話題をどう切り出そうか考えすぎてフリーズしてしまいます。
相手からしたら、さっきまで笑顔で挨拶していた人が何も言わずにニヤニヤしはじめたら怖いに違いない。

雑談が得意そうな友人にどんな話題がいいのか尋ねたところ「まずは天気の話だよね」と言われました。
「天気の話をふってみて、どうリアクションしてくるか。声のトーンとか表情を見ながら次にどう話を展開するかを考えている」とのこと。
天気の話題のなかにも繊細な駆け引きがあるようで慄いてしまいます。

共通の話題があればいいのかもしれませんが、わたしの趣味嗜好はあまり万人ウケするものでないこともあり、初対面の人と盛り上がったためしがありません。本が好きと知ってくれて「どんな本が好きなんですか」と訊いてくれる方もいますが、なんと答えれば正解かがわからず口籠もってしまいます。いや、「正解」とかそういうことではないというのはわかるんですが…

先日、遠方から友人が遊びに来てくれたときのことです。
みんなで温泉に行くことになり、友人Mさん(女性)のお子さんYくん(小学生)も一緒に入浴することになりました。ちなみに、Mさんとは(もちろんYくんも)その日が初対面でした。
わたしと友人FさんとYくんの3人で男湯へ(Fさんは図書係山と川というユニットを一緒にやってくれています)。途中までは3人で入っていたのですが、久々の温泉でサウナへの欲求に抗えず、YくんとFさんを置いてひとりサウナへ向かいました。
いい感じに蒸されたのち休憩しようと露天風呂がある屋外へ出ました。屋外には大きな露天風呂と、そのまわりにちいさな、おそらく一人用と思われる浴槽がいくつかありました。そのうちのひとつに仲良く一緒に湯船につかるFさんとYくんの姿が。狭い浴槽でくっつきながら楽しそうにしている二人の姿を見ながら、「今ここに一緒にいる」ということがもっとも大きな「共通の話題」ではないかと思い至りました。
共通の話題としてぱっと思いつくのは趣味とか仕事の話だけど、それ以上に同じ場所で同じ時間を過ごしていることが雑談、もっと言えばコミュニケーションの起点になるのではないか。自分はもっと「今ここ」を大切にして、目の前の人に向き合っていくべきではないんだろうか。
今、ここにいる私はこんなふうに感じたり考えたりしているんだということを、素直に相手に伝えてみてもいいのかもしれない。そこで返ってくるのが、もしかしたら自分とはまったくちがう感じ方や考えだったとしても、それはそれでいいじゃないか、むしろ、そっちの方が面白いじゃないか!
こうして書いてみるとごく当たり前のようなことですが、サウナでのぼせた頭には天啓のように思われたのでした。

お風呂から出たあと、サウナで考えた話を興奮しながらFさんにしてみました。

「いや、なにしゃべろう、ってけっこう悩んだときありましたよ」(Fさん)

そ、そうですか。ひとりでサウナ入っててすいません…

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