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地方在住者のための小劇場演劇

芝居はヤバい

小劇場演劇への熱がふつふつと再燃している。

きっかけとなったのは、九龍ジョーさんの『Didion Vol.03 演劇は面白い』に載っていたヤバい芝居さんのエッセイ。同じことを別の記事でも書いたような気がするけど、もういっかい引用しておきたい。

芝居はヤバい。いい芝居はバリヤバい。 (前掲書p.4)

面白い演劇に出会った時の、自分の価値観が根底から揺さぶられる感じ、得体の知れないものへの高揚感を、この一文で思い出したような気がした。

小劇場演劇、再び

文化芸術は東京に一極集中している、なんて言われるけど、小劇場演劇に関してはその傾向が顕著だと思う。地元に戻った私にとって、小劇場演劇は縁遠い存在になってしまった。

そんなときに出会ったのが冒頭のエッセイだった。

時を同じくして、新型コロナウィルスの感染が拡大した。舞台芸術に携わる人は相当な打撃を被ったと思う。苦肉の策として、無観客配信という形をとる公演が増えたことは、地方在住者である私には、ある意味でありがたいことだった。もちろん、劇場で生の演劇が観られるというのが一番だし、早くそれができる環境に戻ってほしい。生で観ないと演劇の面白さはわからない、という意見もあると思う。(私自身、演劇を見るという体験は劇場の硬い椅子(あるいは床)でお尻を痛めつけることとセットになっている)

それでも、実際に劇場まで足を運べない人が、配信という形でも小劇場演劇の面白さにふれられるのは喜ばしいことだと思う。

前置きが長くなったけど、「演劇は面白い」のでもっといろんな人に見てほしい。

最近みた演劇

最近観た演劇について書いておきたい。
先ほども書いたように観劇しなくなって久しいので、どんな劇団が今面白いのかまったくわからない。ということで、Didionで取り上げられている劇団(主にヤバい芝居さんのエッセイ)をチェックしているところ。

ナカゴー『にっかいろとはっかいろ~堀船のごめんねてた~』
ナカゴーは以前から好きな劇団で、最初に観たのは「野鳩とナカゴー」の公演だったと思う。「ベネディクトたち」を観た時には客席に作家の長嶋有さんがいたことを覚えている。Didionには主宰の鎌田さんのインタビュー記事が載っていて、とても面白かった。
今回、かなり久しぶりに観たけど、夢に出てきてうなされそうな演劇だった。

劇団地蔵中毒『母さんが夜なべをしてJavaScript組んでくれた』
ヤバい芝居さんが激推ししている劇団。とにかくヤバい。エネルギーが過剰すぎる。なんか見てはいけないものを観た気になった(褒めてます)。

排気口『午寝荘園』
タイトルから想像していた内容とは全然違っていた。演劇は閉じられた場所や集団でのやり取りや関係性が描かれることが多いと思う。この演劇もそういう環境での、登場人物の切実さみたいものが濃密にあったように思うのだけど、今となって思い出せるのは登場人物のひとりが着ていたラマーオドム(NBAプレーヤー)のユニフォームだけ。

コンプソンズ大宮企画『短編集、石棺』
劇団地蔵中毒の公演にも出演していた大宮二郎さんによる短編コントの連作。どのコントもとても面白かったけど、個人的には「いくら」が好きだった。
今月末にも公演があるみたいだけど、そちらは配信はないようなのでとても残念。

(番外編)WARE『いきなり本読み』
ハイバイの岩井秀人さんの企画。演劇は本読み(演劇の稽古の最初の段階。台本を読み合わせること)のときがいちばん面白いんじゃないか、という思いから生まれた、初見の台本を説明抜きで読んでもらうというもの。俳優にとっては酷なものなのでしょうが、観る側からしたらめちゃくちゃ面白い。プロの仕事って、受け手(この場合は観客)からしたら、わかっているようでわかっていないと思うのだけど、この企画を観ると俳優さんたちのすごさが実感できる。岩井さんの演出も秀逸。

「お家時間が増えて退屈だ」ってなってる人には小劇場演劇をおすすめしたい。わざわざ劇場にまで行って、お尻を痛くしなくても観劇できる時代だ。そして、劇団のみなさんにはどんどん公演を配信していってほしい、というのが地方在住の演劇好きの願いです。

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