『Didion』 九龍ジョーさんの仕事③
九龍さんが編集長をつとめる「Didion」。これまでに3号が発売されており、ストリップ、落語、演劇を特集している。そのうち、私が持っている2号と3号(1号のストリップ特集は残念ながら在庫切れ)について書きます。九龍さんとの接点を見つけてもらえると嬉しいです。
落語を特集した2号のテーマは「落語の友達」。
落語会に同行する友達もあれば、落語自体が友達というケースもあります。落語には関係ないけど落語っぽい友達、なんていうのもあります。また、落語に出てくる素敵な友達関係について書かれた文章も。 (エランドプレスHPより)
また、「音楽」は「落語」の「友達」だと解釈して、ミュージシャンがお気に入りの1席を紹介する文章も楽しい。好きなミュージシャンが実は落語好きだった、なんてこともあるかも。普段わたしたちが何気なく聞いている音楽も、どこかで落語とつながっているのかもしれないと思う。個人的にはMC.sirafuによる立川志らく「子別れ」の文章がめちゃくちゃ好き。
3号演劇特集のテーマは「演劇は面白い」。
元々、五反田団やハイバイといった小劇場演劇が好きだったので、この特集にはとても興奮した。地元に戻ってきたこともあり、ここ数年は演劇から遠ざかっていて、小劇場演劇に関する記事でも、出てくる劇団名は知っているもの知らないものが半々くらい。それでも、ぐっとくる文章が多かった。巻頭の「ヤバイ芝居」さんの文章にのっけから唸らされる。
じゃ、ヤバイ芝居ってなんですか?僕のなかでは「価値観を揺さぶられる」に尽きる(さらに好みとして「過剰に」が足される)わけです。
芝居はヤバイ。いい芝居はバリヤバイ Didion 03 p.4
小劇場演劇だけではなく、宝塚、2.5次元、高校演劇に関する記事が掲載されており、射程が広い。
編集後記での九龍さんの文章がとても印象に残っている。
劇場に出かけ、隣の人と方を寄せ合い、舞台を、俳優の演技を見つめ、また日常に戻っていく、という円環のなかからその「面白さ」は生まれる。生まれては消えていく。この繰り返しが重要だ。Didion 03 p.148
めっちゃわかる。休みのたびにあちこちの劇場に足を運んでいた頃は(駒場のアゴラ劇場が一番よく行っていた気がする。下北沢は演劇の街と言われれているけど、実はあんまり行っていない)、誰に言われたわけでもないのに半ば義務のように演劇を観続けていた。円環のなかに、たしかに自分もいたのだという感触がある。
小劇場演劇の劇団も配信に力を入れるようになったのは、(劇団側からしたら苦肉の策であるとしても)地方に住む演劇好きな人間にとっては僥倖だ。同時に、画面を通してみる演劇からは、やはり物足りなさを感じる。
円環のそとから見る演劇は、「ヤバイ芝居」になりえないのか。そのあたりはいつか九龍さんに聞いてみたい。
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