サマヨール(ヨノワール)の何がやばいのか
「○○がやばい」シリーズ第6弾。
前回の三神記事から執筆は実に一年ぶり。現環境はタケルライコ、リザードン、ドラパルト、ルギア、サーナイト、トドロクツキ、カビゴン等様々なデッキがせめぎ合う、正しく群雄割拠。そんな中、彗星の如く現れ数々のポケモンを撃ち落とす一つの存在があった。それが今回紹介する「サマヨール」及び「ヨノワール」。
いつもどおり、ガチ半分ネタ半分でのカード考察。
カードそのものは2024年6月7日発売の強化拡張パック『ナイトワンダラー』にて登場。その性能が明かされた瞬間、スタンダードそしてエクストラレギュレーション界隈が震えた。
「何やってんだお前ェ!!!!」
「うそだろ承太郎!」
「何が何だかわからない...…」
見るからにパワーカードと呼ばれた歴代のカードとはまた違う、異様な空気がそこにはあった。
さて、そんな彼らの気になる性能がこちら。
HPやワザ、逃げるエネルギーを見る必要はない。見るべきはたった一点。
サマヨール【特性:カースドボム】
自分の番に1回使えて、使ったなら、このポケモンをきぜつさせる。相手のポケモン1匹に、ダメカンを5個のせる。
ヨノワール【特性:カースドボム】
自分の番に1回使えて、使ったなら、このポケモンをきぜつさせる。相手のポケモン1匹に、ダメカンを13個のせる
カンの良いプレイヤーなら既に気付いていると思うが、改めて何がやばいのか説明していく。
【その圧倒的自由度】
「自分の番に1回使える。」
エネルギーをつけたときとか、自分の番の終わりにとか、発動の条件は一切ない。好きなタイミングで使える事自体は他の特性でもよくあるのだが、ことカースドボムに関してはこのタイミングの自由さが非常にマズい。
何しろやってることはヒスイダイケンキVSTARのVSTARパワー、「ザンゲツスター」そのもの。知ってのとおりVSTARパワーは対戦中に一回しか使えない切り札。きぜつ=サイド1枚献上を要するとはいえ、VSTARパワーを使ってると思えばそう悪い取引ではない。
そしてこの特性、例によって例の如くあの文言がない。
『この番、すでに別の「カースドボム」を使っていたなら、この特性は使えない。』
つまりやろうと思えば2体目3体目を同じ番に出して連発ができる。更に言えば、きぜつに伴うサイド献上を帳消しにしつつ再利用と速攻進化ができるなら、理論上は無限にカースドボムが使える。実際、エクストラレギュレーションでは「タマタマ(ぞうしょく)」「いのちのしずく」「スイレンのつりざお」ほか再利用系カードをガンガンに積み、このカースドボムを5回も6回も連発する初手1ターンキルで溢れかえり、環境は阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまった。発売時点のスタンダードの中だけでなく、エクストラまで視野を拡げてデザインをしないとバグを起こすというのは、「しまめぐりのあかし」「回収ネット」等で通った道のはずなのだが……。
結局一番のガンであったヨマワル(ひとだましんか)を禁止にすることで騒動は落ち着いたものの、遺した爪痕はあまりにも大きかったと言える。
【その圧倒的汎用性】
ところで、使えるタイミングや連発の事ばかり取り上げて来たが、こいつらのテキストをもう一度見て欲しい。
自分の番に1回使えて、使ったなら、このポケモンをきぜつさせる。相手のポケモン1匹に、ダメカンを5個のせる。
※ヨノワールなら13個
なんだこのゆるゆるな指定は。
バトル場だけならまだよかった。大抵の場合バトル場にいるのは主力の攻め手。それを倒す打点補助と考えるならまだ納得がいくだろうから。(それでもヘイトは避けられなかったであろうが。)
だがこいつらは違う。バトル場はもちろん、ベンチでもお構いなし。しかもワザのダメージでも効果でもないため、テラスタルポケモン、ミストエネルギー、マナフィ、ジラーチ、ベラカスといった耐性を平気で乗り越えてくる。現行スタンでこの効果に耐性を持つ、或いは付与できるのがラブトロスV、古びたひみつのコハクしかない以上、事実上ヨマワルが場にいる=防御不能のダメカン飛ばしの圧力が多くのデッキにのしかかるのである。
かてて加えてその飛んでくるダメカンの量がえげつなく、1進化のサマヨールでさえ5個。先述したヒスイダイケンキVSTAR「ザンゲツスター」の4個を超えている。このせいで、進化前のたねポケモンはHP50以下というだけで存在意義が問われることに。そして2進化のヨノワールに至っては、乗せるその数なんと13個!ルール持ちのex、Vは一気にワザの確定圏内に近づくし、そこらの非ルール1進化・たねは言わずもがな。進化待ちのジュラルドンやデッキ回転の肝となるビーダル、キルリア、ドロンチ、かがやくゲッコウガなど、もれなくきたねえ花火と化す。
【その圧倒的理不尽】
カースドボムのやばさはまだ終わらない。
好きなタイミングできぜつ=サイド献上が行える、それは即ちサイドレースを自分の都合だけで進める事を意味する。現行スタンでは既にフォレトスex(ばくれつエナジー)という前例がいるものの、これとて干渉するのは自分の場のみで献上するサイドも一度に2枚と、使いどころを考える必要があった。また、超電ブレイカー収録のレアコイルも自爆できる特性を持つものの、やはり自陣のエネ加速に留まっている。その点カースドボムは勝敗に直接関わる相手の場へのダメカン飛ばし。先述のとおり低耐久ポケモンの排除はもちろん、厄介なポケモンの耐久を削りつつ能動的にサイド差をつけることができる。
サイド差という条件で初めて使える強カード、即ちカウンターキャッチャー、カウンターゲイン、まけんきハチマキ、リバーサルエネルギー等を適当に爆破してるだけで使えるようになる上、リザードンexに至ってはバーニングダークの打点が勝手に伸びていく。自爆しといてカウンターとは言いがかりもいいところである。
致命的とも言えるのはブライアの存在。例えば、お互いのサイド数が4枚のところで...…
①サマヨールのカースドボムでベンチのタケルライコexにダメカンを5個乗せる。相手はサイド1枚取り。(自分4:相手3)
②ヨノワールのカースドボムでベンチのかがやくゲッコウガにダメカン13個乗せてきぜつ。お互いにサイド1枚取り。(自分3:相手2)
③相手の残りサイドが2枚なのでブライア使用。カウンターキャッチャーでタケルライコexを呼ぶ。
④リザードンexのバーニングダーク(180+30×4=300)でタケルライコexきぜつ。ブライアの効果込みでサイド3枚取り。(自分0:相手2)
何が恐ろしいって、こんな流れが理想論でなく普通にあり得ること。何でも山札から持ってこれるピジョットexと森の封印石の存在がこの理不尽な動きを現実のものとする。カードの組み合わせによってぶっ壊れになってしまった好例と言っても過言ではないだろう。
ブライアの陰に隠れがちだが、アンフェアスタンプ、ナンジャモ、ジャッジマンといった手札流しも十分脅威。カースドボムによるサイド獲得を流せるので、実質ノーリスクの撃ちっぱなしである。そりゃ相手からしたらたまったものではないだろう。
【サマヨール(ヨノワール)に穴はあるのか?】
穴は一応ある。
まず進化ありきなので進化される前に片づける、或いは進化そのものを妨害できればその脅威を脱することができる。かがやくゲッコウガのげっこうしゅりけん、ヤミラミのロストマイン、オーガポンexのげきりゅうポンプ等の複数攻撃が刺さればかなり楽になる。この他、手札を流して事故を呼ぶ、グッズロックをかけて動きを止める、局所的だがドータクンのしんかジャマーも有効だ。
サイドを一気にもっていけるテツノカイナexのごっつあんプリファイも悪くない。最終的に残りサイドを1枚にできれば、カースドボム=敗北となる上ブライアも使用不可にもっていける。
そして超電ブレイカー収録のトリトドンで特性を止めるのも一つの手。リザードンex、ピジョットexといった厄介な特性も止められるので縛りを強固にすれば相当な圧になるであろう。
【終わりに】
2進化デッキの台頭はかつてのTAGTEAM、VMAX、VSTAR環境からすれば喜ぶべきところだが、いかんせんやりすぎた感は否めない。使いこなすか否定するかはプレイヤーの手にかかっているが、正直なところ規制の対象となっても不思議ではない。とはいえ、かつてのアルセウス&ディアルガ&パルキアGXのようなデッキ構築の根本を揺るがす存在であっても規制を受けなかったあたり、その可能性は低いとも言える。今後の環境カード、メタカードで立ち位置がどう変わっていくのか。はたまたスタンダードの世界から消えるまで残り続けるのか。将来は未知数である。