見出し画像

期待も信用もない生徒会から、学校の未来を描くー城西高校

今回取材したのは、城西中学校・高等学校。東京都豊島区にある、私立城西大学の附属校です。期待も信用もされていない、そんな生徒会に志をもって集まった生徒会役員たちが、「3つの交流」を実行し未来を描くまでの軌跡を、生徒会長の小川響さんにお話していただきます!


期待も信用もない生徒会に蒔かれた種

私たち城西高校生徒会は今年「城西生ならもっとできる」をモットーに「校外交流」、「校内交流」、「地域交流」の3つの指針を打ち出し、城西生がより活躍し、成功を収め、安心して充実した日々を送れるような学校を目指し活動しました。
私たちの学校は昨年度までほとんど生徒会活動を行っておらず、生徒や、先生方からの期待はもちろん、信用もない組織でした。生徒会だけでなく、委員会も先生に言われたことしかやらず、主体性や自主性は当然なく、機械(人工知能)でも行うことができるような集団でした。中学校から城西で過ごしてきた4年間を振り返り、そんな状況は良くないと考え、現高校三年生(2023 年度高校3年生)の5人が立候補することを決めました。
中学時代から新しいことに挑戦し、前例にとらわれない活動に積極的に挑戦し、多くの失敗と、少しの成功からたくさんのことを学んできた者が会長(1名)と副会長(2名)に立候補し、生徒会活動を4年間やってきて、先生に言われ、例年やっているような仕事は1人で完璧にできる者が会計に立候補し、先生方や地域の方との交流を気づくのが得意な者が書記として立候補し、当選しました。

生徒会を認知してもらうために

生徒会活動を始めるにあたってまず取り組まなければいけなかったことは、生徒会への関心の低さについてです。生徒会が何をやっているかほとんどの人は知らないし、生徒会活動をやってみようと思っている人も少ないのが当時の実状でした。生徒会が活動していること、困ったときに頼れる存在であることを知っていただき、興味を持ってもらえるようにすることが大きなテーマでした。私たちは、この問題をみんなに見える形で会議をすることで解決しようと思いました。例年、放課後に集まり会議をしたり、昼休みに集まって話し合っていましたが、今年は時間を朝に変更し、登校するときに必ず通る場所でミーティングをしました。登校する時何を話しているかはわからないけど、何かを話している人がいることを見てもらうことで、生徒会が活動をしているということを知っていただこうと考えたのです。

実際のミーティングの様子

3つの交流を実行


生徒会への興味・関心を向上させつつ、公約を達成するために3つの活動を始めました。1つ目は、「地域交流」です。城西学園は、豊島区千早の地に100年以上あります。しかし、新型コロナウイルスの影響で、地域のかたとの繋がりがなくなってしまっていました。町内会長に挨拶に行ったり、一緒に行えるイベントを企画したりして、0から地域の方との関係性を築き始めました。
公約の2つ目は「校外交流」です。校外交流は城西学園生徒会の12名では出せる知恵に限界があり、超えられる壁も限られてしまうと思い、他校生徒会が行っている政策や、運営方法などを参考にさせていただくことと、私たちが行っている政策の無駄や、最適性を評価していただく機会として必要だと考え行いました。昔から繋がりのある学校や、一緒に大会に参加した学校などがなく自分たちで企画書を作り、他校に送り、直接電話をかけ交流会を企画しました。10校近くの学校に交流会を提案し返答をしてくださった5校と交流会を行い、城西学園を中心に足で交流の輪を広げていきました。交流会では委員会の活性化方法や、生徒会の認知度を上げる方法、校則についてや頭髪服装、ジェンダー的な背景など幅広く議論をし、そのすべてを城西生に還元できるように事前準備と事後活動に特に力を入れました。例えば体育祭の種目決めなどを生徒が行っている学校と交流会をした後は、体育行事実行委員会にそのことを伝え、生徒が考えることもできると示したり、生徒会の体験入部をして生徒会活動に参画するハードルを下げたりしました。

実際の交流会の様子
他校文化祭への視察

3つ目は「校内交流」です。上述した、「地域交流」と「校外交流」で企画したことや、気付いたことを全て城西生に還元するために、委員会が生徒を主体として有意義な活動ができるようにする必要がありました。委員会委員長会議を開催するなど新しい活動を行いましたが、一番重要だと考えたのは、「来年も同じようにできること」です。「今年の会長だからできた」のではなく、「当然毎年やる」、「毎年活発に活動する委員会」であるために、マニュアルを作り、定例化し、「引き継がなくてはいけない仕事」にしました。以上の3本の柱が軌道に乗り始めると、委員会や、部活動、ゼミを超えてみんなで協力して企画を少しずつできるようになりました。
 複数の集団を生徒会がつなぎ行った活動を3つ紹介します。
 1つ目は、「地域交流」と「校内交流」より、地域の方と美化委員会、生徒会が協力して「ごみ0キャンペーン」を行い千早地区及び城西学園の周囲を清掃したことです。地域の方との交流も初めてだし、委員会が生徒会と協力することも初めてでしたが、先生に言われたのではなく自分たちで考え企画し、行動し、反省をして来年度に引き継ぐようにしています。
 2つ目は、「校外交流」と「校内交流」より、体育行事実行委員会と協力して、球技大会を開催したことです。 
 生徒がやりたいと思うかどうかのアンケートをとり、「やりたい人しかいない」というデータとともに校長先生に交渉し、実現しました。肝心の種目は、生徒が選び、運営も生徒会と体育行事実行委員会で行いました。事後アンケートで5段階評価をしてもらったところ、8割近くが「5のとても満足」か「4ままあまあ満足」に回答し、「1の大変不満」は1人もいない結果になりました。3つ目は、「校内交流」より目安箱のオンライン化をしました。いつでも、どこでも、だれでも思ったことや言葉にならない声や、声にならない思いを伝えてほしいと思いオンライン化しました。

実際に実行された球技大会

活動のまとめ


 私たち城西学園生徒会は、文字通り0からのスタートをきり、「城西生がより輝き笑っていられるような学校」になるように、たくさんのことに挑戦をしてきました。それらのことは全て、城西生に還元され、より良い明日の城西を作るために使われたと確信しています。既存の役職を飛び越え、生徒会内でたくさんの生徒会長を作るイメージで、仕事を分担し、本当の生徒会長がそのすべてを統括する組織形態で活動をしました。全員が「自治とは何か」、「自主性とは何か」を考え、今できる最大値を出し続けたのが2022年度生徒会です。生徒だけでは無理、教員だけでは無理、生徒会だけでは無理、城西学園関係者だけでは無理なことを、教員、生徒、学校、地域の方、他校生徒会、他校を巻き込むことで、初めてのことが多い中でも成果を残せたと思っています。わかりやすい結果として、2023年度生徒会立候補者が昨年より増加し、インスタグラムも10か月の運用で300人に迫るフォロワーを獲得しました。たくさん計画し、その分実行しフィードバックを関係各所から頂戴し、次の活動や来年の生徒会につなげ、より良い生徒会活動が永遠に続いていくために活動しています。
そんな私たちが1年でできなかったことが1つだけあり、それは、行政と協力することです。既に行政(豊島区)と協力しなくてはいけないプロジェクトは少しずつ動き始めており、来年の生徒会の手によってそのプロジェクトが成功するように体制を整えています。もちろんそのプロジェクトも城西生が笑って生活するためにはなくてはならないものです。
 
このように私たち2022年度城西学園生徒会は、どんな時も生徒のため、学校のための存在であることを忘れず活動をしてきました。

未来の生徒会役員に伝えたい事


「時代を超え繋げること、組織・世代を超えて助け合うことをしなければ何もよくならない」ということは生徒会活動の中で私が得た非常に大きな気づきです。最後に生徒会活動に限らず、私が城西学園に通った6年間で学んだこと、気付いたことの中で最も伝えたいことを伝えます。
それは、「先生は敵じゃない」ということです。文化祭の準備をしていたり、服装について注意を受けたりすると、どうしても「なんだよあいつ、うるせーよ」と思ってしまいがちです。しかし、そこにあるのは生徒への恨みでも、あなたへの攻撃性でもなく、自分たちの学校を良くしようという思いだけです。ただ先生と生徒では、見ている世界、立っているステージ、考えなきゃいけないこと、背負っている責任が違うんです。「なぜ先生はそんなことをいうのか」、「なぜ校則はあるのか」、「私が目指す学校って何だろう」と考えてみてください。考え始め、行動をし始めると、次第に主語が「私たち」に代わると思います。そうなったとき、生徒会へ挑戦してみてください。
生徒会は、無作為に変革を起こすための組織ではないし、入試のためにやっている組織でもありません。ゼミや部活動とは違う存在です。全生徒によって選挙で選ばれる唯一の組織であり、生徒のために働くことの許されている誇りのある集団です。
また。生徒会だけでなく一緒に学校をより良くしてくれる委員会が必要です。委員会役員として、自分の得意なジャンルから学校をよりよくしていくことも誇りのあることです。大切なのは自分の頭で考えて、城西をより良くするために行動を起こすことです。常識や、前例に囚われることなく、自分らしく自分にできるところから活動を始めてみてください。その一歩を全員が踏み出すことで、小さな一歩が大きな流れになり、明日の学校を創る力になると確信しています。
 
自分でレールを敷き、自ら歩みを進め、活動する土俵から生徒の意志を反映し決める生徒会は、非常に楽しくやりがいのある職でありました。1年間城西学園のため、城西生のために生徒会長として活動できたのは皆さんに選挙で選んでいただいたおかげです。

執筆:2022年度城西大学附属城西高等学校 生徒会長 小川響
文責:生徒会活動振興会代表 阿部亮太


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?