人の数だけある「当たり前」と「幸せ」について。
まずは、こちらの動画をご覧ください。
結婚を直前に控えた娘と美容師の父をチャット方式で描いています。
髪切って地固まる。/タカラベルモント
髪型って、生き方だ。
この動画は、オンライン動画コンテスト「BOVA(Brain online video award)」で2021年度準グランプリを受賞した作品です。
最後に種明かしがあり、ハッとさせられるこの動画。
まだまだ自分の中にも娘と父の話だろう、と完全な「固定観念」があったことに恥ずかしくなりました。
今回は、当たり前に訪れる幸せの象徴である「結婚」という肩書きだけが幸せの形ではないことにフォーカスして、いくつか事例をご紹介します。
結婚できないひと/渕上ファインズ
好きになった相手は
この国の
いまの法律では
結婚できないひとだった。
だけど私は、この人と生きていく
こちらも過去のBOVA受賞作品です。タイトルと序盤のシーンを見て、ワケありなお話かな…と思った自分が本当に情けない…
Now And Then /ラスベガス観光局
DESTINY HAPPENS HERE. ここでは運命が起きます。
日本語字幕がなかったため、ざっくりとした内容を記載しておきます。
「今と昔」と題されたこのCMは、ある女性の同性カップルがラスベガスで出会った日のことを思い出し、1人の女性が「結婚しようよ」と提案するところから始まる。
ラスベガスの華やかな街を映した動画と共に、2人がロードトリップに出かけたり、プールで泳いだりして、人生観などを語ったりする様子が流れる。その中で、1人の女性は家族が絶対に認めないと不安がる様子も。
そして動画の後半、1人の女性が「結婚式やってるよ。ちょっとのぞいてみようよ!」と教会に誘う。あまり乗り気でないもう1人の女性が教会に入っていくと、家族や友人が待っているというサプライズが。「けど私の両親が…」という女性が、「電話してみなよ」と言われて両親に電話すると、その場にすでに両親が待っているというダブルサプライズ。
動画を作成したのが「観光局」という珍しい観点のプロモーション。
2人にとっての出逢いの場所であった「ラスベガス」が運命の場所に変わったのですね。素敵。
幸福百搭的滋味/金蘭醤油
金蘭醤油は創立60年を超える老舗メーカー。そんな台湾醤油の代名詞的存在の金蘭醤油が、2018年11月24日に台湾で行われた「同性婚の是非を問う国民投票」に向けた応援CMを発表しました。
家庭によって料理の味は異なります。
濃かったり、薄かったり、ちょっと特別だったりもしますよね。
テーブルに愛がある限り、
誰もが味わうことができる幸福の味がそこにはあります。
これは家庭によって味付けは違うし、家庭の定義は家庭によってそれぞれ違うよね、でもそれは特別(Special)なことなんだよ。と、醤油と同性カップルを掛けた秀逸な動画です。
Think Your Normal / Panasonic
普通の反対は異常じゃない。
また別の普通だ。
パナソニックのデザインスタジオである FUTURE LIFE FACTORYは、幅広い性のあり方への理解や知識のアップデートに取り組む、新しいプロジェクト「YOUR NORMAL」を2021年に公開しました。
その一環としてつくられたのがこのショートドキュメンタリームービ。
「自分の周囲のあたりまえしか知らず視野が限定されやすい」、 「自分一人だけがおかしいと思っていたけれど同じ悩みの子がいたので悩まなくなった」というインサイトを元に、思春期の子どもたちが人それぞれの“普通”にふれる機会となるような動画になっています。
この、「YOUR NORMAL」は自分の選択へ自信を持ち生きていくことができる社会の実現のため、企業として商品やサービスの選択肢をユーザーと一緒に模索するために取り組んでいる活動なんだそう。
ふだん着の日が、人生になる。/UNIQLO
一緒に住む。
一緒に食べる。
一緒に眠る。
ふたりがしたいことは、みんなが普段着でしていること。
ただ、それだけなのだ。
札幌地裁が2021年3月、同性婚が認められないのは憲法に違反するとして同性カップル3組が訴えた裁判で「法の下の平等を定めた憲法に違反している」という初めての判断を示し、4月24日からは代々木公園周辺で 東京レインボープライド(TRP)が、開催されました。
このような世間の関心が「LGBT」に向いているタイミングで、ユニクロのCMは公開されました。ネット上では「エアリズムのCM、素晴らしすぎて朝から泣いちゃった」などとポジティブなコメントが寄せられていました。
綾瀬はるかが「もしかして、記念日ですか?」と当たり前に聞いているのも結構大事なシーンだと思います。店員さんのこういう何気ないような配慮が、前向きになる勇気を与えるんだろうな。
誰にも否定できない「当たり前」と「幸せ」
今回紹介した事例は、共通して「当たり前」や「普通」を押し付けないことが根底にあると思いました。
「少数派を受け入れよう!」という過度な表現や違和感のある「多様性アピール」も、逆に当事者を傷つけてしまうものかもしれません。「あなた達は普通では無いけれど、寛容に受け入れますよ。」と上から目線で物申しているように感じてしまいます。
毎日話している会社の同僚と、あなたの価値観だって実は全く違っているかも。無意識に「当たり前」を押し付けて傷つけてしまわないよう、「自分はこう思うんだけど、」という常に当たり前を疑う姿勢がやさしい世界をつくるヒントなんだと思います。