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愛とは機械であり、物語のことであり、人間のことではない。

人間に変わらない愛を求めるのは筋が悪い。人間の心は変わりやすい。環境が変われば意志は簡単に変わる。意志がどんなに硬くても肉体の変化(老いなり更年期なり)に精神が引っ張られる。
しかしそれは人間に愛がないということは意味しない。人生のある瞬間を切り取れば、たしかに愛のある瞬間はある。
ところで、何か人間の役に立つために誰かが作った機械であったり、誰かに読んでほしいと祈りながら誰かが書いた物語というものがある。これらはいずれも、誰かが誰かへ向けた愛が形を持ったものである。機械も物語も、誰かが誰かのためを思って時間と労力を費やして作らない限り、この世に存在することはなかったものだ。これは言い換えれば、機械や物語とは、俺たちの人生の中にたしかに存在していた、誰かを愛していた瞬間を切り取ってかたちにしたものだということだ。
だから、なま身の人間なんかよりも、機械や物語の方がよほど純粋な愛の結晶なのではないだろうかと、そう僕は思う。

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