見出し画像

コラムニスト・石原壮一郎の新刊『押してはいけない 妻のスイッチ』先行公開(#3)

妻が突然黙り込んだ、不機嫌になった、当たりがキツくなった……。夫なら誰しもそんな経験があるのではないでしょうか。理由もなく、妻が不機嫌になることはありません。もしかすると、われわれ夫は気付かぬうちに「押してはいけない妻のスイッチ」を押してしまっているのかもしれません。コラムニスト・石原壮一郎氏の新刊『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春新書プレイブックス)が2月16日に発売されるのに合わせて、内容の一部を先行公開いたします。

【スイッチ③】

「ずっと言おうと思ってたんだけど」と前置きをして

「靴下は裏返して洗うのが正解らしいよ」


そういう説もあるようですが、まあ、どっちでもいいと言えばどっちでもいい話です。

「靴下は裏返して洗ったほうがいいとネットで見た」と伝えること自体は、危険でも何でもありません。妻が洗濯を担当しているとして、「へえー、今度やってみようかな」と食いつくこともあれば、「面倒だから表のままでいいかな」とスルーされることもあるでしょう。

このセリフの問題点は「ずっと言おうと思ってたんだけど」という前置きと、「正解」という単語を使っているところ。言いづらいと思いつつ意を決して言った事情はわかりますが、ふたつの問題点のせいで、何気ない雑談のはずが、一気に刺激的な響きをまとってしまいます。

「ずっと~」を付けることで、妻は「私の洗い方に、ずっと前から不満を持ち続けていたのか」と愕然とし、これまで口にしなかった夫に不信感を抱くでしょう。

さらに、今とは別の洗い方を「正解」と言ってしまうと、妻を「キミは間違っている」と断罪することになります。

妻が望んでいること
----------------------

まずは「どう洗っても同じだよね」と鷹揚な姿勢を見せ、妻が興味を持って実践したら、「やっぱりきれいに洗えるね」とホメる


石原壮一郎(いしはらそういちろう)
1963(昭和38)年三重県生まれ。コラムニスト。1993年『大人養成講座』(扶桑社)がデビュー作にしてベストセラーに。以来、「大人」をキーワードに理想のコミュニケーションのあり方を追求している。『大人力検定』(文藝春秋)、『父親力検定』(岩崎書店)、『夫婦力検定』(実業之日本社)、『大人の言葉の選び方』(日本文芸社)、『無理をしない快感』(KADOKAWA)、『失礼な一言』(新潮社)など著書多数。故郷を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。