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#18 ”供養”と”呪い”は表裏一体⁉
「幽霊っているの?」「運の正体とは?」などと思ったことは誰しもあるはず。そんな“目に見えないもの”にまつわる素朴な疑問や、仏教に関する知識を、SNS等で人気の僧侶、仁部(にべ)兄弟がゆるく解説。二人の掛け合いが楽しいインターネットラジオ「お寺ジオ」の配信内容をベースに、加筆・再構成してお届けします。
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○前叶 お彼岸に入りまして、春めいた日も増えてきましたけれども、皆様いかがお過ごしでしょうか。
●前誠 この時期になると花粉症がね…。だいぶきついよ。本当にどうにかしてほしい。
花粉症、治癒祈願、治癒祈願~
○前叶 花粉に呪われているのかもね~(笑)
呪いといえば、この間ご相談の電話がありまして。 実は祖父母の遺品整理をしていたら、日本人形が出てきましたと。
●前誠 日本人形…ちょっとその時点で呪いの要素を感じてしまう。。。笑
○前叶 ちょっとイメージするよね。多分お炊き上げとかそんな感じかなと思ったわけよ。よくあるし。
●前誠 …ということは、髪伸びてた!?
○前叶 いや、そういう類いではなかったんだけど。小さな入れ物が人形と一緒にあって、それを開けたらね。誰のかわからない、爪と毛髪が入っていて…
●前誠 うわあぁあー!?
○前叶 このパターンって実は2種類あって。爪とか髪があると漠然と“呪い”をイメージしがちですが、一方で、その人の生前のお体の一部ということで、持っておくことが供養になっていることもあるんだよね。
●前誠 お骨と同じ原理かな。生前の体の一部はその人に通じているっていう考え方があるよね。
○前叶 そう。その人のお住まいが東北っていうお話を聞いて、東北特有の文化の発展かもしれないなあとも思った。とはいえ、一般的にあんまりいい気がするものではないし、電話してくるぐらい不安なわけだから、とりあえず供養の一環だったっていう可能性をお伝えした上で、もうお役目も終わったからご祈祷しましょうって事になったんだよね。
●前誠 それを聞いて安心した~。
○前叶 じつは呪術の始まりって、この“供養になる”っていうことを逆手にとっていて、「よからぬことと繋がったら呪いにも使えるんじゃないの」っていう発想からきてたりするんだよね。
”認知”から呪いは始まる
○前叶 世界各国の呪いを集めた特殊な本があってね。上下巻で 1万5000円ずつぐらいする。誰がそんな買うの?って本、俺は嬉しくて買ったんだけど。その中にアフリカのとある部族の呪いが紹介されていて。人間が文化とかを築く前に原初的にやっていた呪いらしい。30人の部族がいる村があったとして、そのうちの一人が村のルールを破っちゃったとするじゃん。そしたら、どんな呪いをかけると思う?
●前誠 完全なイメージだけどアフリカでしょ?それなら家畜の頭蓋骨に生き血を溜めて、さそりの毒や毒草の植物を入れてぐるぐる回して黒い煙がモクモク〜とか、槍持って儀式とか…。
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○前叶 …うん。そうじゃなくて、ほかの29人がただ黙ってルールを破った人の前に立つ。ルールを破った人が寝ても起きても、トイレ中も食事中も。何をしてても目の前に黙って立ち続ける。
●前誠 えー怖い!
○前叶 これが最もシンプルな呪いなの。なにか特別なことをするとかじゃないんだよね。
●前誠 なるほど、何もしないっていうね。いや、めちゃくちゃ怖いでしょこの呪い。
○前叶 この認知させるっていうのが大事なの。こっちは呪ってるよっていう。それ以外はなにもいらない。悪意を持って何もしない。
皆さんもイメージしてもらえるとわかりやすいんですけど、知らない人に「あなたのこと呪ってますよ」ってすれ違いざまにボソっと言われたら気になるよね。もしくは「聞いた話なんだけど、〇〇さん、あなたのことよく思ってないみたいよ」みたいなこと。これも立派な呪いです。
あ、余談だけど、お寺に仁王像ってあるでしょ?
●前誠 阿吽の像ね。
○前叶 そう。金剛力士像なんかは立ってるだけで魔除けになるのよ。
呪いを解くたった1つの方法とは
○前叶 話を戻すとこの部族の呪いには1つだけ呪いを解除する方法があるの。
●前誠 なんだろう?…わかった!新たな呪いの対象者を見つける!
○前叶 自分を救うために身代わりをたてるってことね。自然な発想だと思うけどそうじゃないんだよね。
●前誠 わかった!身代わりじゃなくて、代わりのものを差し出すんだ。目玉とか。
○前叶 ……
●前誠 わかった小指、小指!
○前叶 ……これね、もっと怖い。しかも誰でも、仕組み上は俺でもできる。その呪いを許してもらうための唯一の方法っていうのは、死ぬまで名前を捨てるってこと。だから、もう認知されない。
●前誠 えっ! 怖!
○前叶 そう。名前を捨てた人は、村の中では日本語で言うところの「それ」っていう呼ばれ方をするんだって。だから、もういないも同然だし、そもそも人じゃないのよ。物とか空間と一緒になっちゃうのね。
この呪い、立っている人たちは一切の生活を何もかもやめて立つのね。だからその場で餓死する人とかも出てくる。でもそれと引き換えにして自分の名前をさし出して、認知されないという方法を選べば呪いを解除してもらうことはできる…究極の2択が始まるんだよね。これが原初的な人間の呪いなんだ。
●前誠 これさ、夜読んでても怖いし、朝っぱらからこれ読んでても鳥肌たちそう。人間って怖いなぁ。
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○前叶 人間っていうのは、元来社会に認められて、こちらも社会を認めて、その中で生きていくっていうことである種社会の側から自分を作ってもらえるって側面がある。それを社会の側から抹殺されるっていうのが原初的な呪いだったりします。
●前誠 法華経というお経には「還著於本人(げんじゃくおほんにん)」とあって。これは自分自身の行いは自分自身に還ってくるということです。
◯前叶 まさに「人を呪わば穴二つ」
●前誠 日常過ごす中で、呪いのような負の連鎖ではなくて、他者への善い行いが自分自身に還ってくるような過ごし方をしたいですね。
明日は明るい日と書きます。
○前叶 みなさまの明日がより良い一日になりますように。合掌。
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1988年埼玉県生まれ。立正大学仏教学部宗学科卒業。妙見山上原寺副住職。2012年より日蓮宗宗務院に奉職。2016年、日蓮宗加行所初行成満。2020年よりRadiotalkにて、弟の前叶氏とともに「midnight temple radio お寺ジオ」を配信。僧侶としてのモットーは、「法華経の話はほとんどしませんが、すべては法華経の話です」。 最近では、『あなたは尊い 残念な世界を肯定する8つの物語』(漫画・やじまけんじ/監修・佐渡島庸平×日蓮宗/徳間書店)制作プロジェクトに参加した。
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1991年埼玉県生まれ。立正大学仏教学部宗学科卒業。妙見山上原寺副住職。さいたま浦和地区保護司。2015年、日蓮宗加行所初行成満。2020年、仏教死生観研究会「死の体験旅行」講師を務める。同年、上原寺別院「祈誓結社」を設立。”ほとけ様との架け橋“であることを目指し、命の強さと有り難さについて伝えるべく活動している。 https://twitter.com/6SYAKU_HOUSHI