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セミナー「利用者さん,患者さんのいいとこ探しとほめるコツ!」を開催記念インタビュー

2025年2月23日(日),講師に土屋 徹氏(フリーランスナース/ソーシャルワーカー/SST普及協会認定講師)をお招きし,(小社主催のセミナー「利用者さん,患者さんのいいとこ探しとほめるコツ!」を開催します。お申し込み方法やお問い合わせなどの詳細はリンクをご参照ください。本稿では来るセミナーに向けて,セミナーで学んでいく内容のエッセンスを,土屋氏の現在の取り組みを含めて紹介いただきます。

セミナー迫る! お申し込みは下記のリンクから

【いいとこ探しとほめるコツ】
編集部 このインタビューではセミナーで学んでいく内容のエッセンスを紹介いていければと思います。土屋さんには2018年11月号で『発達障害のある方を支援するナーシングトレーニング―ペアレントトレーニングを看護のみなさんで』というタイトルで,ペアレントトレーニングについてご紹介いただいています。今回のセミナーにも関連するので,少し長めに引用してみます。

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ペアレントトレーニングとは子育てに不安やストレスを抱える養育者を対象に,子どもへの適切なかかわり方を学ぶあうプログラムです。1974(昭和49)年にアメリカのUCLA神経精神医学研究所で,ハンス・ミラー博士によって開発されました。行動療法(応用行動分析)を基礎としており,日本でも1990年代後半から,発達障害に関する関心や支援・養育者が,どのように子どもとかかわるのかを学ぶ取り組みとして広がってきています。筆者も外来業務だけではなく,いくつかの「放課後等デイサービス」での実践,支援者に対してペアレントトレーニングへの取り組み方についての研修などを行っています。
参加した養育者からは,「子どもの変化もあるけど,子どもへの見方や接し方が変わった」「子育てに余裕をもって,自分自身の生活に目が向けられるようになった」など,精神科領域で行われている『心理教育プログラム』と同じような感想が聞かれることがあります。筆者はペアレントトレーニングを家族支援の1つとしても位置づけているのですが,その内容からペアレントトレーニングは,単に発達障害をもつ子どもの養育者だけではなく,いま子育てをしている,これからしようとしている親,子どもたちを対象として支援をしている医療者,成人の発達障害の方を支援している多くの医療者など,多方面に応用できるのではないかと考えています。ペアレントトレーニングには,対象者の好ましい(望ましい)行動を広げていくためのかかわり方やほめ方,好ましくない(不適切・望ましくない)行動などへの対処の仕方についてのエッセンスが詰め込まれており,支援者が学べ
る対象者に対する適切な視点や見方・接し方が満載なのです。

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土屋 これは何年前の掲載でしたっけ?
編集部 2018年11月号の掲載なので,ほぼ6年前です。
続けて引用してみます。

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ここ数年『発達障害について』というテーマで研修会の講師を引き受けることが多くなってきました。対象者は,看護系・学校の教員・ご家族などさまざまであり,対象者に合わせて資料をつくったり,お話をする内容を考えたりするなかで,看護職の間でも発達障害というキーワードが広がりをみせていると実感しています。
看護系の研修会では,発達障害についてどのようなイメージをもっているのかを知るために,「病棟などで発達障害に関することで看護師さんたちが困ってることはなんです?」と最初に質問しています。その質問に対して,「理解力がない」「言うことをきかない」「何を言っても指導しても動いてくれない」「問題行動が減らない」「わがまま」「自分勝手」というような答えが多く聞かれます。自分をしっかりともっていたり,こだわりが強かったりということもあって,病棟という枠組みのなかでは合わないことも多いのではないかと思われます。それに加え,発達障害の方は二次障害を主として精神科外来を受診したり,入院となる患者さんが多いので,目の前にある疾患や症状に振りまわされてしまうのと,本質的な部分の発達障害の特性がプラスされることによって,看護者自身も陰性感情やイラつきをもってしまい,いつの間にか「発達障害=困った人たち」という認識が植えつけられてしまっているのかもしれません。

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編集部 「看護者自身も陰性感情やイラつきをもってしまい,いつの間にか『発達障害=困った人たち』という認識が植えつけられてしまっている」という指摘はいまでも通じるように思いますが。
土屋 これは何度も言っていることですが,自分も同じだったんです。患者さんの悪いところばかりに注目したり,問題点をどうにかしようっていうことばかり考えて,本当に恥ずかしい話ですが,患者さんを怒っちゃったり叱っちゃったりしていた。当時だってそうですが,いまだったら完全にアウト。根本的な話をすると,僕らの仕事は――ここでは看護の仕事っていうことで話しますが,悪いところをなくすとか,病気の症状をなくすと
かっていうのが仕事なんだろうか? そうじゃないですよね。病気や障害があったとしても,自分らしく生活できるっていうのを支えるのが看護の仕事なんじゃないかって思うんです。だから最終的にめざすところは,病棟のなかからでも,その人が今後社会で生きていく力を育むっていうことになるんじゃないか。常にここを原点にしたいものですね。
編集部 こうしたような患者さんの見方を変えていけるのが,先ほど引用した,ペアレントトレーニング。
土屋 そういうことです。ペアレントトレーニングについて簡単にいうと,子どもの行動を変えるために,怒ったり怒鳴ったり叱ったりするんじゃなくて,ほめて伸ばそうっていうもの。ちょっと具体的に言うと,まずは対象となる人の行動に,より注意を向けて,その人がいまできている具体的な行動をたくさんほめる。ほめるって言い方に違和感を覚える人がいるかもしれないですが,認知行動療法の“強化”っていっても堅い。だからほめると表現しているだけで,「認める」って言い方でもいいのですが,僕は「ほめる」って言い方がいいかなと思っています。
「オペラント条件付けでいうところの“強化”を勉強します!」って言われてもちょっと抵抗ありませんか(笑)? いずれにしてもセミナーでみなさんとやりとりしたいのは,理屈や理論だけじゃなくて(多少は話しますけどね),自分が普段かかわっている利用者さんや患者さんに注目してもらって,その人がいまできてること,やれてるっていうことなんかをみんなで出して,その人その人に合わせたほめ方のコツを学んで,持って帰ってもらって,実践してもらいたいんです。少しセミナーを先取りしていうと,いいとこ探しが上手でほめ上手な人は,利用者さんにしても患者さんにして,“相手の受け止め方をよく知ってる人”。これができると,いいとこ探しやほめることがぐっとうまくなるんですよね。このあたりはセミナーで詳しく紹介することになります。

【セミナーで学んでいくこと】
編集部
 いずれにしても,うまくやれているかどうかは別にして,「ほめる」ってどんな場面でも使えるタイミングがありますよね,看護の仕事をしていたら。
土屋 そう思います。看護の仕事をしていたらいくらでもそうした場面はあります。たとえば挨拶ができるとか,食器を片づけられるとか,ハンガーに服をかけるとか,靴を靴箱に入れられるとか。大切なのは,僕らが「そうするのってあたりまえだよね」って思いがちなところに着目すること。「あたりまえだ」って思うと,案外と目が向かないから,目に入らない。だから難しいんですよね。こうした理由から,「いいとこ探し」のトレーニングがいるんです。「いいとこ探し」をして,ほめる。そうやって行動が変わっていく。
これを学校の先生に向けてするのがティーチャーズトレーニングなんですが,看護師さんに向けてするのが,ナーシングトレーニング。昔の僕みたいに,病棟のなかで患者さんの“いいとこ”がなかなか見つからない,見つけられても“ほめられない”という人に,エッセンスを学んでもらうことによって,日常の患者さんとのかかわりのなかでヒントをつかんでもらう。今回のセミナーではそんなところも学ぶことができます。
編集部 やっぱり看護師さんって相手をほめるっていうことを苦手にしている人,多いんですかね?
土屋 僕も40年以上,業界にいて思うのが,看護師さんはやっぱり問題解決型思考で動くので,患者さんの問題点やできていないところに注目しがちだということ。これはそういうものなので仕方ない部分もある。ただ最近では看護の教科書なんかでも普通に「ストレングス」「リカバリー」という言葉が載るようになっています。だんだん変わってきてるかな,なんて思いますが,とはいえ,まだまだそのエッセンスは現場には浸透しきってはいないんじゃないかとも思っています。そこで,「こんな考え方もあるんだ,こんなやり方もあるんだ,じゃあ,みんなで利用者さん,患者さんのいいとこを見つけて,ほめるコツを体験しながら学んでいこう」というのが,今回のセミナーの趣旨です。
 最終的にいい感じの行動が増やしていく,「指示や促し」っていうところまで体験して帰ってほしいなと思っています。真面目に言えば,本当に利用者さんや患者さんとかかわるなかで,「ストレングス」「リカバリー」とはどういうことを意味するのか,今回のセミナーに参加してもらえると,知識レベルだけではなくて,体感ができるはずです。

【おわりに】
土屋
 今回のセミナーには訪問看護に従事している人にも来てほしいですね。それには1つ理由があって,訪問看護でのアセスメントには,「その人がなぜ病気や障害を抱えながらここで生活できているのかっていうところに着目して,それがどうして維持できているのか」という観点があっていいはずで,そのためにも「いいとこ探し」を学ぶのは大切だからです。せっかく地域生活を続けられている人の,「できないところ」を変えるっていうんじゃなくて,いまの生活に着目して,「これは続けてもらいたいなっていうところ=ストレングス」を強化する,強化するって言っちゃったけど(笑),その視点もセミナーで学んでほしいと思っています。もちろん病院に勤務している看護師さん,対象も児童・成人問わず,発達障害の人とのかかわりで“困っている人”,誰でも参加ができる内容になる予定です。いいとこ探しとほめるコツを知っていると,すごくすごく仕事に充実感が生まれるので,ぜひご参加ください。
編集部 ぜひ奮ってご参加ください!

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